ISSが株主提案に厳しい結論-LIXIL社外取締役候補者に課せられた重大な使命
日産の現CEOの方の再任について、議決権行使助言会社(ISS、グラスルイス)が反対意見を推奨していることが報じられています。「ゴーン氏の不正行為をきちんと監督できなかった人が、これからの日産の社長を務めるのは適切ではない」ということで、議決権行使助言会社の、企業統治に対する厳しい姿勢が窺われます。現CEOの方にとっては、昨日のルノーの書簡に続き、厳しい意見への対応に頭を悩ますことになりそうです。
ところで、こちらはあまり大きく報じられていませんが、LIXILグループの取締役選任議案(会社側提案及び株主側提案)に関するISSの推奨意見もなかなか興味深いところです。ISSは、6回ほど候補者らとの面談(ヒアリング)を重ねて、最終的に会社側提案の10名のうち8名の候補者について賛成(2名反対)、株主側提案の8名のうち4名の候補者について賛成(4名反対)という結論に至っているようです。そして、元CEOの瀬戸氏の選任議案に対しては反対推奨を表明していますので、総じて株主側には厳しい結果になりました(「マスコミ受けしない不都合な真実」ということで、あまり報じられていないのかもしれません)。
諸事情ございまして(?)、ISSレポートの原本を拝見しましたが、やはりISSは独自の「独立性基準」に準拠して、会社との独立性に疑問のある社外取締役候補者には(いずれの提案にも)厳しい姿勢で臨んでいることがわかります。そのうえで、会社側6名、株主側4名の取締役によって構成されたボードが望ましい(株主側の2名が退任されて会社側6名、株主側2名となってもかまわない)としています。瀬戸氏が解任された経緯については(そのプロセスに)重大な問題があるが、現状のLIXILの業績不振が瀬戸氏の経営手腕によるものではないとまで言い切れず、まずは新しいボードが、これまでの瀬戸氏の経営を総括すべき、その結果次第では瀬戸氏の再登板もありえる、といった理由から、上記のような意見形成に至ったようです(すいません、私の英語力が乏しいために、誤りがありましたらご指摘ください)。
会社側と株主側でどんなにケンカしていても、そんなことは重要ではない、要は社外取締役と業界に精通した社内取締役が一緒になってCEOをしっかり監督できればよい、だめなら堂々とCEOを代えればよい、といった徹底したモニタリングモデルの思想、ゲゼルシャフトの組織論がISSの判断の底流にあります。社外取締役候補者には、「お友達感覚」の共同体意識を排除し、self-disciplineに基づいて監督責任を尽くすことが求められており、まさにCEOの選解任を通じてLIXILの業務執行を監督することが強く期待されていることがわかります。そういえば6月10日の日経インタビューで、宮内義彦氏が
「社外取締役の役割はCEOの業績評価と後継者の育成や人選だ。執行側の見解や行動をじっくり見ていればいい。同じ誤りを再びすればその経営者はアウトだ。経営への助言やアドバイスなどはコンサルタントなどにやらせればいい。日本のガバナンス改革は第2幕に移ったばかりだ」
と述べておられるところに近い思想だと思いました(社外取締役の役割と取締役会の在り方とは論点がやや異なりますが)。ISSは、単純に「LIXILのガバナンス問題」だけを捉えて意見を形成しているわけではなく、潮田氏、瀬戸氏のマネジメント能力を十分に検討したうえで、社外取締役を中心とした役員構成の中での判断を尊重しよう、との立場です。
もちろん、上記は、あくまでも議決権行使助言会社の意見表明なので、株主総会での投票によって取締役構成がどのようになるのか未だわからないところです。ただ、このように会社側候補者と株主側候補者が混合して取締役に就任するケースも(可能性としては)考えられますので、双方から候補者として推薦を受けている2名の方々も、株主総会で選任された場合には、そのまま職務をお受けしたほうがよいのではないでしょうか。
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コメント
「ISSレポートの原本を拝見しましたが、やはりISSは独自の「独立性基準」に準拠して、会社との独立性に疑問のある社外取締役候補者には(いずれの提案にも)厳しい姿勢で臨んでいることがわかります。」とありますが、ISSは、独立性の有無は判定はしますが、日本の社外取締役に対しては、独立性がないからNG(反対推奨)といことは現状では未だ行っていないですよね? 反対推奨をしているとすれば、独立性とは異なる判断軸かと思いますが、違いますでしょうか。
投稿: takezou | 2019年6月13日 (木) 17時11分
LIXILとは関係ありませんが、武田薬品が、ゴーン氏とともに日産を経営に携わっていたS氏を、再任ではありますが社外取締役とする会社側から提案をするのって、センスがないように思いませんか? シャイアー社の買収が成功するかは不明ですが、少なくとも現時点では、株価は大きく下がっているわけで、ガバナンスにはもっとセンシティブであるべきだと思うのですが。
投稿: unknown | 2019年6月14日 (金) 14時32分
LIXILとは関係ありませんが、武田薬品が、ゴーン氏とともに日産を経営に携わっていたS氏を、再任ではありますが社外取締役とする会社側から提案をするのって、センスがないように思いませんか? シャイアー社の買収が成功するかは不明ですが、少なくとも現時点では、株価は大きく下がっているわけで、ガバナンスにはもっとセンシティブであるべきだと思うのですが。
投稿: unknown | 2019年6月14日 (金) 14時34分