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2019年9月25日 (水)

日産のガバナンスに対する機関投資家の評価は如何に?-深まる社内調査への疑惑

9月24日の日経イブニングスクープでは「物言う株主、日本に攻勢 統治・還元に改善圧力」と題する特集記事が掲載されました。「人財とネットワーク」が企業のもっとも重要な投資対象と言われ、グラスルイス社がガバナンス・データ分析会社と業務提携する中で、日本企業のガバナンスはもはや「無形資産」として評価されるようになったといえます(9月16日、17日のNeo Economyに関する日経新聞記事参照)。

いま話題のウィーワーク社のように、米国企業では種類株式によって経営者は保身を図りますが、日本の上場会社ではほとんど認められておりません。日本企業は世界のアクティビストと丸腰で相対しなければならないわけですから、物言う株主が日本に攻勢をかけるのは当然のことでしょう(議決権行使結果の個別開示や政策保有株式の縮減等、攻勢をかけるべき土壌もほぼ整いつつあります)。

そのような中、9月24日のWSJ(ウォールストリートジャーナル)のニュース「ゴーン氏巡る日産の内部調査、社内弁護士が利益相反を懸念」は新事実満載で、驚くべき内容です(WSJ又は毎日新聞の有料会員のみ閲覧できます)。もちろん海外の機関投資家の方々も、すでに上記記事の内容を把握していると思いますが、この記事内容がある程度の信ぴょう性があるとするならば、日産のガバナンスはかなりヤバい状況です。社内調査に関連する利益相反問題を指摘する内部通報が人事部に滞留しており、通報の名宛人である取締役には届かない状況、とのこと(ホンマかいな💦!?)昨日のエントリーで書いた内容と同じであり、経営トップに恥をかかせないために、部下が「汚れ仕事」を引受けて自身の評価を上げる・・・ということでしょうか(あくまでも私の推測ですが・・・)。まさかとは思いますが、このWSJの記事がウソとも思えません。。。

そもそも、日産と長年の付き合いのある法律事務所が(身内の不正に関わる)社内調査を担当する、ということからみて「中立公正な調査」は期待できません。社内調査の時点で、社内の法律顧問から問題提起を受けたにもかかわらず、どうして強行したのでしょうか。また、当該法律顧問の方によれば、(別の)日米ふたつの法律事務所から「利益相反リスクに関する文書」が日産の取締役宛てに送付されているにもかかわらず、これが名宛人の取締役に届いておらず、さらに当法律顧問が名宛人の取締役に「他の取締役と文書を共有せよ」と要請したにもかかわらず、なんら返答がなかった、とあります(ホ、ホンマかいな😵!?)

もちろん、日本人的な感覚では「そんなに騒ぐほどのことではないでしょう。我々だって利益相反のリスクがあることくらいは社内調査の時点でわかっていましたよ。でも、我々も、そして担当法律事務所も、そういったリスクは承知のうえで、慎重に調査をしたのですから、利益相反関係から生じうる弊害が全くないことを確信しています」ということだと思います。したがって、このWSJの記事に追随する日本のマスコミも出てこないかもしれません。ただ、機関投資家も海外の感覚をもった人たちでしょう。欧米の企業にとって利益相反の解消は、日本企業とは比較にならないほど厳しく要求されるはず。そして、日産のガバナンスに対する評価に大きく影響するはずです。

毎度当ブログをお読みいただいている方々はご承知のとおり、私はゴーン氏の逮捕劇勃発のときから「まず明らかにすべきは日産のガバナンス問題ではないか」と言い続けてきました。日産としては米国SECとの証券詐欺禁止法違反に関する和解が成立して「やれやれ」というところだったと思いますが、このWSJへの内部告発記事のインパクトは大きい。日産は、10月末までに次のCEOを選任しなければならないわけですが、もはや社内からの昇格者ではもたないのではないでしょうか。もし日産のガバナンスという「無形資産」に大きな価値があるとするならば、まずはこのWSJの記事(法律顧問の内部告発)について真摯に説明すべきと考えますが、いかがでしょうか。

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コメント

こんにちは。
いつも記事を拝読して勉強させていただいております。

人事部が内部通報を滞留させた(握り潰したのでは?)のが事実だとしても、さほど驚きはありません。
大企業の人事部門は「平穏無事」を第一とし、内部通報のような明らかな「さざ波」に対して積極果敢に立ち向かうとは考えづらいです。
どうしても評価的なコメントを排除できないので細かいことは省きますが、そう思わせるだけの出来事を見聞きし、私自身も経験してきました。(東証一部上場企業2社を経験しており、どちらも似たような感じなので、「こんなものか、、、」と思っています)

不祥事を起こした日本の大企業の内部統制システムやガバナンス体制が「仏を作って魂を入れず」の状況に陥っている原因のひとつに、日本の典型的な人事部の存在があるのではないかと常々思っています。

昨日(9/24)の東電さん関係の記事(「平成20年当時といえば、東電はおそらく日本一素晴らしい内部統制システムを整備していたはずです。」以下のお考え)で拝読して感じ、本日のWSJ記事のご紹介で改めて感じたことをコメントさせていただきました。

的外れな投稿でしたらご容赦いただけますと幸いです。

投稿: てふ | 2019年9月25日 (水) 08時54分

大企業ほどガバナンスができていないのはもはや定説と言ってよいと思います。
厳しい上場審査を通っているベンチャーのほうがよっぽど真面目。
上場審査を5年に1回受けることを上場維持の条件とするべきです。

投稿: JFK | 2019年9月25日 (水) 21時07分

山口先生 おはようございます 日弁連HPのイベント欄に、消費者庁、消費者委員会が創設10周年記念集会が9月28(土)に開催される案内がありました。主催者は日弁連、消団連と消費者行政ウォッチねっととあります。参加する事が出来たならば、なぜ、こんなに公益通報者保護法の改正が遅れているのかと消費者庁の徳島移転が必要なのかのお話も出るものと思われます。日弁連会長の開会ご挨拶とパネルディスカッションも豪華な顔ぶれですので是非参加したなと思いました。

投稿: サンダース | 2019年9月26日 (木) 06時39分

サンダースさんが投稿された28日(土)のイベントで、消費者庁創設にご尽力された当時の内閣総理大臣スペシャルメッセージもあるようです。ビデオメッセージですかね?
山口先生の本文に戻り、「通報が名宛人である取締役に届かない」状況は、経営陣の善管注意義務違反、内部統制構築義務違反であると思うのですがいかがでしょうか。
大企業経営陣への通報を政府、行政とも共有し、公益通報者保護推進も目指しているのですが、「仏様に、なかなか魂がはいりません」。

投稿: 試行錯誤者 | 2019年9月26日 (木) 16時12分

本日28日、消費者庁・消費者委員会10周年記念集会に参加しました。
福田康夫元内閣総理大臣と内閣府消費者委員会初代委員長代理の弁護士の方(山口先生ご存知)の対談スペシャルビデオメッセージで初めて知るところありました。
福田元総理の「行政が国民の立場に立っているか?」との強い想いにより消費者庁創設が迅速に決定したとのこと。
2008年の「公益通報者保護法」が福田元総理の心も動かしたようです。
消費者庁消費者制度課長より消費者行政全般について「リアルな事実・実態が知りたい」とのご発言もあり、実名で政府・行政に通報している意義を再確認しました。

投稿: 試行錯誤者 | 2019年9月28日 (土) 19時39分

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