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2019年4月26日 (金)

ガバナンス改善委員会の委員長に就任いたしました。

昨年のGWは証券コード6969の第三者委員会調査で忙しかったのですが、今年もGW前に7997のガバナンス改善委員会の委員長を務めることになりましたのでお知らせいたします(本日、18:35の東証リリース)。今までにないタイプの委員会ですが、会計士や弁護士の委員の皆様と協議しながら、創意工夫を重ねて誠実に職務を遂行する所存です。実は、別の第三者委員会(まだ開示されておりませんが)の委員長も拝命しておりまして、健康にだけは留意しながらGWの混在の中を移動したいと思っております。

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2019年4月25日 (木)

当ブログのGW期間中の更新お休みの件

いつもお世話になっております。当事務所HPにも記載しましたが、当事務所は4月27日(土)より5月6日(月)までお休みとさせていただきます(なお、当職の受任しております継続案件については通常どおり執務しております)。そのためブログの更新についても原則として「お休み」とさせていただきます。当職が関与する案件について、連休中に適時開示等ございましたら、簡単にリリースさせていただきます。みなさま、良い連休をお過ごしください。<m(__)m>

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GAFAは「規制」を「チャンス」に変えてしまい、日本企業は「リスク」に直面する(その2)

4月20日の日経朝刊に、YouTubeのCEOであるウォジスキ氏のインタビュー記事が掲載されています。YouTubeの社会的責任として、違法動画を瞬時に削除するシステムがあるそうですが、削除のために1万人を雇用し、最先端のAIを活用、2018年10月~12月に800万件の動画を削除したそうです。また4月22日の日経朝刊では、「新興ビジネス、ルールも作る」との見出しで、政策形成法務の重要性に光が当たり出したことが報じられていました。いずれも最近のGAFA規制と関連性の深い記事です。

日本政府は大手ITプラットフォーマーに対して個人情報保護、競争法の視点から新たな規制(法整備)をかけようとしています。もちろん外国の大手IT企業への規制を主目的としているものですが、10年以上、中国をはじめ強国の規制と闘ってきたGAFAに「なまぬるい」日本政府の規制手法が通用するとは思えません。いや、通用しないだけであればまだましでして、かえって日本のIT産業の競争力を削いでしまうリスクさえ存在するように予想しています。つまり、GAFAだけでなく欧米のIT大手はビジネスリスクを最大のビジネスチャンスに変えてしまうスキルを持ち合わせており、これは日本企業にとっては脅威です。

日本政府のGAFA規制がGAFAにとってのビジネスチャンスだと考える理由としては、まず上記YouTubeの記事をみてもおわかりのとおり、日本企業と海外企業との「法務力」の圧倒的な差です。Facebookなどは2万人以上のセキュリティー担当社員を抱えています(たとえばこちらのロイター記事)し、GAFAには社長にノーと言えるジェネラルカウンセルも存在します。発生した問題ごとに「すみやかに消費者に謝罪をして修正すべきか」「徹底的に法律解釈で争うべきか」を検討し、どんな規制にも乗り越えてきたスキルがあります。GAFA規制が開始されたとたん、日本企業の違法行為ばかりが山積する状況は、日経ビジネス2018年10月8日号「時事深層」が伝えるとおりです。

つぎに「規制をかける国の国民を味方につけてGAFA規制による生活の不便を訴える」という手法を活用します。これはプラットフォーマーとしてのビジネスモデルだからこそ、といえます。日本の国民の生活に、ここまで浸透してしまったプラットフォームに規制がかかりますと「前のほうがよかった」といった国民の声が上がり、規制による不便を訴える味方がつきます。政府としてはなによりも消費者を敵に回すことは避けたいわけですから、この戦略はかなり有効だと考えます。

そして極めつけが「行政の一部機能をGAFAが担う」という手法です。いわば「ゲートキーパー」としての機能をGAFAが果たし、日本政府と協力しながら日本の第四次産業革命の一翼を担う提案を行います。積極的に業界自主ルールを策定するのもこれに該当します。そしてそれと引き替えに規制の撤廃や例外規定の設置、より制限的でない規制手法への転換を政府に訴えかけます。冒頭に述べた政策形成法務を最大限活用することで、他の日本企業よりも競争上の優位性を確保しようとします(これは他国でも採用してきた手法です)。「失敗を極度におそれる」日本企業と、「失敗を繰り返すことでより組織を強くする」欧米企業との差がはっきりと出る場面です。

では、GAFA規制に日本企業はどう対応すべきでしょうか。ひとつはなんといっても「法務力」の強化です。とりわけ政府に働きかける政策形成法務に強いチームを作る必要があります。「公正取引委員会が『優越的地位の濫用』にあたる可能性が高い」との意見を表明した、などと言われても「それは絶対におかしい。排除措置命令に出たら最高裁まで争う。なぜなら・・・」ときちんと理由を開示して意見表明を行い、失敗を認めるのであれば、社内の責任問題など後回しにして(法務部門の意見を聴きながら)方針転換を速やかに行う。

つぎに「法務力の強化」とも関係しますが、海外企業相手に民民ルール、つまり訴訟を活用して行政規制の実効性確保に努めることです。こういった日本企業による訴訟提起を日本政府が支援するためには、民事訴訟のための法解釈ガイドライン(実務指針)を公表することなどが考えられます。ただし、民間企業による訴訟を行政に活用する手法は米国ではすでに研究されていますが、訴訟を好まない日本ではフリーライド問題などもあってなかなか浸透していません。

そして政府も国民も、GAFA規制による生活の不便をひたすら我慢すること(笑)が考えられます。本当はこれがもっとも有効だと思いますが、まず無理ですよね。。。

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2019年4月23日 (火)

困った社外取締役-会社が社外取締役に期待する役割を考える

今年2月より、内部通報制度に関する認証制度の登録受付が開始されましたが、このたび認証第1号として伊藤忠商事とMS&ADが登録されたそうです(おめでとうございます!)。伊藤忠さんは、もともと不正調査専門の内部監査グループを社内に設立するなど、不正の早期発見にはとても熱心なので、第1号企業というのもナットクです。今回は自己適合宣言認証なので、次は第三者認証を目指されるのでしょうね。今後、次々と認証登録企業が公表されるものと思料します。

さて(ここからが本題ですが)、本日(4月22日)の日経産業新聞「眼光紙背」に「困った社外取締役」なる小稿が掲載されています。東証1部上場会社では複数の社外取締役を選任するのがあたりまえの時代になりましたが、社外取締役を受け入れる企業から弊害も聞こえてくるようになった、とのこと。そして、ガバナンス助言会社による意見として「困った社外取締役」の3つのタイプが紹介されています。①社長経験者で、あれこれを指図をして世話役の取締役会スタッフを振り回す王様型、②出身会社ではナンバー2止まりで、社外役員として厚遇されることから尊大になる勘違い型、③「〇◆では・・・」と、何かにつけて他社例を引き合いに出して議案に反対する「出羽守」型、だそうです。

ただ、①については業務執行型社外取締役として企業から歓迎されるパターンでもあります。経営者OBにはたしかにこの型が多く、社長から「業務執行に近い形で活躍していただきたい」と期待されて経営経験をフルに活用して喜ばれている方も多いと思います。もちろん会社法上の社外取締役といえるためには業務執行はできませんが、M&AにおけるDDや交渉等に参画する方はとても重宝がられています。また、②については、ナンバー2でなくても尊大な人はいるので、あまりナンバー2とは関係ないのではないかと。むしろナンバー2でCFOとして活躍された方は、他社でも知見が活かせるのではないでしょうか。とりわけ会社の有事ともなれば、いわゆる根回し(情報共有範囲の決定、情報伝達の順番の決定等)に長けた方が多く、私もこういったナンバー2の社外役員の方に本業で何度も助けていただきました。

そして最後の③「出羽守」型というのも、社長から「『井の中の蛙』になりたくないので、他社ではどうなっているのか、積極的に教えてほしい」と依頼をされて社外取締役に就任するケースも多いので、これも特に弊害というほどのことではないと考えます。日弁連の社外取締役ガイドライン2019改訂版では、「第3 社外取締役の具体的活動の指針」1の⑴として「社外取締役就任時にあたって、経営陣が社外取締役に何を期待しているのか(期待される視点・発言、所属する委員会、報酬や条件等)を確認する。なお、上場会社の場合、会社が社外取締役に求める役割、責務等について、コーポレートガバナンス・コード等を踏まえて、会社の考え方、対応を確認する」と明記しています。上記論稿に示された社外取締役の弊害を防止し、困った社外取締役にならないためにも、就任時における経営陣との丁寧な協議が必要です。会社から期待される役割とは何か、経営陣との間でしっかりと確認することがもっとも大切だと考えます。

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2019年4月22日 (月)

監査品質の向上と業種特化型の監査法人

今月号のFACTA(2019年5月号)では、DLE社の不適切会計を早期に警告できなかった監査法人を厳しく批判する解説記事が掲載されていました。先日の(当ブログでもご紹介した)SVHD社の第三者委員会報告書でも、大手監査法人の監査品質に疑問が投げかけられていました。相変わらず、会計不正事件が頻発しますと、監査の品質をいかに向上させるか、その方策が話題になりますね。

4月15日の日経WEBニュースでは「新興企業の株式上場に監査難民の危機、解決策は?」といった見出し記事が掲載され、(監査難民となる新興企業を出さないために)大手監査法人以外の監査法人にもIPO監査の受け皿になることが課題とされているそうですが、たとえば課題解決策のひとつとして「業種特化型」の監査法人など登場しないものでしょうか?大手以外の監査法人が「この監査法人はこの業界の監査に強い」といった信用を構築することでIPOでも監査を担当できる道は開けないでしょうかね(素人の素朴な疑問で恐縮ですが)。ちなみに、大手監査法人の中でも、業種部門別のチームを構築しているのはPwCあらた監査法人さんくらいだとお聞きしております。

会社の経理部門にITが導入されたり、アウトソーシングされたり、さらにはグループで集約される中で、昔のように会計処理の全体を理解できる社員がとても少なくなったと思いますが、だからこそ監査法人が業種ごとのビジネスの流れを認識して「不自然さ」に気づく必要性があるのではないかと。また、統合報告書に代表されるように、機関投資家が財務情報と非財務情報との関連性に関心を持つ時代になったことから、世間的にも「業種特化型監査法人」への期待が高まっているのではないでしょうか。減損処理や税効果会計、収益の認識基準の変更など、ときどき会社側と監査法人側との見解の相違が見受けられますが、「市場の番人」としての監査法人の強い立場を維持するためにも、専門性の高い監査法人が要請されているように思います。

ただ、こういった議論が会計監査業界から出てこないところをみますと、業種特化型監査法人にも、それなりの短所といいますかデメリットもあるのかもしれませんね。

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2019年4月19日 (金)

GAFAは「規制」を「チャンス」に変えてしまい、日本企業は「リスク」に直面する(その1)

4月18日の各紙1面では個人情報保護、独禁法運用により、日本政府がGAFA規制を強めることが報じられていました。私は昨年秋の日本監査役協会での講演や、当ブログのこちらのエントリーの冒頭で述べているとおり、「日本政府がGAFA規制を強めれば、ますますGAFAを利することになり逆効果」と考えております。本日の産経新聞朝刊では、GAFAへのヒアリングを行った自民党政調副会長の木原議員のインタビュー記事が掲載されており、

聞き取りを通じ、独禁法や個人情報保護法を改正して規制を強化しても、資本と技術力に勝るGAFAはそれを乗り越えてくるだろうなと感じました。そうなれば規模の小さな事業者は対応が難しくなって逆に格差が広がる。規制と革新のバランスをとりつつ、公正で透明な取引を担保することが重要です。

と語っておられました。規制主体のメンバーの方から、やっとこのような発言が出てきましたが、自称GAFA研究家(?)である私からすれば当然のことと思います。たとえば具体的な例として、日経ビジネス2018年10月8日号「時事深層」(16頁以下)の記事を要約しますと以下のとおりです。

・日経記者が(記者であることを明かさず、一般人のふりをして)GAFA4社および国内のヤフー、楽天、LINEに(改正個人情報保護法に基づく)個人情報開示請求権を行使。各社がどのような記者自身の個人情報を保持しているのか、確認することが開示請求の目的だった。
・この請求に対して無条件で開示をしたのはFacebookとGoogleのみであった。他社からは「開示を求める情報の指定がない」「開示によってデータベースの管理、運用に著しい支障を及ぼすおそれがある」など、法の拡大解釈、条文の誤った解釈によって開示を拒否された。
この事実を個人情報保護委員会は重大な法令違反とみて、2018年11月をめどに、同委員会は保護法ガイドラインの改訂に踏み切ることになった。

今朝の朝日朝刊では「優越的地位の濫用」に関する事業者アンケートの結果が公表されていましたが、GAFAを規制するための立法事実を集めようとしたら、日本の大手ITのほうがヤバイ状況であることが露呈されてしまいました。つまり、GAFAと同じ土俵のうえで日本企業が規制対象となってしまうと、競争格差は広がるばかりということです。

これまでのGAFAのリスクマネジメント戦略は、ハンパないくらい「人的資本」を充実させています。具体的には①レッドオーシャンをブルーオーシャンに変える(規制の撤廃、規制に例外設置、自主規制策定、共同規制の活用、民事訴訟の活用で相手を圧倒、M&Aでグループ化)、②レッドオーシャンにおける競争優位を確保する(外圧利用、相手国の社会政策への協力、NPO・NGOの活用、自己適合宣言の活用等)、③レグテック(レギュレーション・テクノロジー)の導入(規制の強化、撤廃に関してクラウド、AIを活用して対応)といった手法が効率的に繰り返されています。ということで、(その2)では、日本政府の個人情報保護規制、独禁法規制に対して、GAFAがどのような対応に出てくるかを予想し、これに日本企業や政府がどう立ち向かうべきかを考えてみたいと思います。

 

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2019年4月18日 (木)

日産前会長の追放画策-日経と文春のストーリーで気になる「時期のズレ」

本日(4月17日)リリースされた日経ビジネスの有料版スクープ記事「ゴーン氏宛てメール入手 政府、日産・ルノー統合阻止へ暗躍か-仏政府向けの『覚書』の存在も明らかに」は興味深いものでした。ゴーン氏のルノーCEO続投(向こう4年間)が昨年2月に発表され、3月にはルノーと日産の研究開発、生産技術、物流・購買、人事での連携を発表。さらに4月からは三菱自動車もこれに加わる、といった状況のなかで、経産省と日産との(統合阻止に向けた)やりとりが関係者のメールから判明した、というもの。もちろん取材源は秘匿されるべきですが、いったい誰が資料を(この時期に)日経さんに持ち込んだのでしょうね。

ただ、この日経ビジネスのスクープ記事を、昨年12月の週刊文春の記事(日産社員からの取材とされる)と比べてみると、登場人物はピッタリ一致するものの、前会長の不正調査や追放の画策を練っていたとされる時期が微妙にズレていることに気が付きます。日経のスクープ記事では昨年3月~5月の時期には、現CEO含め、関係者と前会長との信頼関係は厚く、不正調査や追放画策は昨年6月以降に行われたものとされています。しかし文春の記事では、すでに3月の時点で関係者が集まって前会長追放の画策は始まり、5月の時点では(司法取引を活用することも含めて)追放のストーリーは出来上がっています。この時期のズレは前会長逮捕劇のストーリーを考えるにあたっては大きな差です。さて、日経と文春ではどちらが真実なのでしょうか。経産省がやけにヒートアップしているところを(日産の)キーマンの方が冷静に対処されようとしている雰囲気が読み取れますが、このあたり、未だ理解に苦しむところです。

このような記事が出ますと、またまた「国策捜査」といった憶測も出てきそうですが、メールでキーマンの方がおっしゃるように「あくまでも民間企業内で処理すべき問題」として(日産側は)対応されたのではないかと推測します。ただ、そこに「日本版司法取引制度」という、これまで検察も使ったことがない武器が活用されたわけです(ここは前会長の弁護人の方々も狙いドコロだと思います)。立件されている事実のどこまでを司法取引がカバーしているのかは不明ですが、(金商法違反で起訴されている)法人としての日産と司法取引当事者とが画策していた、といった事実が出てくることは(追放を画策する側からすると)かなりマズイわけでして、前会長逮捕に至るまでの半年間の真相というものは、なかなか表面化することはないだろうな・・・と予想しております。

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2019年4月17日 (水)

社長と社外取締役との分かり合えないミゾ(その2)-社長はやめられない

先日、A社長(老舗の東証1部上場会社)との会食における雑談。A社長曰く「こうやって社長になってみると、やっぱり自分から退任時期を決めるのはむずかしいですよね」「最初はしかるべき時期に・・・とは思ってましたが、周りを見回して後継者候補を具体的に選定しているうちに『この人たちが社長やるくらいなら俺がやったほうがマシ』と思っちゃいますもん」「病気にでもなって足腰が立たなくなれば別ですが、やっぱり元気なうちはやめられませんよね(笑)」

私「じゃあ社外役員さんが『アンタ、もう感覚がずれてますからやめなはれ』って言って引退勧告したらどうですかね?」と質問したところ、A社長曰く「ああ、それなら辞めます。そう言ってくれたらありがたい。強制的に辞めさせる制度、たとえば後継者計画を誰かが主導するとか、役員退任ルールを社外役員が中心になって作るとか、そういったものがあれば覚悟しますが、そうでもないかぎり、社長って実際になってみるとホント、人に譲りたくないですよ」(ちなみに、その会社には顧問や相談役はいらっしゃいません)

ガバナンス・コードではCEOの選解任手続きの明確化や概要の開示が求められ、また後継者育成計画の策定なども要請されています。しかし実際には、社外取締役にとってはCEOに退任を要求するといったことはかなり勇気が必要です。ただ、上記のA社長の話を聞きますと、社外取締役がズバリ退任要求をしたほうが社長さんの希望にも沿うのかもしれませんね。たとえ「バッサリ」とまではいかなくても、「社長、いまごろ『心変わり』しても、もう遅すぎまっせ」といえるような冷徹な手続きによって後継者育成計画を進めることが重要かと思います。権力が長く続くと弊害が生じるわけですが、人間は弱いものですからガバナンス・コードの運用にも工夫が必要です。

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2019年4月15日 (月)

社長と社外取締役との分かり合えないミゾー「経営には正解はない」

先週金曜日(4月12日)は日弁連の社外取締役シンポに登壇させていただきました。著名な元経営者の方々や投資銀行の方の意見を拝聴し、私も勉強させていただきました。12日は財務省や日本取締役会協会での講演の後だったので、私は比較的(?)おとなしくしておりました。ただ、事前打ち合わせの雑談の中で、元経営者の方の間で交わされた「なるほど」と思ったお話がございまして、本編では聴衆の皆様の前で披露されなかったので、ここでひとつだけご紹介させていただきます。

「経営には正解はない」

元経営者のおふたりのパネリストの方が、「経営には正解はない」「一生けん命に最適解を考えるが、最後は『エイ!ヤー!』という部分がどうしても残る」といった共通の発言をされていました。そういった視点から(自社の)社外取締役がどうみえたか・・・ということを尋ねますと「専門家の方は、これが正解だ、と提案してくる。いや、そんなに簡単に正解がわかるんだったら苦労しませんよ、とボヤキたくなりました」「自分と同じ経営者の社外取締役だと、ご自身の成功体験から『これが正解だ』とおっしゃる。しかし時代が変わったんですよ、そんな成功体験は今の時代には通用しませんよ、とボヤキたくなった」とのこと。

なるほど、社長さんは社外取締役に対しては「貴重なご意見ありがとうございます。参考にさせていただきます」と紳士的におっしゃることが多いのですが、ホンネではこんなところなのかもしれませんね。経営陣が少しでも社外取締役制度を理解するためには、社長が社外取締役を招く際、社外取締役にどのような面で活躍してほしいのか具体的なすり合わせをすべきと思いますし、そのためにも(現役の社長時代は無理でも)将来の社長候補の方には、どこかの会社の社外取締役に就任して、別の視点で経営に関与することもよい経験ではないか・・・と思いました。

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2019年4月12日 (金)

社長に嫌われると監査役にされてしまう東証1部企業は実在した!

4月12日は朝から財務省や日本取締役協会などでお話をさせていただくので手短に(早く寝ます)。

本日(4月11日)の夕方に開示された某会社(東証1部)の第三者委員会報告書がスゴイ内容です。

社長に嫌われた(実績を残せなかった)取締役さんが「おまえは重箱の隅をつつくようなマネがうまいから監査役にしてやる」と言われてホントに監査役にされてしまったそうです。東証1部の会社でこれはちょっと悲しい。。。💦2名の社外監査役の方々はどんな思いで職務を全うされていたのでしょうか。。。

しかし「社長の親密女性関係マップ」を作成したフォレンジックス調査を見たのは初めてです(私とほとんど年齢変わらんのに・・・ウーーン、元気やなぁ。。。。😵 こういう人生もあるんか。。😖コメント以上)

すいません、忙しいのでGWにちゃんと読ませていただきます。

 

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2019年4月11日 (木)

LIXIL新旧CEO対決-ホールディングスのCEOとして求められるものは何か

国交省の幹部が民間企業の役員を威嚇したとして国に530万円の損害賠償が認められたそうです(朝日新聞ニュース)。国交省の幹部の方が「もうお前のところには発注しない」として、個人の資格で(国交省行政に反するような)請願を行った取締役を辞任に追い込んだ、とのこと。法律に基づかない事実上の行政介入および憲法16条違反(請願権侵害)ということで、高裁での逆転判決です。判決内容によっては企業実務にも影響を及ぼしそうで、ぜひともこの判決文は全文読みたいですね。

「取締役の辞任」といえば(?)、昨日に引き続きLIXILさんの新旧CEO紛議のお話です。本日(4月10日)の読売新聞朝刊の記事(リクシル対立-新旧トップの主張)は素晴らしい。前CEOの瀬戸氏と会長兼CEOの潮田氏のインタビューを同時並列で掲載して対立の論点を明らかにしています。今まで報じられてきた内容を超えていて、こういった記事が早く読みたいと思っていました。

瀬戸氏は調査報告書の内容に「恣意性を感じる」として不満を抱いておられます。おもにガバナンスの面から強く批判をしておられますが、「私はハンズオンのタイプの経営者。CEOは現場に赴いて管理をすることが大切。海外拠点(シンガポール)で経営などありえない。当社は今、管理が必要なとき。可能性を広めるときではない。会社の状況によって求められる経営者の像は違う」とのこと。一方の潮田氏は「ホールディングスのCEOとしての仕事をせよ。各事業会社には優秀なトップが存在するのだから、これを束ねて最適な資源配分をするのがホールディングスのCEOの役目。11億もの報酬をもらっておきながらこの業績なら責任をとるのが当然。私が海外の拠点からリスクやチャンスに関する情報を提供することは取締役会での合意があってのこと」と述べておられます。

グループ経営でCEOに求められるのは各事業会社のシナジー効果を上げること(ヨコの関係)と、資本コストを上回る業績を上げるための最適なポートフォリオを組み立てること(タテの関係、各事業の最適な資源配分を行うこと)ですから、瀬戸氏はシナジー効果重視、潮田氏は最適資源配分重視というところでしょうか。このあたりはホールディングスのCEOに求められるものを考えるうえでとても興味深い。私自身の意見としては、グループとして中小規模のホールディングスなら瀬戸氏のようにハンズオン志向が大切だと思います(ハンズオンで人を育てることができるのは組織の大きさに限界があるように思います)。しかし、LIXILグループのような大規模なグループをまとめるのであれば、夢を語るのと同時にグループ全体のポートフォリオにこそ注力すべきと思います。「選択と集中」において厳しい仕事を通じて結果を出すことに(度胸と才能がなければ到底できない仕事として)11億円の報酬価値があるように思います。ということで、個人的には潮田氏の意見に共感するところが大きいです。

たしかに、3月29日に公表されたLIXILグループ会社における不正会計事件の調査報告書を読みますと、「選択と集中」「最適ポートフォリオ」の本社趣旨・理念が現場に浸透していなかったことに(会計不正の)原因があったと認定されており、瀬戸氏が主張している「現場管理」はいまのLIXILのブランド価値を維持するためには重要であることは否定しません。しかし、そこはCEOの仕事というよりも取締役会を中心とした内部統制システムの運用として対応するべきではないかと。

上記読売新聞の記事をお読みになって、いろんな意見が出てくると思いますが、これも「ガバナンスの力」があるからこそ、です。私のような野次馬が新聞記事を読んで云々というよりも、こういった意見の違いが社外取締役の前で開示されて、これを社外取締役が自らの知見をもって議論し判断する、ということが健全なガバナンスだと思います。そういった意味では瀬戸氏がLIXILのガバナンスを大いに批判しておられる点は正論だと思いました。

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2019年4月10日 (水)

LIXIL代表執行役交代紛議に思う-監査役会設置会社こそ社長解任基準が必要では?

LIXILの代表執行役交代の一連の経緯に関する報告書の全文が公開されましたね。社外取締役の方々の強い意向が示されたのでしょうか。2月のブログエントリーで私なりの疑問を書きましたが、やはり全文を読むと納得するところもありました。指名委員会の委員の方々が「創業者CEOに遠慮した」というだけでは済まないところも多々あるように感じましたが、「他の上場会社でも、同じようなことが起きたら同じような経過をたどるだろうな」というのが私の率直な印象です。創業家CEOでなくても、サラリーマン社長さんであっても、社外取締役は「忖度」してしまうのではないかと。今回のLIXILさんの件でも、解任された元CEOの方だけが反旗を翻しても機関投資家の動きにはつながらなかったかもしれません。別の創業家の方が元CEOの支援の声を上げたことが大きかったのではないでしょか。

前回のエントリー同様、委員の方々による法的評価へのコメントは差し控えますが、以下「今後検討すべき対応策」というところについての感想です。上記報告書では、本件に関するガバナンス上の問題点及びそれを招いた原因・背景、ガバナンス・コード等を踏まえて、CEO選任に関する手続の透明性(具体的な手続の明確化)、指名委員会の権限・役割の明確化、解任に関する基準や手続きの策定、筆頭社外取締役の選任等が提言されています。しかし、LIXILのような指名委員会等設置会社の場合には、このような基準がなくても(また執行役の選解任に関する権限が不明確であったとしても)人事に関する有事には主導的役割を果たすことが善管注意義務のひとつだと思いますので、むしろガバナンス・コードにコンプライしている監査役会設置会社にこそ、このような提言が必要ではないかと感じました。

先日、あるコーポレートガバナンスの勉強会でも「CEOの選解任の透明性」について議論されましたが、ガバナンス・コードをコンプライしている上場会社は多いものの、CEO解任基準を具体的に明記している会社はアイ・アールジャパンホールディングス、解任手続を具体的に明記している会社は(上記報告書でも注記されていますが)テクノプロ・ホールディングスくらいではないでしょうか(現時点ではもう少し増えている可能性もありますが)。また、勉強会では「本気でCEOの解任基準の充足判断や手続の適正性判断を行うのであれば、誰が議案を上程するのか」といった疑問も出ておりまして、結局、昔の三越事件のように「根回しによる動議」によるものであれば、そもそも解任基準や手続の明確化など必要ないのでは?との意見も出ていました。さらに「解任手続による解任決議が通った場合、本当にそのとおりに開示するのだろうか」といった疑問も出ていて、「レピュテーションリスクを考えたら、CEOを説得して『一身上の都合による辞任』でいいよね。」「いや、それアカンやろ。前に東証から厳重注意受けた会社あったやんか。」といった議論もありました。

いずれにしても、解任基準や手続きを明確にするのであれば、議案を出す指名委員会や審議を行う取締役会の議長をCEOと分離しなければ実効性に乏しいと思います。本日の日産前会長さんの動画を拝見しましたが、日産を愛しているにもかかわらず後継者については何も考えていなかったようです。ちなみにGEのジャック・ウェルチは日産前会長と同じく(CEO就任後)丸20年経過したところで3人の候補者から1名を後継者に指名し、後の2名に会社を去るよう説得する「厳しい仕事」をやり遂げています。後継者育成や選解任の議案は、制度として浸透していないとなかなか上程できないものと思います。

PS テレビのニュースで今年の「監査役全国会議」の模様が放映されていて驚きました。これも日産元会長さんの事件の影響でしょうね。

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2019年4月 9日 (火)

日産前会長・株主総会追放劇-取締役解任に「正当理由」はあるか?

4月8日に開催された日産の臨時株主総会で、日産の前会長さんの取締役解任議案が賛成多数で可決されました。会社と取締役の関係は民法上の委任契約に従うことになっていますので、株主総会はいつでも、どんな理由でも取締役を解任することができます。ただ、その解任に正当な理由がない場合には(法定責任として)会社は解任された取締役に対して損害賠償責任があります(会社法399条2項)。一般的に損害として裁判で認められるのは「任期満了の時期までの役員報酬相当額」ですが、もし前会長さんが会社との間で未確定(後払い)報酬も合意しているとなりますと、その分についても損害賠償の範囲に含まれます(かなりの高額になりそうですよね・・・)。

本日の臨時株主総会では20人ほどの株主さんから質問が出たそうですが「解任した後、ゴーン氏には報酬を支払うのか?」といった質問は出なかったのでしょうか?おそらく日産側が用意していた想定問答では「ゴーン氏の解任には『正当理由』が認められるので、残りの報酬分を支払う予定はありません」「むしろ会社としてはゴーン氏に対して損害賠償請求の訴えを提起する予定です」と回答することになっていたのではないでしょうか。一部報道では、現CEOの方が前会長さんへの損害賠償請求の予定について回答したようにも報じられています。

ちなみに、上場会社ではありませんが、菓子製造、ホテル経営等の事業を営む名門企業の取締役が解任された事例が記憶に新しいところです。当該名門企業の取締役を解任された創業家の方が「私への解任には正当理由がない」として損害賠償請求を求めた裁判では、裁判所が「取締役としての適格性に疑念を抱かせる行為」をいくつか認定して「合わせ技一本」で解任の正当理由を認めています(東京地裁判決 平成30年3月29日、金融・商事判例1547号42頁。ただし控訴審係属中)。ご承知のとおり日産の前会長さんは、会社法違反、金商法違反の刑事訴追に対して否認を続けていますし、私自身、いまでも刑事立件のハードルは高いと思っていますが、この名門企業の裁判例からしますと「取締役としての適格性に疑問を抱かせる程度の行動」はいくつか(前会長さんにも)認定されるものと思いますので、やはり(損害賠償義務が否定されるための)解任の「正当理由」はあると考えます。

ところで、株主総会の議長でもある現CEOの方は「会社からゴーン氏に対して損害賠償を請求する予定」と回答されたとなりますと、もし本当に損害賠償を請求するのであれば前会長さん側から(予備的に)過失相殺の抗弁が出されますよね。善管注意義務違反による損害賠償請求の場合には抗弁がなくても過失相殺がなされますが(民法418条)事実上は抗弁が出ると思います。これって日産の歴代の役員の方々にとって脅威ではないでしょうか。一般の株主代表訴訟であれば、原告株主は社外者ですから善管注意義務違反や過失の立証には高いハードルがありますが、前会長さんは社内の人ですから、他の取締役らの過失を裏付ける様々な証拠を握っているはずです。敵対的とはいえ、証言の信用性も高いものがあります。もし過失相殺の抗弁が、具体的な事実によって認められることになれば、今度は一般の株主による代表訴訟にも大きな影響が及ぶことになります。しかし、そのことを怖がって提訴を躊躇していたのでは、今度は不提訴という不作為の違法性を株主から指摘されて代表訴訟が提起される可能性も高いわけで、いずれにしても日産の役員の皆様は難しい立場に立たされることになるかもしれません。

4月9日には、前会長さんの逮捕直前に収録したとされる動画が公開されるそうですが、そこでどのようなことが語られるのでしょうか。ここまでは検察と会社が一枚岩のような印象がありますが、今後は検察と会社、そして会社役員との間で「利益相反」の状況を(合法的に)作出する戦略に出るのではないでしょうか。

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2019年4月 8日 (月)

ガバナンス改革-報酬諮問委員会の運用における素朴な疑問

報酬ガバナンスの深化ということで、会社法改正や金商法改正(開示府令の改正)でも役員の報酬制度の改革が論点のひとつとされています。主に開示規制に関する改正ですが、株主が自身で役員の報酬をコントロールすることは困難なので、社外取締役を中心とした報酬諮問委員会(報酬委員会)の設置・運用も検討課題に挙げられることが多いようです。ただ、実際に報酬委員会の委員としての経験から、そもそも報酬委員会は機能するのかどうか、私自身が浅学なこともあって素朴な疑問を抱いております。

任意の機関として報酬委員会を設置することは賛成なのですが、その運用に関する問題です。ひとつめはサステナビリティ経営と報酬制度の関係です。中長期の企業価値向上を目指して、中長期の業績連動型の株式報酬制度を採用する企業が増えています。そして業績評価の対象となる役員の中にはコンプライアンスやCSRなど、いわゆるESG経営への責任を担った方々もいます。しかし、業績を達成したかどうかというKPIに、ESG関連の指標は採り入れられていないのが現状です。たとえば法律雑誌「ビジネス法務」の2018年10月号に掲載されているウイリス・タワーズワトソン社コンサルタントの方の論稿を読んでも「ESG指標を採用している企業は極めて少ない」とされています(同誌「中期経営計画と報酬制度の連動」78頁参照)。こういった達成度は各役員のBSC(バランススコアカード)において評価の対象となっており、報酬に反映させている会社もあるかもしれませんが、このようなBSC自体が報酬制度に組み込まれているとなりますと、(BSC自体は人事管理のために内部で作成するものですから)そもそも報酬決定方針や算定方法を開示したとしても「ブラックボックス」はそのまま残るのではないでしょうか。

ふたつめは「中期経営計画と報酬制度」の関係です。インセンティブ報酬の一環として、中長期業績と連動する報酬は、会社が公表する中期経営計画のKPIを用いて達成度を検討せよ、と言われます。どのようなKPIを採用するかは会社によって様々です。しかし、会社を取り巻く経営環境は、ダボス会議で話題になっているようにVUCAの時代です(不安定、不確実、複雑、曖昧)。これだけビジネスリスクが変化する時代だと中期経営計画は頻繁に見直しを迫られます。そうなりますと、中期で業績を達成したのかどうか、判定を要する3年~5年後には、もはや計画も指標もズレているという状況が考えられます。そのようなズレが生じた算定方法によって報酬を決定してもよいのでしょうか。約束を守らないわけにはいかないので実行するわけですが、あまり株主に対する合理的な説明にはならないような気もします。

そして最後に日本企業の労働慣行と報酬制度との関係です。一生懸命に報酬委員会が個別取締役の報酬額を決定したとしても、社内取締役の方の関心は出てきた報酬額の金額(絶対額)と他の社内取締役の報酬額や経営幹部の給与額との差額(比較)です。どんなプロセスでそうなったのかは関心がありません。要は社員と役員の報酬バランスですよね。「ウチくらいの規模の会社の社員がこれくらいだから、まあ、役員報酬もこの程度でバランスがとれていていいんじゃないの?」ということで、年功序列、終身雇用、企業内組合制度の労働慣行が変わらないかぎり、株主からみえる報酬よりも社員からみえる報酬のほうが気になるところかと。実はこのあたりが一番報酬のインセンティブがしっくりこない要因ではないかと素朴に感じております。最近、上場企業においては社外取締役を中心とした指名・報酬委員会の設置が増加しておりますが、そもそも取締役会で指名や報酬の在り方、社外取締役の人数、機関設計などを真剣に協議しなければ委員会も形式的な運用に終始していまうのではないか・・・と考えております。

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2019年4月 5日 (金)

目立ち始めた「統合報告書の二極化傾向」

朝日新聞はLIXILの第三者委員会報告書の全文を(極秘に?)入手したそうですね。開示された要約版と全文を比較した記事を読むと、いかに社外取締役制度が脆弱であるかがわかります(もちろん自戒をこめて・・・)。久保利先生が厳しいコメントを述べておられますが、たしかに問題がありそうです。ぜひともLIXILの社外取締役の方々の力で全文を公開していただきたい。以下、本題です。

今朝(4月4日)の日経産業新聞では、「統合報告書 発行4倍に」と題する記事が掲載されています。上場会社において統合報告書を発行する企業が増加しており、KPMGジャパンの調査によると東証1部企業の18%、非上場を含めた全体では400社を超える企業が発行しているそうで、この数は5年まえの4倍に相当。スチュワードシップ・コード(具体的には改訂版 指針3-3)の影響で、機関投資家が対象企業の「サステナビリティ経営の一環としてのリスクマネジメント能力」を真剣に評価するようになったので、この傾向は今後ますます強まるものと予想します。

調査を行ったKPMGのパートナーの方が「非財務情報に対する企業の意識は高まっている。一方、優れた統合報告書とそうでないものの差が開き、内容の優劣で二極化傾向がある」と述べておられますが、私も同様の意見です。コーポレートガバナンス・コードへの対応状況をみていて、同じような視点から、私なりに二極化傾向が生じる要因について、以下の図表のとおりまとめてみました。詳しい解説はいたしませんが、おおよそこんな感じではないでしょうか(図表が見にくい場合は、図表をクリックしてください)。

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統合報告書も「形式から実質へ」と深化しているものと考えています。

 

 

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2019年4月 4日 (木)

日産自動車の企業統治に関する各紙社説の検証(産経新聞より)

産経さんは大きく「ゴーン氏、4回目の逮捕へ」と報じています。逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがないからこそ保釈が許可されたと思うのですが、逮捕の理由や必要性はあるのでしょうかね?ゴーン氏がツイッターで語った内容と関係はあるのでしょうか?ということで(?)、本日は産経新聞さんの記事についてひとこと。

4月3日の産経新聞朝刊「社説検証」は、日産の企業統治に関する各紙社説をテーマにしていて参考になりました。ガバナンス改善特別委員会報告書の公表を受けて・・・というものですが、産経と読売は「企業統治の改善は形だけでは意味がない」として「監督機関としての取締役会の実効性を高めよ」(産経)、「経営者や社員の意識改革を進め、社内風土の見直しを図れ」(読売)としており、おおむね当ブログで私が述べたところと合致したものです。

日経は「(執行と監督の分離を明確にしたガバナンスは)他社にも参考とすべき点がある」として、特別委員会報告書を評価していますが、朝日は「今回の内容で経営の立て直しは十分とはいえない」「前会長以外の経営者の経営責任について踏み込んだ検討や説明をしていない」と厳しい意見です。ちなみに上記産経記事では紹介されていませんでしたが、東京新聞ではおなじみ八田進二先生(青山学院大学名誉教授)も、たしか朝日と同様「検証が不十分」との意見を述べておられ、大きく紹介されていました(なお、毎日新聞もけっこう詳細に取り上げておられたように思いますが、上記の産経記事ではなんらの紹介もありませんでした)。

最近の各紙記事では日産のガバナンスを語るにあたり「なぜカリスマ支配者の暴走を止められなかったのか」といった問題提起がなされていますが、そもそも前会長さんが「暴走している」という認識は他の役員の方々にはあったのでしょうか。まったく暴走していない経営者でも「うるさい監査役はやめさせろ」とおっしゃるケースも普通にありますし(笑)、グレッグ・ケリー氏のように「(ブラックボックスを引き受けて)なにをしているのかわからない役員さん」がいらっしゃる会社も結構ありますよね。「経営の透明性を高める必要がある」(産経)のはそのとおりなのですが、では具体的に日産の事例では、ゴーン氏の何をもって(取締役会が止めることができた)「暴走」と判断するのか、また「暴走」か否かの判断は誰がするのか、そこが明確にならないと議論が進まないように思います。

私もゴーン氏の「暴走」とは何であったのか、いまだによくわからないのですが、開催時間がわずか20分であったり、利益相反取引や関連当事者取引に関する審議がされていなかった、代表取締役(ケリー氏)による業務報告がなされていなかった、となりますと、そもそも「取締役会の暴走」があったのではないかとの疑念が生じてしまいます。日産をめぐって、今後フランス政府やルノーが経営支配を強めようとする動きが出るかもしれませんが、そこで必要なのは経営の透明性を高める以前に、まず「取締役会の暴走」の根本原因を究明することではないかと思います。これだけ日本経済に影響を与えるほどの大企業ですから、「カリスマ経営者」以外にも「取締役会の暴走」を許してしまう要因(力学的要素)はたくさんありそうです。

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2019年4月 2日 (火)

大塚家具-財務報告に係る内部統制に「開示すべき重要な不備」

3月末に定時株主総会を終えたばかりの大塚家具さんですが、本日(4月1日)、財務報告内部統制に開示すべき重要な不備があり、内部統制は有効ではない、との内部統制報告書を提出されたそうです(適時開示リリースはこちら)。大塚家具さんといえば、会計監査人の交代があり(大手監査法人から小規模の監査法人へ)、また監査等委員会設置会社から監査役会設置会社へ機関形態を移行しましたが(当ブログの3月13日エントリー記事)、このあたりが原因なのかもしれませんね(私は監査報酬で折り合いがつかなかったことが原因だと思っていましたが)。

有価証券報告書の提出時期が総会直後となるために、株主総会ではインサイダー情報を開示できないところではありますが、総会招集通知の事業報告や監査報告書を読みますと、関係者の悩みが伝わってくるように思います(投資家からの批判は出てくるのでしょうか、それとも「内部統制の重大な不備よりも業績回復に向けた施策のほうが重大関心事」ということでノープロブレムということなんでしょうか)。なお、会社側は内部統制の不備が判明したのが期末直前だったために修正できなかった、今後は速やかに修正します、とのこと。

大きな金額の会計不正事件を起こさずとも、決算・財務プロセスに「?」と感じるところがあれば、(ダイレクトレポーティングを採用せずとも)適正意見がもらえない、という点は他社も留意すべきと考えます(比較的小さな上場会社の場合には「財務・会計を知っている担当者がいない」という理由で「重大な不備」を指摘されていたケースはあったと思いますが)。

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