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2019年12月10日 (火)

神奈川県文書情報漏えい問題-ブロードリンクの社長さんは辞めてはいけない

昨日のエントリーには多数のアクセスをいただきましたが、本日はやや短めの続編です。個人情報を含む大量の行政文書が記録された神奈川県庁のハードディスク(HDD)がネットオークションで転売された問題で、HDDの処理を請け負ったブロードリンクの社長さんが記者会見を開いたそうです。

同社の社内調査によると、逮捕された元社員が入社した2016年2月以降、同元社員がオークションに出品して落札されたものは7844個、このうち記憶媒体が3904個あったとのこと。ということは、もはや神奈川県だけでなく、ブロードリンク社が受託していた他の行政機関や民間会社の記憶媒体も多数含まれていた可能性があります。

同社に廃棄処分を委託していた組織(行政機関、民間団体)は、今後「うちの組織も同社に廃棄処分を委託しており、ブロード社と共同で調査したところ当組織が預かっております個人情報、具体的には「生年月日」「氏名」・・・の入った記憶媒体も転売されており、情報漏えいの可能性があります」と開示するのでしょうか? あくまでも「可能性」ではありますが、情報を漏えいされた個人の側で「自己防衛」できる余地がある以上、被害拡大防止義務が発生する組織も多いと思いますので対応に悩むかもしれませんね(皆様、どうされますでしょうか?)

気になるのは、記者会見をされた社長さんが「再発防止の対策を立てた後、辞任する意向を示した」ことです。しかし、昨日も申し上げましたように、このような不祥事は、今後も頻繁に起きるはずです(どんなに内部統制システムを構築してみても100%の防止は無理)。そのたびに社長さんが辞任してしまっては高いスキルをお持ちの経営者がいなくなってしまい、日本の大きな損失につながってしまうのではないでしょうか。

技術発展の段階において、情報漏えい事件は「許された危険」として社会的に認知される時代が到来するかもしれません。たとえば原発には廃炉の優秀な技術者が不可欠であることと同じく、ビッグテータの集積には収集したデータを安全に始末する優秀な技術者も不可欠です(全部物理的に破損させる、という手法を選択するのであれば別ですが)。そして、そのような技術は、データ管理も含めてトライアル&エラーによって無形資産化していくしか方法はないわけで、「失敗すれば辞任」では、いつまでもAIの発展に不可欠な無形資産が形成されないままになってしまうと思います。

私が役員を務めております大阪メトロは、日本で初めての顔認証改札システムを稼働させました(朝日新聞ニュースはこちらです)。5年ほど前のJR東日本、JR西日本の失敗を参考に、記事にもあるように「メトロ社員を対象とした実証実験」から始めます。慎重を期しての船出ですが、実用化されればまた新たなリスクが顕在化することが予想されます。恥ずかしい失敗もあるかもしれませんが、それでも、乗客の方々の利便性や安全性確保のためには実用化は不可欠だと思います。

ブロードリンクの件については、もちろん従業員管理に杜撰な点があったとすれば、責められるべきですし、再発防止のための施策を講じなければならないわけですが、失敗を次に活かす(敗者復活を許容する)風土がなければ、最終的には我々国民(消費者)が大きな損失を被る社会になってしまうように思います。

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コメント

そもそも、「優秀な人物」とはどういう人の事でしょうか?
カネ勘定に疎くても、プログラム構築やバグの発見に抜群の才能を持つ者に、「経理課」配属をさせて、その増幅がニッポンの利益に繋がるのでしょうか?

(山口先生の本エントリー/ご主張に一理あるとは思います)

本事件を含め、ニッポンに多く、かつ深く潜在する「けじめ」のつけ方が、榊彰一社長に求められていると思います。
実行犯は、一度や二度の「魔が差した」程度の悪事ではなく、数十回/約4,000個ものHD機器類を持ち出してはネットオークションにかけて私利を得ていた・・・その悪用される可能性に対し、個人情報を扱う会社:経営者、管理職、上司の監督責任と、「リスク想像力」の軽視がもたらした結果の、悪事の多発見逃しかと…。一般メディアには出そうにない「何か」がありそうな事件性を感じつつ…。
(ネットオークションの功罪を、多面的に検証する機会の一つではないでしょうか)

かつてHONDA社が、30年前にF1レースで黄金時代を構築しましたが、その全てを、故本田宗一郎氏一人で造った訳ではなく、適材適所に優秀なエンジニアを育成:配属させて、決められたルールの下で企業間競争に勝ったという功績。他社が規定をすり抜けて、「許された危険」的な悪臭漂う燃料で優勢に出た際、HONDAと(当時HONDAチームに燃料とオイル供給していた)シェル社は「そこまでして勝とうとは思わない」という逸話を読んだ事があります。実行犯がせめて、HDDをネットオークションにかける事に自制出来る人物であれば…と、人材の適材適所配属が、財務諸表の数値以上に大切な事…という中長期的な発想を持つ事は間違っているのかと、自問自答しています。
確かに原発廃炉には、優秀なエンジニアが不可欠ですが、そもそも、津波被害等を軽視しての(壊れた際に修復に何十年もかかる装置なんて)
原発立地=汚職連発の裏で構築されたとばっちりの絶えないニッポンが抱えてしまった風評被害を含め、安全性はどうするのか?
トライ&エラー・・・5年前に再開したHONDAチームも去年までは連戦連敗でしたが、最近は優勝候補まで力が戻って来ました。
失敗は成功のもと/ユニクロの柳井氏の著書には「1勝9敗」という本が在ったかと思いますが…。
私も、「一度失敗すれば即辞任」という短絡:慣行的な流れは賛同致しませんが、本当に優秀な人物であれば、今後別の機会若しくは組織改編等で、本事件をバネにして、今度こそ「さすがは榊彰一氏」と評価される時が来る事で、人的損失は最小限に抑えられる…そういう人物評価の受け皿:ニッポンで在って欲しいと願っています・・・。

投稿: にこらうす | 2019年12月10日 (火) 08時04分

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