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2019年2月 6日 (水)

日産前会長会社法違反事件-会社法違反の「過料」を刑事罰に格上げせよ

丸々1カ月、新聞ウォッチングを怠けておりましたので、日産前会長さんの事件の流れを把握できておらず、すっかり情報に疎くなってしまいました。ということで、各紙バックナンバーをチェックしておりますが、近時の新聞記事において目に留まったのが1月30日の毎日新聞朝刊「論点-ゴーン事件の教訓」です。なかでも上村達男先生の「制裁金を含めた法整備を」なる論稿は何度も精読いたしました。

特別背任罪での立件は検察側にとってもハードルが高いのですが、世間の関心は(次から次へと報じられる不正事実によって)刑事立件の可能性に集まっています。一方、長期間にわたり、検察や会社側が指摘しているような不正が経営者によって続けられていたのであれば、なぜこれをもっと早く会社内部で止められなかったのか、という素朴な疑問が前よりも増して強く生じてきます。経営者不正を止められるのは事後の厳罰(刑事立件)か、事前のソフトロー(ガバナンス)か、という選択は、どうも極端に思えます。

そこで上村先生のように(会社法の世界ではありますが)金融庁が登場して行政制裁的な処分をもって対処せよ、という考え方が登場します。経済刑法に詳しい学者の方々にも、検察の人的資源の関係からみて、会社法の過料制裁を刑事罰にいきなり引き上げるとなると、その運用がもたない、というところから行政制裁をもって対処すべし、という意見も有力に出されているようです。でも(たぶん「大人の事情」によるものと思いますが)、法務省と金融庁の所轄の壁は、思いのほか高いので、そう簡単には会社法違反に(金融庁主導による)行政制裁が組み込まれるようには思えないのです。

私は公開大会社で有価証券報告書を提出している株式会社に限り、会社法違反に過料が課されているディスクロージャー規制違反および競業避止、利益相反報告義務違反の行為に対しては刑事罰をもって対処するように改正することを提案したいところです。やや複雑ではありますが、過失ではなく故意の違反行為のみを刑事罰対象として、過失によるものはこれまで通り過料、という運用です。

このたびの日産事件をみておりまして、役員報酬の開示違反を「形式犯」ではなく「実質犯」と捉える風潮になったのであれば、会社を取り巻く利害関係者への報告義務違反も含めて、罰金の対象とすべきではないかと。また、競業避止、利益相反取引の事後報告を懈怠することが刑事罰に該当するとなれば、ソフトローの運用次第ではハードローの厳しいペナルティが待ち構えているとの緊張感が取締役会出席者にも生じて、いまよりもガバナンス改革が進むのではないかと思います。

当ブログでは、これまで3回ほど会社法違反行為を過料から刑事罰対象に引き上げよ・・・と提案してきましたが、今回はそれなりの風が吹いてきたような気もしますが。。。

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コメント

会社法に刑事罰を入れるのは相当慎重になるべきかと存じます。特別背任とて、刑法に背任罪があるからこその特別刑法であり、純粋に会社法ではありません。
一定の大規模会社を想定すれば、株主や債権者、投資家をステークホルダーとする保護法益を考えられなくもないです。しかし、利益相反報告義務違反などを刑事で罰するなら、実損を生じさせる429条などは法益侵害の最たるものであり、同様に刑事罰が妥当という理屈になりませんか?それは明らかにおかしい。結局、民事と刑事は別々のもんやと割りきるべきなのです。
それよりも、形骸化している過料制度を実質化していけばよいと思いますが。

投稿: JFK | 2019年2月 6日 (水) 02時03分

山口先生 おはようございます。私も、刑事罰は必要だとの意見に賛成です。昭和も、平成のどの時代にも毎年経済犯罪はいくらでもあったのかもしれません。今は、刑事罰(両罰規定)が必要だと思えるニュースが瞬時に手に取るように分かるようになってきました。露天掘り状態でネットサーフィンすると、露天掘り状態で閲覧する側も麻痺してきます。
看過できないの本件以外にも、特に悪質だと思われるのはゼネコンの営業停止の2社、福祉職による虐待・暴行死、神戸市役所の労働組合幹部と市側のファイヤーウォールの構築などではないでしょうか?AIでの解析・分析も2〜3年後には可能になるのであれば、日本社会の固有な問題(病巣)も、案外簡単に解決方法は見つかるかもしれません。近い将来、いくつもある消費者団体と上場企業にもの言う方々のマッチングができればなと思います。海外にいらっしゃる尖りすぎていない「もの言う方々」に花咲き爺さん役になってもらわないと、国土は屍寸前のモルヒネ漬けになってしまいますよね。

投稿: サンダース | 2019年2月 7日 (木) 07時18分

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