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2019年2月19日 (火)

成長戦略法制-イノベーションを促進する企業法制設計

411ggsk6xl_sx350_bo1204203200_ 今朝(2月18日)の日経朝刊法務面では、AI開発における法制面での制約が技術開発の萎縮を招き、海外との競争力の差につながりかねないとして、各企業による自主ルールの活用が紹介されていました。AIに対応した法的インフラの整備は喫緊の課題として、経済界から法律の世界に様々な提言が出されています。

成長戦略法制-イノベーションを促進する企業法制設計(成長戦略法制研究会 編 2019年2月 商事法務) 3,400円税別)

さて、西村あさひ法律事務所の武井一浩弁護士からご恵贈いただきました本書は(どうもありがとうございます!)、いま日経法務面で特集されている各記事を理解するには最も参考となる一冊です。日本企業の知財戦略、オープンイノベーション、働き方改革と成長戦略、ベンチャー投資法制、国際紛争解決に向けた効率的な対応等、最近の日経法務面で、頻繁に取り上げられている話題について、経済学者や行政官の立場から法律学に対して(日本企業の成長に向けた)提言が示されています。本日の日経法務面の話題も「デジタルイノベーションと成長戦略」として取り上げられています。

本書は、2016年4月ころから開始された成長戦略法制研究会の発言録や同会会員の方々によるご論稿をとりまとめたものです(武井一浩弁護士も上記研究会委員のおひとりですね)。会社法改正の目玉である株式交付制度(M&A法制における)なども、本書をお読みになりますと興味が湧いてくると思います。

P_20190216_222538_400上記の新刊書とは異なりますが、2016年3月に出版されたこちらの本を、私は拙ブログのネタ本として活用しております。経済成長のために、金商法や独禁法のルール(創造や解釈を含めて)はいかにあるべきか・・・という点を考えるにあたって、豊富なヒントが語られていてとても参考になります。

「成長戦略論-イノベーションのための法と経済学」(ロバート・E・ライタン編著 木下信行・中原裕彦・鈴木淳久監訳 NTT出版 2016年)

本書は米国の経済学者が中心になって、米国の経済的な成長を後押しするための法創造や法運用の在り方に関する論稿を集めたものであり、(今回初めて知ったのですが)上記「成長戦略法制」の著者の多くは、本書の監訳にあたっておられた方々です。経産省では平成22年ころから「成長戦略と法制度のあり方」については研究が重ねられておりましたので、その流れの中で監修作業が続けられたものと推測します。

昨日(2月17日)のNHKスペシャルで「田中耕一、ノーベル賞受賞からの苦闘の16年」を視聴しましたが、まさに上記「成長戦略法制」で語られていた「日本企業におけるイノベーションの阻害要因」を認識しました。また、グローバル企業との競争に負けないためには法務部門の強化が不可欠であることや、企業法務に携わる者が(ソフトロー等を通じて)法創造機能を発揮する必要性も、本書から認識したところです。なお、「成長戦略論」の全体像は、上記「成長戦略法制」の第1章にて概要が示されていますので、もしご興味がありましたら、このほど出版された上記「成長戦略法制」をまずご一読されることをお勧めいたします。

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