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2019年4月22日 (月)

監査品質の向上と業種特化型の監査法人

今月号のFACTA(2019年5月号)では、DLE社の不適切会計を早期に警告できなかった監査法人を厳しく批判する解説記事が掲載されていました。先日の(当ブログでもご紹介した)SVHD社の第三者委員会報告書でも、大手監査法人の監査品質に疑問が投げかけられていました。相変わらず、会計不正事件が頻発しますと、監査の品質をいかに向上させるか、その方策が話題になりますね。

4月15日の日経WEBニュースでは「新興企業の株式上場に監査難民の危機、解決策は?」といった見出し記事が掲載され、(監査難民となる新興企業を出さないために)大手監査法人以外の監査法人にもIPO監査の受け皿になることが課題とされているそうですが、たとえば課題解決策のひとつとして「業種特化型」の監査法人など登場しないものでしょうか?大手以外の監査法人が「この監査法人はこの業界の監査に強い」といった信用を構築することでIPOでも監査を担当できる道は開けないでしょうかね(素人の素朴な疑問で恐縮ですが)。ちなみに、大手監査法人の中でも、業種部門別のチームを構築しているのはPwCあらた監査法人さんくらいだとお聞きしております。

会社の経理部門にITが導入されたり、アウトソーシングされたり、さらにはグループで集約される中で、昔のように会計処理の全体を理解できる社員がとても少なくなったと思いますが、だからこそ監査法人が業種ごとのビジネスの流れを認識して「不自然さ」に気づく必要性があるのではないかと。また、統合報告書に代表されるように、機関投資家が財務情報と非財務情報との関連性に関心を持つ時代になったことから、世間的にも「業種特化型監査法人」への期待が高まっているのではないでしょうか。減損処理や税効果会計、収益の認識基準の変更など、ときどき会社側と監査法人側との見解の相違が見受けられますが、「市場の番人」としての監査法人の強い立場を維持するためにも、専門性の高い監査法人が要請されているように思います。

ただ、こういった議論が会計監査業界から出てこないところをみますと、業種特化型監査法人にも、それなりの短所といいますかデメリットもあるのかもしれませんね。

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コメント

 確かにそういう話はありそうですね。しかし、業種別に特化した監査法人とか、業種別に特化したチームを監査法人内に作るというのは、監査人の法人内のローテーションや欧州などの監査法人自体のローテーションという発想とは、正反対ということになると思います。
 銀行に特化した監査法人ができたとして、紀陽銀行にサインをしていた社員が池田泉州銀行にローテーションで回るって、銀行側は嫌がるかもしれません。千葉興業銀行を見ていたインチャージが京葉銀行に行くとか、守秘義務があるので、秘密やノウハウを漏らしたりはしないはずですが、会社との議論の中で、「ふ~ん、あっちの銀行は、そういう発想でこの業務を動かしているのか」くらいは察しられてしまいそうな不安を感じるのではないでしょうか。

投稿: ひろ | 2019年4月22日 (月) 15時23分

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