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2019年3月13日 (水)

大塚家具、なぜ監査等委員会設置会社から監査役会設置会社へ戻るのか?

3月11日の大塚家具さんのリリースによりますと、同社は、3月31日開催予定の定時株主総会において、監査役会設置会社に移行するための議案(定款変更議案)を上程するそうです。同社は2017年3月に監査等委員会設置会社に移行したばかりですから、わずか2年で従前の監査役会設置会社に戻ることになります。3月12日の朝日新聞朝刊記事によれば、「意思決定のスピードを重視するため」(広報)に戻すそうです。

しかし、2年前の同社リリースでは、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行する理由として、以下のように開示しておられます。

監査等委員会設置会社への移行について   (1)移行の理由
当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、社外取締役の複数選任及 び役員の指名・報酬に係る任意の委員会設置など、コーポレートガバナンスの充実・強化に継 続的に取り組んでまいりました。今般、取締役会の監督機能を一層強化するとともに、経営の 意思決定をより迅速に行い、更なる企業価値の向上を図るため、監査等委員会設置会社へ移行 するものであります。

つまり、同社は(世間でよく言われるように)取締役会の監督機能の強化と迅速な意思決定のために監査等委員会設置会社へ移行しました。しかし、実際には監査役会設置会社の時代のほうが意思決定は迅速だった、ということのようです。ちなみに大塚家具さんのように、任意の指名・報酬委員会を持つ監査等委員会設置会社では、情報収集権を持つ監査等委員である社外取締役が、任意の委員会委員を兼務することでパフォーマンスを発揮しやすいと言われていますが、それでも実効性に乏しかったということなのでしょうか。なぜ監査等委員会設置会社ではスピード経営が実現できなかったのか、その真相をぜひとも知りたいところです。

三井住友信託銀行さんの調査では、2018年6月時点で監査等委員会設置会社は927社にまで増加しているそうです。しかし、すでに関西では複数の企業が監査等委員会設置会社から監査役会設置会社に復帰していることはご紹介済みですが、関東の企業にも「復帰」の兆しがみえてきたのかもしれません。また「復帰」とまではいかずとも、スピード感がないとして、社外監査役から横滑りしていた監査等委員全員を「総入れ替え」した関西企業もありました(旬刊商事法務の論稿で、ISSの日本法人代表の方が紹介されていました)。そもそも立案担当者は、制度開始にあたり「指名委員会等設置会社への移行過程として活用していただきたい」と説明しておられましたが、いまのところ指名委員会等設置会社に移行した監査等委員会設置会社は皆無だと思います(もしあれば教えてください)。

2月4日に日本監査役協会から公表された監査等委員会設置会社アンケート調査結果(選任等・報酬等に対する意見陳述権に関連して監査等委員会設置会社に期待される検討の在り方について)を拝読しましたが、経営執行部の意向とは異なる意見を株主総会で実際に陳述した企業がわずか3社(2018年の株主総会における。回答企業は450社)とのこと。会社法の機関である監査等委員会と任意機関である指名・報酬諮問委員会との関係もかなりグレーなままの企業が多いようです。取締役の選任や報酬について、総会上程議案とは別に広く審議、意見形成をしたと回答した会社も全体の3割程度ということで、うーーーん、かなり問題山積の状況ではないでしょうか。

ただ、社外監査役さんは社外取締役に「横滑り」できますので監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行は比較的容易ですが、社外取締役さんが社外監査役に横滑りすることはできませんので(会社法の決まりです)、戻りたいと思っても人材面で困難が伴う、ということになります。コーポレートガバナンス・コードの改訂や開示府令の改正、そして会社法改正に伴う事業報告の詳細化など、後継者選任プロセスや報酬決定プロセスの公正確保の要請が高まる中で、どのように取締役監査等委員が善管注意義務を尽くしていくべきか、経営評価権能を持つ監査等委員固有のリーガルリスクも含め、真剣に検討すべき時期に来ているものと思います。

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