中央経済社「ビジネス法務」2020年3月号に論稿を掲載していただきました。
中央経済社「ビジネス法務」の2020年3月号に「2019年に起きた企業不祥事とコンプライアンス強化へ向けた示唆」と題する論稿を掲載していただきました。なお、同3月号の目次はこちらのとおりです。もうそろそろ株主総会の準備を開始する季節なのですね。
拙稿の要旨だけをご紹介しますと、
企業のイメージダウンにつながりかねない近時の企業不祥事には、グレーゾーンへの不適切な企業対応という面において共通点がある。2019年に世間の話題となった企業不祥事を分析してみると、不正もしくは不正の疑いを知った経営陣が冷静に現状を分析できなくなり、結果として不適切な対応を招来する。その要因は容易には取り払うことはできない。しかし「なぜ有事には冷静な判断ができないのか」その要因を知り、対策を講じることは可能である。
というもので、具体的には①関電の金品受領問題、②リクナビ「内定辞退率」予測データ問題、③かんぽ生命、不適切契約問題、④レオパレス21建築瑕疵問題、そして⑤吉本興業「闇営業」問題を取り上げて考察しています。
私の不正リスク対策は昔から一貫しておりまして、「残念ながら、どんなに対策をしても不祥事は防止できない。なぜなら発生は運によるものだから。しかし、その不祥事が御社のレピュテーションを毀損させるかどうかは御社の(平時および有事の)努力次第である」というもの。
したがいまして、本稿は企業のリスクマネジメントの視点からの論稿です。「不正を起こさないためにはどうしたらよいのか?」ということを知りたい方には向かないと思います(笑)。それは別途「不祥事の芽」「組織風土」に関する問題であり、私は「どうやって儲けるか」という経営論の中で考える必要があると思っています。
もうすでにお読みになられた方々から、いくつかご意見を頂戴しております(どうもありがとうございます)。全国書店にてお求めになれますので、どうかご一読いただければ幸いです。
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コメント
学生時代に簿記会計を学んだ者として、中央経済社さんの「会計人コース」誌が懐かしい…と思いつつ、山口先生の「ビジネス法務」誌のご案内〜書店へ足を向けようと思います。
ついでに…と申すと失礼かも知れませんが、株式会社シーオーツー(CO2 Inc.)という会社の存在を知り、気候変動関連の専門誌発行?かと思いきや、ワンちゃん猫ちゃんの飼い主向け雑誌中心の様でした。そちらの本/コーナーにも…。本を買う事は自宅又はオフィスでその置き場を確保…中身を重視すればする程、経年=多書→処分の際に悩む年齢になり、図書館活用?との葛藤です(苦笑)。
一つの専門分野で頑に尽力し、支持を得て安定経営が出きるのが理想なのかも知れませんが、全く異分野の雑誌を制作する会社を子会社化するのも、経営上のリスクマネジメント展開?…。
経営数値と共にイメージも重要と思うものの一人として、(良い意味で)お堅い会社/出版の新ビジネス展開に驚きつつ、ビジネス社会では、儲けてナンボ(関西表現)綺麗事/理想論だけでは経営は成立維持出来ないのかも知れません。僭越/恐縮です。
現代生活の必需:電気、学生の就職、民営化された郵便関連会社、住宅建築、受信料運営組織や行政予算にも進出の娯楽会社・・・に携わる企業の不祥事に関するご投稿:5つの業界=人間社会に欠かせない分野であり、それぞれが日本を代表/一端を担う企業の不祥事に、例えば、海外の個人/機関投資家の眼:株主総会はじめ投資視点ではどの様に映り、展開して行くのでしょう…。国内企業/組織一つ一つが、ニッポンの「顔」である訳で、不祥事大国:JAPANのレッテルを貼られて久しい?既に麻痺状態か…?と危惧します。
(一般論として)
不祥事に手を染める要因に「表面上の数値を達成する事」を優先する背景が在るとしたら、時には岩をも貫く様な強靭な精神力が、経営者に必要なのかも知れません。遊びの誘惑に耐え勉学に励み、庶民が羨む様な知名度ある企業組織に入り昇格。そのマンパワーを、違法/偽装の類いに費やすのではなく、インテグリティ重視・・・SDGs/ESG展開は、世界中のヒト社会から託されている、多くの経営者層の「こころ(臓器としては「脳」ですが )」を試すリトマス紙の役割をも備えている様に思っています・・・。
投稿: にこらうす | 2020年1月23日 (木) 06時02分
論稿は未読ですが、要旨を拝読して「不正を通報された経営陣が不適切な対応をし、公益通報者に第二次、大「惨事」被害が及ぶことに、やり切れなさを感じます。
権力を持つ経営陣の対応により、不正を是正する端緒となった正直な通報者がバカを見てしまいます。
組織的不正の場合、不正を隠蔽しようとするもののほうが多くて「強い」という圧倒的な多数決の論理です。
ここは政府、行政にしっかり対応願いたいと思います。
日弁連主催「公益通報者保護法の【実効的】改正」集会が衆議院第一議員会館であり、山口先生ご存知のH弁護士(内閣府消費者委員会「公益通報者保護専門調査会」委員)のお話も伺えるようです。
法改正に向け、お供え餅を片づけたあとの「絵に描いた餅」にならないよう祈りを込めています。
投稿: 試行錯誤者 | 2020年1月23日 (木) 13時58分
にこらうすさん、試行錯誤者さん、いつもありがとうございます。
日本郵政の事例、もし原告側の主張が真実とするならば、本当に情けない話だと思います(試行錯誤者さんのおっしゃるとおりですね)。
さて、私がいろいろと公益通報者保護法の改正について述べておりましたが、1月18日時点で奥山記者が経過を記事で報じれおられましたね(有償版の法と経済のジャーナル)。知りませんでしたが、ぜひご覧になれる方は参考にしていただければと思います。
投稿: toshi | 2020年1月23日 (木) 14時10分