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2019年4月25日 (木)

GAFAは「規制」を「チャンス」に変えてしまい、日本企業は「リスク」に直面する(その2)

4月20日の日経朝刊に、YouTubeのCEOであるウォジスキ氏のインタビュー記事が掲載されています。YouTubeの社会的責任として、違法動画を瞬時に削除するシステムがあるそうですが、削除のために1万人を雇用し、最先端のAIを活用、2018年10月~12月に800万件の動画を削除したそうです。また4月22日の日経朝刊では、「新興ビジネス、ルールも作る」との見出しで、政策形成法務の重要性に光が当たり出したことが報じられていました。いずれも最近のGAFA規制と関連性の深い記事です。

日本政府は大手ITプラットフォーマーに対して個人情報保護、競争法の視点から新たな規制(法整備)をかけようとしています。もちろん外国の大手IT企業への規制を主目的としているものですが、10年以上、中国をはじめ強国の規制と闘ってきたGAFAに「なまぬるい」日本政府の規制手法が通用するとは思えません。いや、通用しないだけであればまだましでして、かえって日本のIT産業の競争力を削いでしまうリスクさえ存在するように予想しています。つまり、GAFAだけでなく欧米のIT大手はビジネスリスクを最大のビジネスチャンスに変えてしまうスキルを持ち合わせており、これは日本企業にとっては脅威です。

日本政府のGAFA規制がGAFAにとってのビジネスチャンスだと考える理由としては、まず上記YouTubeの記事をみてもおわかりのとおり、日本企業と海外企業との「法務力」の圧倒的な差です。Facebookなどは2万人以上のセキュリティー担当社員を抱えています(たとえばこちらのロイター記事)し、GAFAには社長にノーと言えるジェネラルカウンセルも存在します。発生した問題ごとに「すみやかに消費者に謝罪をして修正すべきか」「徹底的に法律解釈で争うべきか」を検討し、どんな規制にも乗り越えてきたスキルがあります。GAFA規制が開始されたとたん、日本企業の違法行為ばかりが山積する状況は、日経ビジネス2018年10月8日号「時事深層」が伝えるとおりです。

つぎに「規制をかける国の国民を味方につけてGAFA規制による生活の不便を訴える」という手法を活用します。これはプラットフォーマーとしてのビジネスモデルだからこそ、といえます。日本の国民の生活に、ここまで浸透してしまったプラットフォームに規制がかかりますと「前のほうがよかった」といった国民の声が上がり、規制による不便を訴える味方がつきます。政府としてはなによりも消費者を敵に回すことは避けたいわけですから、この戦略はかなり有効だと考えます。

そして極めつけが「行政の一部機能をGAFAが担う」という手法です。いわば「ゲートキーパー」としての機能をGAFAが果たし、日本政府と協力しながら日本の第四次産業革命の一翼を担う提案を行います。積極的に業界自主ルールを策定するのもこれに該当します。そしてそれと引き替えに規制の撤廃や例外規定の設置、より制限的でない規制手法への転換を政府に訴えかけます。冒頭に述べた政策形成法務を最大限活用することで、他の日本企業よりも競争上の優位性を確保しようとします(これは他国でも採用してきた手法です)。「失敗を極度におそれる」日本企業と、「失敗を繰り返すことでより組織を強くする」欧米企業との差がはっきりと出る場面です。

では、GAFA規制に日本企業はどう対応すべきでしょうか。ひとつはなんといっても「法務力」の強化です。とりわけ政府に働きかける政策形成法務に強いチームを作る必要があります。「公正取引委員会が『優越的地位の濫用』にあたる可能性が高い」との意見を表明した、などと言われても「それは絶対におかしい。排除措置命令に出たら最高裁まで争う。なぜなら・・・」ときちんと理由を開示して意見表明を行い、失敗を認めるのであれば、社内の責任問題など後回しにして(法務部門の意見を聴きながら)方針転換を速やかに行う。

つぎに「法務力の強化」とも関係しますが、海外企業相手に民民ルール、つまり訴訟を活用して行政規制の実効性確保に努めることです。こういった日本企業による訴訟提起を日本政府が支援するためには、民事訴訟のための法解釈ガイドライン(実務指針)を公表することなどが考えられます。ただし、民間企業による訴訟を行政に活用する手法は米国ではすでに研究されていますが、訴訟を好まない日本ではフリーライド問題などもあってなかなか浸透していません。

そして政府も国民も、GAFA規制による生活の不便をひたすら我慢すること(笑)が考えられます。本当はこれがもっとも有効だと思いますが、まず無理ですよね。。。

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