« 社外取締役制度は「お楽しみ福袋」に似ている(と思う・・・閲覧注意) | トップページ | 関電幹部を恫喝する「高浜町元助役」の声を聴いて、あなたはどう思いますか? »

2020年1月 9日 (木)

日産前会長ゴーン氏の記者会見を視聴した感想

中東情勢が緊迫するなかで、日本企業のBCPの動きのほうに関心が向きますが、とりあえず「興味本位」で1時間半ほど、ベイルートにおけるゴーン氏の会見を生動画で視聴しました。アラビア語、ポルトガル語、英語、仏語で記者から質問が飛んできても、それぞれの言葉で回答するのはスゴイと思いましたが、「同時通訳不能」な状況が増えたところでとりあえず視聴をやめました。

文藝春秋の2019年1月号、同7月号、一昨年末からの週刊文春のいくつかの記事等を読んでいましたが、「日産の共謀者の実名を暴く!」とのことで、私なりにひそかに会見の成り行きには期待をしておりました。

しかしながら、あっと驚くようなストーリーが具体的に語られることはなかったですし、政府関係者の実名公表も控えたまま、すでに「ゴーン封じの主役」として報じられていた名前ばかりが並んでいましたので、全く新鮮味がなかったです。逃亡方法については「関係者に迷惑をかけたくない」として、一切話さないのは予想どおりでした。ルノーへの思いも一切語りませんでした。最後には「17年間滞在した日本が大好きです!保釈中もたくさんの日本人に応援してもらいました」とのこと。いろんなところに「忖度」しておられました。

「私は無罪の証拠を握っている!ぜひ公開したい!」と力説していた証拠も、すでに新聞等で報じられていたものばかりなので期待外れでした。ゴーン氏は、一生懸命解説していましたが、日本企業のガバナンスや会社法制度の予備知識がないと問題点がわからないのでは、と感じました。

唯一驚いたのは、存じ上げている東京大学のT先生が実名で登場したことでした。アドバネクス事件では東京地裁第8民事部(商事部)の裁判官に「喝!」を入れておられましたが、ゴーン氏が全世界に向かって「東京大学の会社法の学者Tさん(実名)は、きっと私に有利なことを書いてくれる」と述べるほどですから、とても信頼されているのでしょうね(全く関係ない話ですが、消費者庁の公益通報者保護制度実効性向上検討会の前座長が最高裁判事に就任されたので、ぜひT先生には後任の座長になってもらいたいのですが・・・)。

東京地裁の裁判官から「そんなに奥さんと話がしたいって、いったいどんな話がしたいのですか?」と聞かれて、ゴーン氏は閉口したそうですが、「そりゃそうだよな、普通は夫婦の会話なんか聞かんわな・・・」と素直に思いました。

ゴーン氏の会見でも少し言及されていましたが、元代表取締役のグレッグケリー氏(被告人)は、この会見をどんな思いで視ていたのでしょうか。ケリー氏の金商法違反被告事件が終わらないかぎり、検察とゴーン氏との闘いも終わらないだろうな・・・(しかしグレッグケリー氏の弁護人も相当のプレッシャーでしょうね)。

 

|

« 社外取締役制度は「お楽しみ福袋」に似ている(と思う・・・閲覧注意) | トップページ | 関電幹部を恫喝する「高浜町元助役」の声を聴いて、あなたはどう思いますか? »

コメント

私はツイッター等で内容を追っかけていました。ゴーンのプレゼンをまじまじと見るのは初めてでしたが、ロジカルではなくエモーショナルだったので、見る価値を失いました。検察は違法行為しているのに自分が違法行為を追求されているのはおかしい、と言い出したあたりで退出いたしました。
年齢とともに自らのカリスマ性に寄りかかるようになってしまった人物のパターンです。理屈が立ってなくても通ると勘違いしているのでしょう。まあ、これがグローバルでは正攻法なのかもしれないですが。
憶測にすぎないものの、いずれ、レバノン政府も勘弁してくれということでフランスか日本に送還される可能性がありそうです。
レバノン国内より、脱出前の日本のほうがよほど安全だったといずれ気づくでしょう。

投稿: JFK | 2020年1月 9日 (木) 00時46分

私もJFKさんと似たような感想を持ちましたが、たしかこの会見に向けてPR会社と契約を結んでいたのではないでしょうか。率直な感想として「PR会社と契約して十分な準備もしてこの内容なのか」と、少しガッカリしました(日本にとって良い悪いは別として、本文に書いたような野次馬的な興味を抱いて会見をご覧になっていた方は、おそらく私と同じような感覚だったのでは?)

投稿: toshi | 2020年1月 9日 (木) 01時49分

既に情報を追っている人にとっては目新しい情報はあまり無かったですが、追っていなかった人達にとっては知るきっかけになったのでは。特に海外に犯罪事実に関するゴーン側の言い分は殆ど伝えられていなかったので。数週間後に更なる発表を行うような事も言っていたので今後も注目していきます。

投稿: unknown1 | 2020年1月 9日 (木) 03時05分

T先生は消費者庁ワーキンググループ(山口先生も委員をされていた)でロジカルな話を分かりやすく説明されていました。
歩きながら深く思考に耽っている印象もありました。
令和二年、U先生の「後任の座長」という表現に、期待するところがあります。

投稿: 試行錯誤者 | 2020年1月 9日 (木) 07時56分

ゴーン被告の、海外での会見後に、森法務大臣が、深夜/未明に異例の反論会見を開いたという報道に触れましたが、立場上必要だったかも知れませんが、この反論会見に必要な経費の類いの原資は、どこから出るのか?誰の納めたお金で行っているのか?という視点です。
大臣一人で会見会場の設置や段取りをした訳でも無いでしょうから、深夜に別の職員(公務員)を働かせる…当然人件費:深夜手当も付く?

昨年消費税が増税されましたが、本件に限らず、(本件への是非はともかく)納税後の税の使われ方に注視する事、又、異質/説得力の無い税金の(本件とは別の様々な)使われ方に対する、法曹界のチェックと制度確立、精度の向上を願っています・・・。

投稿: にこらうす | 2020年1月 9日 (木) 08時39分

会見の内容は目新しいものはありませんでしたけど、今回は日本の司法制度の非人道さをエモーショナルに訴えることが主眼だったように思います。
弁護士立会いを認めていなかったり、長期勾留が検察主導で進めら人質司法になっているなどの問題点が、テレ東に出ていた法政大学の水野教授も言及していましたし、橋下弁護士なんかも指摘しています。
安倍首相も「日産内で片付けてもらいたかった」と発言しているようですし、国際世論の流れによっては検察に大きな逆風が吹くかもしれません。
森法相が未明に記者会見したようですが、本気で日本の司法制度に問題がないと訴えたいのなら、海外のメディアも入れて、基本的にどんな質問でも受けるぐらいした方が良いと思います。
昨晩は極めて劇場型の会見でしたが、欧米人はそんなスタイルが好きですし、法相や検事総長もオープンに会見、質疑対応でもしないと、相変わらず密室的でネガティブな印象を与えそうで心配です。

投稿: ポラ | 2020年1月 9日 (木) 10時23分

みなさま、コメントありがとうございます。
なるほど、たしかに私の場合、日産前会長事例に関するメディア情報はほとんど目を通していますし、ブログでもさんざん意見を述べてきましたので「既視感」があるのですよね。でも初めて事件に触れる海外のメディアの方には価値のある情報だったかもしれません。
ただ、それでもストーリーの具体性に乏しかったのではないでしょうか。昨日の会見で「これは日本で起きたクーデターだ」と各国メディアが報じるだけのクーデターの中身になっていたかどうか疑問を抱きました。

投稿: toshi | 2020年1月 9日 (木) 11時49分

相変わらず、日産の内部監査ポジションの求人空いていますね。ただ、ゴーンさん見ていると、ガバナンスは機能していないし、コンプライアンスのコの字も感じられませんね。

投稿: 元工場労働者 | 2020年1月13日 (月) 05時40分

率直な感想として、金持ちには逃げ道があるが、庶民には無い、と思いました。リストラを経た何の罪も無い方々の中には、生活費の確保さえ難しい方もいらっしゃるのでは。一方で、この手の不正を行った(と思われる)経営者の方の弁解って、どうしてこう似た調子になるのでしょうね。そういう感覚に陥っている経営者は、不正のグレーゾーンの塀の上を歩いていくことが、経営者の手腕の一つだとでも思っているのではないか、と考えてしまいます。

投稿: しがない元会社員 | 2020年1月13日 (月) 18時01分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 社外取締役制度は「お楽しみ福袋」に似ている(と思う・・・閲覧注意) | トップページ | 関電幹部を恫喝する「高浜町元助役」の声を聴いて、あなたはどう思いますか? »