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2019年8月28日 (水)

ココカラファインの「前面に出る第三者委員会」と株主への説明責任

(8月28日午後1時15分更新)

ドラッグストア大手のココカラファインとの統合を巡り、スギホールディングスとマツモトキヨシホールディングスで提案合戦が繰り広げられました。ご承知のとおり、ココカラさんはマツキヨさんとの統合を決めて、8月16日には統合協議開始の覚書締結に至るわけですが、6月12日のエントリー「ココカラ正念場!?なぜ特別委員会?」で述べたように、重要な経営判断になぜ第三者委員会を設置しなければならなかったのか、このように決着がついてもよく理解できません。8月15日の日経ビジネス(WEB)記事「マツキヨと統合協議のココカラ、なぜ特別委員会で決めたのか?」でも、M&Aに詳しい一橋大学の田村教授は「このような状況で特別委員会を設置など、聞いたことがない」と述べておられます。

今朝(8月27日)の日経朝刊2面に「始動!ドラッグ大再編!起点はマツキヨ・スギ破談」なる特集記事が掲載されており、上記ココカラ第三者委員会は「前に出る委員会」、つまりマツキヨ、スギHDの社長と面談し、直接交渉を行う委員会であること、8月14日の経営判断が下るまで、両社首脳は水面下で経営陣と面談することもできなかったことが報じられています(ココカラさんの8月14日リリースでは、取締役会も第三者委員会と並行して両社提案を検討していた、とのことですが、これは第三者委員会から得た資料を取締役会でも検討していた、という意味でしょうか?)。

たとえばココカラがすでに両社いずれかと業務提携をしているとか、社外取締役の派遣を受けている、といった事情があれば、取締役会としての中立性や公正性に疑問が生じうるわけですから、株主利益に配慮して「独立社外取締役を含む第三者委員会を設置して交渉を委託する」ことも十分考えられます。しかし、前のエントリーでも書きましたが、今回はまさにドラッグ業界での経験豊富なプロの経営者の方々が、両社首脳とのギリギリの交渉を経て決定してこそ株主も経営陣の選択に納得するのではないでしょうか。M&A成否のために、統合先の提案を審議し、シナジーを検討することも大切ですが、統合に向けた自社の姿勢から、「(統合を成功に導く)ココカラの組織力」を示すことも大切だと思います(こういった有事の場面で、社長が交渉の先頭に立ち、なぜマツキヨを選んだのか、批判や異論もある中でわかりやすく株主に説明する姿勢こそ組織力だと思うのですが・・・)

なぜマツキヨHDさんを選んだのか、といった説明も、上記ココカラさんのリリースではよくわかりませんでした。ここからは(?ややこしくてすみません)私の単なる憶測でのストーリーにすぎませんが、①そもそもココカラファインはセイジョー、セガミ薬局を中心に6~8社のドラッグストアが統合して生まれた会社なので、他社との統合には拒絶反応がなく、統合後の経営については自信がある、②調剤(スギさんの強み)とPB(マツキヨさんの強み)とを比較した場合、自社の強みを生かすためにはPBを取り入れることで店舗の付加価値を上げる戦略が有利、③スギHDとマツキヨHDの過去の買収戦略を比較した場合に、スギさんよりもマツキヨさんのほうが買収先の独立性を尊重する傾向があり、その買収戦略がココカラ社の社風にも合致している、といったところではないかと。このような推測が正しいのか間違っているのかはわかりませんが、第三者委員会の結論を聴き、取締役会で十分な審議を経て、こんな説明をしてもらえれば一般株主も納得できるのではないかと思いました。

ココカラさんの上記リリースでは、第三者委員会の結論と取締役会の判断に矛盾はありませんでした、と書かれていますが、もし矛盾があったらどうなっていたのでしょうか?記者会見においてココカラの社長さんは「第三者委員会?いやいや、単に意見を聴いただけです」と述べておられましたが、そうであれば「前面に出る第三者委員会」は不要だったのではないでしょうか(取締役会には中立公正な財務アドバイザーがいらっしゃったそうですが、それで十分では?)。6月28日に公表された経産省「公正なM&Aの在り方に関する指針」では、「前面に出る特別委員会」の存在が少数株主保護(公正価値の判断)につながる(特別に中立・公正性は求めない)とされていますので、そのような趣旨で特別委員会を設置されたのかもしれませんが、もしそうだとすれば取締役会も特別委員会の意見を尊重するはずであり「意見を聴いただけ」ということにはならないと思います。

上記日経ビジネス記事では、関係者の話として「どっちにも不義理ができなかったので、身動きがとれなかった」と書かれていますが、そのような活用方法は、第三者委員会制度の在り方を根源から否定することになりますので絶対にあってはならない話です。第三者委員会は不祥事についても、また公正なM&Aにおいても、会社を取り巻くステイクホルダーへの説明責任を果たすために活用されるものですが、「不義理できないので」「身動きできないので」活用するということになりますと、「最初から結論ありき」といった推測がはたらき、中立公正性への(第三者委員会という制度自体の)信頼が揺らぐことになることを危惧します。

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コメント

某所が毎年年末に催す「流行語大賞」の2019年度に「第三者評価会」がノミネートされるかどうかは存じ上げませんが、海洋汚染の原因となっているレジ袋/プラ容器で覆われている商品を多大に販売している業界、自分の田畑や自家菜園の雑草さえ生えなければ土壌汚染と河川の水質(ひいては海に流れるのですが)汚濁等に無関心な人達が、2トンを超えるSUV車や某社の「アル・ベル車」でエコ運転など知った事かと、3〜5円の安さと、ポイントカード還元に目がくらむ客を相手に財務諸表の数値を伸ばして来た…。それを経済誌/紙等は、日本のGDPの主力柱と…。そんな下で人間という生物が果たして100歳も生きられるのか?と壮大な社会実験をしている様に見えている・・・私の憶測を長く語り恐縮ですが、機関投資家はじめ、良質なSDGsとESGに本気に取り組む方々の「ココカラが正念場」と、若い世代の将来を危惧する、同級生に孫がいる世代の一人として、鳥瞰的に世の中を見つつの余生を送っています・・・。
(ただ、大震災の折などに、自治体と備蓄協定でもしていれば、ドラッグストアは、ありがたい存在ではありますが…。)

投稿: にこらうす | 2019年8月28日 (水) 08時26分

「どっちにも不義理ができなかったので、身動きがとれなかった」と書かれていますが、そんなことは第三者委員会制度の在り方を根源から否定することになりますので絶対にあってはならない話です。

↑「第三者委員会制度の在り方を根源から否定」という部分がよくわかりませんでした。もう少しくわしくご説明いただけないでしょうか。

いつも身の締まる思いで、拝読させていただいています。

投稿: | 2019年8月28日 (水) 12時19分

ご質問ありがとうございます。ご疑問の点について、本文に付記いたしました。よろしくお願いいたします。

投稿: toshi | 2019年8月28日 (水) 12時48分

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