恥ずかしながらTVニュースの取材を受けました(吉本興業の件)
弁護士会に近いところからのご依頼ということで、本日NHK(関西ローカル)のニュース番組(ほっと関西)の取材(吉本興業HDによる一連の対応の件)を受けました。関西以外の方は御覧になれないので、すぐに消えると思いますが出演ニュースを貼り付けておきます。取材では1時間半のインタビューでしたが、番組を視ると1分半程度しか出演していませんので、言いたいことの半分もテレビでは言えてません。宮迫さんや田村さんが「記者会見はネットを使ってライブでやることを会社に要望していた」とおっしゃっていましたが、(編集のコワさを知る者として)その要望は当然に出てくるものと思います。
吉本興業の一連の企業対応について、企業コンプライアンスの視点から語るポイントはたくさんあります。ただ、主なものは①企業のリスクマネジメント、②宮迫氏、田村氏らへの会社関係者の対応の違法性(パワハラ問題)、③口頭による諾成契約という長年の慣行の是非、というところかと思います。あまりマスコミで報じられていませんが、吉本興業と芸人の方々との諾成契約の法的性質の内容はどういったものなのか、という点は重要です。一般企業の従業員と同様、吉本の芸人の方は吉本興業との間で指揮命令関係が成り立つのであれば「パワハラ」と言えそうです。ただ、いわゆるフリーランスとして取り扱うのであれば、両者間の契約は「業務委託契約」に近いものですし、脅迫めいた言動があったとすれば独禁法上の「優越的地位の濫用」として違法性を帯びると考えたほうが実態に合っているのではないかと(公正取引委員会の最近の考え方にも近いはず。記者さんにも同様の説明をしましたが、たぶん一般向けの解説としては難しいのでカットされたようです)。
本日の釈明会見では「(宮迫さんに対する)契約解消を撤回する、というのは、どういった根拠に基づくのか」と記者に質問され、岡本社長さんは答えられませんでしたね。たぶん、会社と芸人の方との契約は、上記のように長年の慣行に基づく口頭での諾成契約・・・というものなので、よくわからないのが正直なところではないでしょうか。こういった「口頭による、あいまいな内容の契約」だからこそ、芸人の方々にも都合がよかった面もあるかもしれません。しかし、吉本興業が反社会的勢力との断絶を徹底する、というのであれば、(接触を100%防げるものではないので)反社会的勢力との癒着が疑われた場合の当該芸人さんへの会社対応を明確にしておく必要があります。また、芸人さんたちが食べていけない場合に、兼業や副業(直営業?)も認めることが「芸人ファースト」だとするならば、芸人さん方の権利を守る必要もあります。そのためには、もうそろそろ第三者を交えて「契約書の標準ひな型」を作成して、数千人の芸人の方々と書面による契約を締結すべき時期に来ているのではないでしょうか(いや、書面契約にすると諸々の不都合なこともあるのは重々承知しておりますが・・・)。
本日の岡本社長さんの会見を視ていて「Q&Aのリハーサルはしたのだろうか」と疑問に感じました。宮迫さんは「会社主導の録画による引退会見」を拒絶したとおっしゃっていましたので、社長ご自身の会見は万全の準備のもとで行われるものと予想しておりました。しかし、当然に予想される質問への回答の様子などを拝見していて、どうも準備不足だったように感じられました。なお、これは私見ですが、吉本興業におけるトラブル解決の方法としては、良い悪いは別として「村の長老によるあっせん、仲裁」が、現実には最適解と考えています。社長の会見で、著名な芸人さん方の解決提案がエピソードとして語られていましたが、当該提案内容は(さすが有事に何度も直面しておられるからなのか?)まさに最適解のリスクマネジメントの知恵だと感じました。芸人として有能な人たちは、リスク管理の面でも鋭い感覚をお持ちのようです。
NHKによる取材後、クルーの皆様に「そういえばNHKから国民を守る党が一議席確保しましたよね!これからNHKの党首討論には『N国』の党首も登場するのかなぁ・・・」と(独り言のように)つぶやいたところ、聴いていないフリをしておられました。(*´Д`)
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コメント
安倍総理が吉本新喜劇に出た事が報道され、闇営業問題が拡大の一途となり設定された社長会見が後に「炎上」という波紋を広げていますが、仮に、一昨日の参院選挙の前に社長会見が行われていたら、投票結果はどんな結末になっていたでしょう。
(確か大阪出身?)ベテラン歌手の歌に「笑って許して」という曲がありましたが、とてもそんな状況下ではない「ダモクレスの剣」的な立場に立たされた人達や受信料で成立している組織にも、その剣は向けられていると思うのは私だけでしょうか?…。
(新喜劇/花月各所、TV関連収入の推移にも注目…かと。)
西の首都圏構想や来たる万博の実現に向けて、世界各国の視線が集まり高まる中での、病巣的本件を、地元地域の方々の「多面的コンプライアンス度合い」スキルが求められていると感じています。
東本願寺のウェブサイト上に「五濁」に関する記述があるのを思い出していますが、「末世悪世」をいかに「良世豊世」にするかという正念場に、関西・大阪エリアは立たされているのではないでしょうか・・・。
投稿: にこらうす | 2019年7月23日 (火) 07時59分
この事件の経緯を見ていると、昨年の「日本大学アメフト部の故意の反則事件」を思い出します。構図は以下の通り。
反則をした選手 = 闇営業をした芸人
アメフト部の監督、コーチ = 吉本の社長、副社長
組織を代表して情報を開示すべき側が後手後手に回ってしまい、世論はコンプライアンス違反の当事者の罪よりも組織の上席者の態度を糾弾するようになってしまった。
組織がダメージコントロールに完全に失敗した例、になるんでしょうねぇ、今回も。
投稿: しがない内部監査員 | 2019年7月23日 (火) 12時40分
皆様、コメントありがとうございます。
私も昨日から日大アメフト事件に酷似しているなあと感じています。
アメフトの監督、コーチが吉本の社長なら、理事長はやはり大崎会長だと思います。
投稿: toshi | 2019年7月23日 (火) 12時51分
法律を詳しく知らないものの愚問かも知れませんが、非上場とはいえ、6月ということで株主総会との関係もあり、総会が終るまで静観しようとしたんですかね。
投稿: | 2019年7月23日 (火) 13時48分
この案件に関して、売上約500億円、利益6億円程度と報道があり、かなり収益率が低いようです。芸能人への支払が少ないということになると9割が会社の取り分、半々でもそれなりの額になるでしょう。すると、何にお金が消えているのか、執っても気になります。
投稿: Kazu | 2019年7月25日 (木) 19時56分