社長と社外取締役との分かり合えないミゾ(その2)-社長はやめられない
先日、A社長(老舗の東証1部上場会社)との会食における雑談。A社長曰く「こうやって社長になってみると、やっぱり自分から退任時期を決めるのはむずかしいですよね」「最初はしかるべき時期に・・・とは思ってましたが、周りを見回して後継者候補を具体的に選定しているうちに『この人たちが社長やるくらいなら俺がやったほうがマシ』と思っちゃいますもん」「病気にでもなって足腰が立たなくなれば別ですが、やっぱり元気なうちはやめられませんよね(笑)」
私「じゃあ社外役員さんが『アンタ、もう感覚がずれてますからやめなはれ』って言って引退勧告したらどうですかね?」と質問したところ、A社長曰く「ああ、それなら辞めます。そう言ってくれたらありがたい。強制的に辞めさせる制度、たとえば後継者計画を誰かが主導するとか、役員退任ルールを社外役員が中心になって作るとか、そういったものがあれば覚悟しますが、そうでもないかぎり、社長って実際になってみるとホント、人に譲りたくないですよ」(ちなみに、その会社には顧問や相談役はいらっしゃいません)
ガバナンス・コードではCEOの選解任手続きの明確化や概要の開示が求められ、また後継者育成計画の策定なども要請されています。しかし実際には、社外取締役にとってはCEOに退任を要求するといったことはかなり勇気が必要です。ただ、上記のA社長の話を聞きますと、社外取締役がズバリ退任要求をしたほうが社長さんの希望にも沿うのかもしれませんね。たとえ「バッサリ」とまではいかなくても、「社長、いまごろ『心変わり』しても、もう遅すぎまっせ」といえるような冷徹な手続きによって後継者育成計画を進めることが重要かと思います。権力が長く続くと弊害が生じるわけですが、人間は弱いものですからガバナンス・コードの運用にも工夫が必要です。
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コメント
社長と社外役員さんの間のやりとりではありませんが、社長という座を後任に譲る…では、昭和の時代の「ホンダ」=本田宗一郎と藤沢武夫両氏の共同退任を思い出します。(水冷/空冷エンジンの是非を巡る逸話/創業者との意見対立から辞表を突き付けた社員がその後、三代目社長になりました)(後継者育成とは、単にイエスマンに座を譲る事ではない…どこかの自動車会社然り)
今のHONDA社に特別な感情移入はありませんが、少なくとも「クルマ業界の不正SNS(例の3社)」みたいな失態は今のところ出ていませんが…。
昭和の伝説的経営者諸氏の時代に「ガバナンス」という言葉が今ほど使われていたという記憶はありませんが、新元号になったからと言って、現世が急に良くなるとは思えない?寂しい心境です…。
投稿: にこらうす | 2019年4月17日 (水) 09時33分
大東建託は取締役定年があるらしいので余り其処らへんの影響が薄そうですね。
大東建託やリソー教育の先例を考えると継承順位1位のみの用意だけではなく、新社長が健康を害したときに会長や元社長が社長に戻る状況を作らないように新社長の事故への対応も必要かと思います。
そもそも会長兼務社長なんて状況は「天皇陛下が上皇陛下」を兼ねるようなものですから君主制でもやらなかったような真似をしてまで、会長分と社長分の給料をもらうのは筋違いという気もしますし。
江戸時代の藩主も隠居タイミングは継承順位3位まで確保してからの隠居が少なくないですし。
投稿: unknown1 | 2019年4月25日 (木) 12時23分