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2019年11月14日 (木)

拙稿のご紹介「親子上場問題を中心とするグループガバナンスの課題」

1281692823_o本日の日経ニュースにて、東芝が2000億円を投じて上場子会社3社を完全子会社化する(TOBによって他の株主から株式を取得する)と報じられています。日立化成等、上場子会社の解消を急ぐ日立製作所と同様、企業統治改革の流れの中で「親子上場の解消」は他の産業部門でも進みそうです。

ということで(?)、本日発売のリスクマネジメント・TODAY117号(2019年11月15日発行)に「親子上場問題を中心とするグループガバナンスの課題」と題する論稿を掲載いただきました。LIXIL・CEO解任事件をめぐるガバナンス強化の課題については樋口晴彦先生(警察大学校)のご論稿に譲るとして、私は経産省「グループガバナンスの実務指針」や「公正なM&A指針」等のソフトローから、親子上場問題(正確には上場子会社問題)のトレンドを解説する、という体裁になっております。

マスコミの論調等では、どうしても上場子会社の少数株主保護に光が当たることが多いように思いますが、コングロマリット・ディスカウントを低減させることへの(親会社、支配会社に対する)機関投資家の圧力は思いのほか強いものがあります。なので、親子上場解消の場面では、親会社の役員にも相当強いプレッシャーがあるわけでして、そのあたり支配会社、被支配会社双方に公平な見方で執筆をしたつもりです。お読みになられる機会がございましたら、ぜひご意見・ご感想などお聞かせいただければ幸いです。

ちなみに(これは上記拙稿の内容とは無関係ですが)上場子会社に不祥事が発生し、グループ全体のレピュテーションリスクが顕在化した場合、親会社の役員に監督義務違反による法的責任が発生する・・・というのは、福岡魚市場株主代表訴訟事件のように、両社の役員を兼任するようなケースでないと認められない、というのが現在の常識的判断だと思います。ただ、最近のガバナンス実務指針や公正なM&A指針に従って、上場子会社の社外取締役が動くことが主流となりますと、たとえばビューティ花壇株主代表訴訟の地裁・高裁判断過程などを前提に考えますと、うーーーん、親会社取締役も安閑としてはいられないのではないかと。

 

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2019年11月13日 (水)

立法事実がなくても会社法は改正できる?(改正法案、いよいよ審議入り)

本業が忙しいので本日は短いエントリーです。日経ニュース等によりますと、ようやく会社法改正法案が衆議院で審議入りした、とのこと。なんとか今国会で成立しそうですね。日経ニュースで法務大臣の答弁が紹介されていますが、立憲民主党の議員の方からの質問(ほとんどの上場会社ですでに社外取締役は存在するが、義務化することの必要性はあるのか?)に対して、大臣は

市場の信頼性を高める観点から、社外取締役の監督が法律で保証されているとのメッセージを発信することは大きな意義がある

と回答した、とのこと。しかし、ほとんどの上場会社に社外取締役が存在する現在、有価証券報告書提出会社に社外取締役を1人以上の選任を義務付けることには「立法事実」はないと思います。これまで、会社法改正にあたっては法改正の必要性を裏付ける立法事実が厳格に求められてきたと思うのですが、「メッセージを発信することに意義がある」ということでも法改正はできるのですね。これからの法改正の必要性判断の前例になるのでしょうか。

しかも法改正によって「社外取締役がいなくなった場合に、果たして取締役会決議は有効に成立するのか」とか「社外取締役を選任しないことによる罰則(過料)は会社に科されるのか」といった「解釈のグレーゾーン」まで招来してしまうわけです。今後、立案担当者の方から解釈指針のようなものが出るかもしれませんが、納得できる内容でしょうか。おまけにヤフーとアスクルの騒動によって社外取締役の存在が不可欠とされる「被支配会社」に誰も社外取締役がいなくなってしまった、これって社外取締役の監督が法律で保証されているといえるの?・・・という「負の立法事実」まで出てきてしまいました。

平成26年会社法改正のとき、上場会社等である監査役会設置会社が、社外取締役を置いていない場合は「置くことが相当でない理由」を株主総会で説明する義務が設けられました。つまり会社法は「企業価値を上げるためには、社外取締役がいないほうがよい上場会社は存在する」ということを認めたわけです。しかも5年以内に社外取締役義務付けの要否を検証することが附帯決議で求められていました。その検証結果が「立法事実」であることは間違いないわけですから、少なくとも「5年経過して検証したところ、やっぱり企業価値向上のためには一人以上の社外取締役がいなければ企業価値は向上しない、ということを理由付けるコレコレの立法事実が認められた」との説明が必要です。

どうも「気持ち悪さ」を感じます。法改正の審議が進むことは喜ばしいのですが、会社法改正があまり「美しくない」と感じるのは私だけでしょうか。

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2019年11月11日 (月)

社内調査報告書の秘匿はむずかしい(その2)-積水ハウス提出証拠閲覧制限申立て却下・大阪地裁決定

10月15日の当ブログエントリー社内調査報告書の秘匿はむずかしい-積水ハウス文書提出命令・大阪高裁決定にて、積水ハウス取締役らに対する株主代表訴訟の補助参加人である会社に「社内調査委員会報告書を提出せよ」との高裁決定が出されたことを報じました。しかし、この事件には続編がありまして、その詳細を紹介する記事「積水ハウス地面師事件-【調査報告書】封印の限界」が週刊東洋経済の最新号(2019年11月16日号)に掲載されています。

積水ハウスさんは、この社内調査報告書の中身について「なにがなんでも開示したくない!」ということで、証拠として提出した後も、民事訴訟法92条に基づく(第三者による)閲覧制限の申立をされていたそうです。しかしこの11月1日、大阪地裁は積水ハウスさんの申立を却下、閲覧制限を正当化する理由は認められないと判断したようです。民訴訟92条による提出証拠の閲覧制限が認められる理由としては、開示によって当事者が社会生活を営むのに著しい支障が生じるおそれある場合、不正競争防止法上の「営業秘密」に関する記載がある場合ですが、本証拠開示については否定されています。ちなみに、民事訴訟における訴訟記録については原則公開です(民訴訟92条1項)。

この地面師事件のエントリーの際には毎度申し上げておりますとおり、私は積水ハウスさんの事件遭遇を揶揄するつもりは一切なく、今回の件は他社の有事対応、全社的内部統制の在り方でも参考になるものと思い、ご紹介する次第です。民事訴訟法上の秘密保護の手続きは、大別して①口頭弁論等の手続にかかる秘密保護措置(訴訟記録の閲覧等の制限)と、②文書提出命令等にかかる秘密措置保護とに分かれ、民訴法92条はこの①に関するものです。

結論からみますと(まだ即時抗告によって大阪高裁が逆の結論になる可能性はありますが)、積水ハウスの社内調査報告書については①および②とも裁判所から否定されましたので、ますます「(企業不祥事発生時における)社内調査報告書の秘匿・非開示はむずかしい」と考えたほうがよさそうですね。いや、社内調査報告書だけでなく、適時開示を予定していないような不祥事に関する第三者委員会報告書なども、後日紛争になったときには文書提出命令の対象とされる可能性があると思われます(ぜひ、このあたりは今後法律家の方々の意見などもお聴きしたいところです)。

地面師詐欺事件に詳しい布施明正弁護士(たしか判例時報や経済誌などで紹介されている他の有名な地面師事件の代理人をされている方ですね)が、上記週刊東洋記事で述べておられるように「本件は上場企業で起きた大型事件であり、その真相を記した調査報告書は社会全体の財産」という見方が裁判所の意見に近いものと思います(まだ決定全文は読めておりませんが、おそらく即時抗告審の決定も含めて、また判例雑誌等に紹介されるものと思います)。

いずれにしましても、企業としては「不祥事公表の要否」に関する判断の前に、少なくとも社内調査を行い、その調査結果の報告を受けるわけですから、当該報告書が後日第三者に開示される可能性が高いことを認識しておくべきかもしれません(「べきかもしれません」と書きましたのは、私なりには非公開の調査報告書を作成する工夫の余地はあるのではないか・・・とも考えられそうだからです。ただし、その工夫は新たなコンプライアンス・リスクを顕在化させる可能性もあり、このあたりは思案中です)。

しかし積水さんは文書提出命令事件の主張といい、この閲覧制限申立ての主張といい「関係者のプライバシー保護の必要性」を強調しておられますね。ということは、当該調査報告書の記述の中に、事件の全容を解明する内容だけでなく、なにか「きな臭い」組織内部の紛争に関連する事実なども含まれているのでしょうか?このあたりがナゾでありますが、個人的にはそのあたりを詮索することは控えたいと思います。

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2019年11月 7日 (木)

今こそ「フィデュシャリー【信認】の時代」-信認義務の活用に向けて

2016年5月に、こちらのエントリー「監査役もフィデューシャリー・デューティーの時代」にて、樋口範雄氏(東大名誉教授、現武蔵野大教授)の名著「フィデュシャリー『信認』の時代」をご紹介しておりましたところ、このたび内閣府「公益財団法人トラスト未来フォーラム」の役員の方から「絶版となった樋口先生のご著書が、当HPより無料でダウンロードできるようになりました」とのご連絡をいただきました(どうもありがとうございます!トラスト未来フォーラムのHPはこちらです)。以下、同HPの紹介文(引用)ですが、

情報通信ネットワークの浸透、情報格差の拡大、グローバル化と高齢化の進展等を背景に、取引当事者間の関係がより複雑・デリケートなものとなっている中、取引先目線・立場での思考・実践を核とする「フィデュシャリー」に係る考え方は益々重要なものとなっています。樋口範雄教授は、「フィデュシャリー」の概念を広く日本に紹介された第一人者であり、1999年出版の本書では、信託を代表とする「フィデュシャリー」の意義と広がり等について分かり易く解説されています。「フィデュシャリーの時代」がいよいよ本番を迎えつつあるとも言える今、本書のご一読をお勧めします。

たとえば、このたびの会社法改正では「社債管理補助者」という制度が新設されますが、その権利・義務の内容を「信認義務の法理」を参考にして現行の「社債管理者」制度と比較しますと理解が進みます。また、日本ではGAFAに代表されるプラットフォーマー規制に向けて行政(公正取引委員会)が動いていますが、米国では「情報フィデューシャリー」として、プラットフォーマーに信認関係における受認者の責任を認める学説が有力に唱えられています(無体財産規制と同様、いわゆる民民規制によって行政目的の実現を目指す)。信認関係の法理をデータ保護の世界にも適用することでプラットフォーマー規制の実効性を上げるという考え方は、今後国際的な規制の標準化に役立つのではないかと思います。そして、日本の監査役さんの職責を論じるうえでも、とりわけコンダクト・リスクへの対応が求められる昨今、ますます「信認義務」の発想が必要になってきていると確信します。

有斐閣さんと樋口先生のご協力のもと、信認義務や信託法理論をわかりやすく解説している本書が無料で読める!というのはなんとも素晴らしい。もちろん(出版時以降)信託法などは改正されておりますが、信託法理や「信認義務」を理解するには必読の一冊です。司法の世界にもAIが活用されるようになれば、日本でも判例の集積が企業実務に及ぼす影響が高まります。「監査役等に期待される行動とは何か・・・」個別具体的な事案に沿って信認義務の内容を検討することは、デジタル時代の監査役等の行動規範を形成するには有用な理論だと考えます。

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2019年11月 5日 (火)

公開シンポ「社外役員の急増で取締役会は変わったのか」のお知らせ(告知)

Simpo001  本日は11月末に開催されますシンポの告知でございます。来る11月29日、大阪弁護士会と日本コーポレート・ガバナンス・ネットワークとの共催によりまして、「社外役員の急増で取締役会は変わったのか?」と題する公開シンポジウムを下記要領にて開催いたします。パネリストは大規模企業や中規模企業で社外取締役、社外監査役を務めておられる企業実務家、法曹の皆様です。ガバナンス・ネットワークの理事長である牛島理事長にも登壇いただきます。開催の趣旨およびパネリストのメンバーは左のチラシをご参照ください(クリックしていただくと大きくなります)。私も司会(モデレータ)を務めさせていただきます。

日時 2019年11月29日(金)午後2時~5時 

場所 大阪弁護士会館2階ホール 定員200名程度

 

10月2日の日経ニュースによりますと、全取締役に占める社外取締役の比率は今年初めて3割を突破したそうで、とりわけ女性役員も1000人を上回ったそうです。秋の臨時国会に提出された会社法改正法案でも、(公開大会社について)社外取締役の義務化が盛り込まれています。さらに、経産省CGS研究会が策定した「グループガバナンス実務指針」では、企業の有事における社外役員の活躍が要請されています。

 

Simpo002 たしかに社外取締役の数も増え、また社外監査役に期待される役割なども明確になってきました。しかし、本当に企業統治改革のもとで期待される役割を果たしているのでしょうか?また、企業側も、世間で期待される社外役員の役割を担ってもらうための努力をしているのでしょうか?このシンポジウムでは、社外役員としての経験豊富な方々に、企業統治改革が進む中で企業が変わったのか、そして自分たちも変わってきたのか、具体的な質疑応答を通じて検証したいと考えております。

取り上げたい論点は、2枚目(下)のチラシに上段部分に記載したとおりです。私自身、機関投資家の皆様と意見交換をする機会が増えましたので、そこで見られる機関投資家の期待と企業の期待のギャップを意識しながら各論点への検証を進めていきたいと考えています。しかし、「この制度は良い、悪い」といった制度論を議論するつもりはなく、「あるがままの制度を受け入れて、どう運用すれば企業価値の向上に役立つのか」を徹底的に考えます。時間は大切です。決して「総花的」な面白みのないシンポにはしたくないので、出席者の方々と一緒に考えながらシンポを進めるべく工夫をしております。

大阪での開催となりますが、これから社外取締役・社外監査役に就任したいと考えておられる方々、すでに就任されている方々、そしてこれから社外役員の採用を検討されている企業の皆様、ぜひ公開シンポへご参加ください。もちろん社内の役員の方、士業や研究者の皆様も大歓迎でございます(参加無料です)。お申し込みは左のチラシ(またはリンク先)記載の弁護士会HPから(もしくはQRコードから)よろしくお願いいたします。

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