日産前会長の(3度目の)保釈請求は認められるか
ひさしぶりの日産前会長・会社法等違反容疑事件に関するエントリーです。2月27日(木)、日産前会長の弁護人が3度目の保釈請求を行った、と報じられました。1回目、2回目の保釈請求時には、いまだ検察側の余罪捜査が続いているために「無理だろうなあ」と思いましたが、今回は裁判所が保釈を認める可能性があると推測しております。以下はその理由です。
1 マスコミのリーク記事の枯渇
ここ数週間はマスコミの検察リーク報道も影を潜めました。これは検察による余罪捜査や裏付け捜査がほぼ終了したため、検察側からマスコミに提供するネタがなくなってしまったことによるものと思います。検察側がほぼ立件に必要な証拠は収集したものとみて、今後は(たとえ否認をしてるとしても)被告人には証拠隠めつのおそれは乏しいと判断される状況になりました。少なくともゴーン氏が逃亡や罪証隠めつに出る「具体的危険性」を裏付ける事実は乏しいのではないでしょうか。
2 公判前整理手続きの決定
昨年12月のこちらのエントリーでも書きましたが、公判前整理手続きを被告人側(弁護人側)が維持するためには、検察と対等の立場で弁護人が対峙しなければならず、そのためには被告人の早期身柄解放が大前提です。2月21日にゴーン氏、ケリー氏、そして法人としての日産いずれの被告人の事件も公判前整理手続きを行うことになったそうなので、ゴーン氏は検察だけでなく、ケリー氏や法人としての日産との間でも利害が対立する可能性があります。ケリー氏や日産が十分な準備ができるのにゴーン氏だけが準備にハンデを背負うとなりますと、国際的に「人質司法」との批判がさらに高まるものと思います。
3 繰り返される日産側からのメッセージ
前会長さんの金商法、会社法違反事件を裏付けるようなニュースが影を潜めた一方で、最近は日産トップの方のインタビュー記事や特別ガバナンス委員会による審議内容などが出てくるようになりました。これはゴーン氏が保釈された場合には、おそらくゴーン氏の発言に社会の注目が集まることを想定して、日産側が機先を制するための広報作戦ではないでしょうか。日産側も「保釈される日は近い」と考えているように思います。
もちろん刑事弁護に詳しい同業者の方から「早くても(保釈が認められるのは)今年の年末くらいではないか・・・」との意見も出されていますので、上記は私の勝手な推測であります。ただ、今回の保釈請求が却下されることになりますと、本当に身柄勾留の長期化が予想される事態となります。そうなりますと、さすがに国際世論を敵に回すことにもなりかねず、もっと大きな刑事司法制度改正に向けた意見形成につながる可能性が出てくるのではないでしょうか。
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コメント
保釈決定との報道に触れました。
昨年のコメントを記した者として、
「勾留が長期化しましたが、あらためて、メリークリスマス!」
とお伝いしたい心境です。(取りいそぎ)
投稿: にこらうす | 2019年3月 5日 (火) 14時41分
ゴーン氏の保釈が決まったようです。
さすが弁護士さんの見立ては違いますね。
弘中弁護士の手腕もあるのですかね?
これからも検察に色々揺さぶりを掛けてきそうですね。
投稿: ジュン | 2019年3月 5日 (火) 23時52分
保釈決定が出て、唐突感がありましたが、貴殿のブログを読んで納得しました。
投稿: lome | 2019年3月 6日 (水) 01時01分