« 成長戦略法制-イノベーションを促進する企業法制設計 | トップページ | 事業再編時の情報統制と取締役会の監督機能 »

2019年2月19日 (火)

ひさびさの「監査役の乱」?-廣済堂MBOに社外監査役が反対表明

今年1月にMBOを決議した廣済堂さんにおいて、創業家大株主と同社の社外監査役の方(元経営者)が反対を表明し、近々声明を公表されるそうですね。東洋経済さんのスクープの後、日経でも報じられるようになり、18日の夜には廣済堂さんが釈明のリリースを出しています。これは久しぶりの「監査役の乱」かもしれません。

ただ、以前の「監査役の乱」の頃とは時代が違いまして、企業統治改革が進み、取締役会の多様性が推奨される時代です。かつては「こら!監査役!お前があばれたら株価が下がるやないか!ひっこんどけ!」と(短期的利益の追求を重視した)株主の皆様から罵声を浴びせられることもありましたっけ(なつかしい・・・)。

しかしながら時代は変わり、市場では「これは企業価値を毀損するから反対だ」「きちんと事前の説明もないのだから反対だ」といった意見が出てくることを(コーポレートガバナンス・コードによって)歓迎する時代になったのですから、他社でも同様の事態は普通に想定されるはずです。「経営陣が株主の利益を第一に考えていない」と判断すれば、会社のレピュテーションの毀損に配慮しながら(少なくとも社外役員は)個人的な反対意見を述べることが期待されています。

全会一致ではなく、こういった意見が議事録に掲載されている中で、もしMBOが失敗した場合、全会一致の場合と比較して取締役の法的責任が認められやすくなるのでしょうか?裁判官としては、代表訴訟における原告株主側の主張に引っ張られてしまう可能性も否めません(まあ、この点はいろいろと意見は分かれると思いますが)。ちなみに会社側の釈明のリリースには「取締役会終了直後は『がんばってね』と言っていたではないか。とくに反対の意思は示していなかったではないか」との会社意見が述べられていますが、そもそも直前に説明を受けた監査役さんが「俺は聞いてないぞ」と言って暴れだすほうがおかしいわけで(笑)、経営者までされていた方は、とりあえずその場では紳士的に振る舞うのが当然ではないかと。後日、社外役員が十分な情報を入手しえた時点で反対意見を表明するということも、普通に起きると考えます。

かりにMBOがとん挫してしまいますと、MBOを決議したプロセスが問題とされる可能性も出てきます。そうなりますとシャルレMBOとん挫株主代表訴訟の2014年10月16日神戸地裁判決が示すような法的リスクにも留意しなければならず、会社側としても今後の対応には慎重を期す必要がありそうです(とりあえず、本日は第一印象程度のみ)。

|

« 成長戦略法制-イノベーションを促進する企業法制設計 | トップページ | 事業再編時の情報統制と取締役会の監督機能 »

コメント

監査役はこの程度の事で、仕事をしたという評価になるのでしょうか?取締役会で反対せず、問題が大きくなってからアリバイ的に反対してもご自身の保身以外の意味はありませんね。
そもそも監査役という存在自体、金を稼いでいないわけで、むしろ会社財産を食いつぶす存在なわけです。
にもかかわらず監査役が設置されるのは、まさにMBOのような場面で会社と株主のために行動する事を期待されているからです。
帳尻合わせのような反対には白ける限りです。

投稿: 山口三尊 | 2019年2月19日 (火) 18時50分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ひさびさの「監査役の乱」?-廣済堂MBOに社外監査役が反対表明:

« 成長戦略法制-イノベーションを促進する企業法制設計 | トップページ | 事業再編時の情報統制と取締役会の監督機能 »