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2020年2月19日 (水)

「監査等委員会設置会社のベストプラクティス」について考えるべき時期では?

今年から、神田秀樹先生(学習院大学教授、東大名誉教授)が、判例時報に「会社法・金融法、随想-立法事実からみる、近況・課題」なる連載論稿を執筆されています。現時点で読めるものは1月11日号(2425号)における「上場会社の機関設計と監査等委員会設置会社」のみですが、会社法(上場会社関連)→会社法(中小会社関連)→金融法、と続く「随筆」はとても楽しみです。

第1回は「監査等委員会設置会社のベストプラクティス」をメインに語られていますが、すでに1000社を超える上場会社の監査等委員の皆様の中で、どれくらいの方がお読みになっているのでしょうか?神田先生の問題提起は、ご自身で「今後のベストプラクティスにゆだねられた課題である」と述べておられますが、私からみると「(広い裁量は認められるものの)善管注意義務の実践」のお話ではないかと思えるのです。

「妥当性監査」ないし「妥当性監督」の権限行使の局面において、指名委員会等設置会社における監査委員会と取締役会とは「共同・連携」して行うことは理解できるのですが、監査等委員会設置会社における監査等委員会(監査委員会と異なり、監査等委員会には、監査役のような独立性が制度上確保されています)と取締役会では、この権限行使はどちらが担当すべきなのか、実は明らかにされていないし、監査等委員会(監査等委員)の行動のモノサシとなるべき実務指針や監査基準でも明らかになっていません。

(ここからは私の推論ですが)おそらく監査等委員会設置会社というのは、限りなく監査役会設置会社に近い状況でガバナンスを機能させることも(たとえばマネジメント・モデルによる取締役会構成を採用する)、限りなく指名委員会等設置会社に近い状況で機能させることも(たとえばモニタリング・モデルの徹底も)可能なので、監査等委員の行動規範の中身も明確にできないのかもしれません。そして、仮にモニタリング・モデルに近い(取締役会の)運用を目指すのであれば、「監査等委員会設置会社のベストプラクティス」を平時から検討しておく必要があるのだろうな、と思います。

ただ、これだけ東証ルール(ガバナンス・コード)を遵守している上場会社が多いのであれば、実質的にみれば監査等委員会設置会社を選択したすべての上場会社が「モニタリング・モデル」のガバナンスを実施すべき(少なくとも目指すべき)とは言えないでしょうか?単に社外取締役を増員する目的だけでなく、迅速果断な経営判断を実現する目的のために監査等委員会設置会社に移行した上場会社でも、「監査等委員会の経営評価機能」をきちんと機能させている会社はほとんど見当たらないのは、私には「会社法違反」に映ります。

ということで、神田先生は、監査等委員会は、取締役会の定めた「経営の基本方針」に基づいて、一定の時期ごとに業績の評価を実施することが考えられる、と述べておられます。その評価の報告は「指名・報酬に関する意見陳述の理由説明」もしくは「監査報告」で行われる、ということになります。江頭教授の「株式会社法」では監査等委員会の意見陳述権は「経営評価機能」のひとつとして分類されていますが、いずれにしても、個々の監査等委員会設置会社としては、妥当性監査(効率性監査)ないし妥当性監督(効率性監督)を取締役会と監査等委員会でどのように分担しているのか、とりわけ監査等委員会の分担する妥当性監査、監督の結果は、どのように株主に対して報告されるのか、という点を対外的に説明する必要があるのではないでしょうか。

「裁判規範」から離れて、会社法を「行為規範」として捉えると、実務に及ぼす影響がいろいろと出てきます。監査等委員会設置会社の監査等委員の方が会長になられた日本監査役協会も、いまこそ監査等委員会(および機関を構成する監査等委員)の業績評価の役割について、取締役会と何をどのように分担すべきなのか、どのように株主に報告すべきなのか、「形式から実質へ」深化させた実務指針を示す時期に来ているものと思います。

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コメント

(釈迦に説法的で恐縮ですが)

神田秀樹先生は、2018年秋に「役員報酬改革論/増補改訂第2版」という著書を出されていますが、
このご著書のサブタイトルに「日本経済の処方箋」と記されています。
私は個人的にGDPの数値が100%善い/正しいとは思わない懐疑派ですが、
世の中がGDPを主軸に動いている中での、その数値に多大な影響を及ぼす事態となった新型肺炎問題。その影響が超拡大するビジネス/人間社会生活への「処方箋」を待望する日々です。

(はたして日本国/社会は今、「最善慣行/最良慣行」に戻る方向に舵を向けているのでしょうか?)

世界の巨艦と化した中国の危機は、全人代を延期するまでに波紋が広がり、
海中から放たれる魚雷の如く、見えにくい敵の猛威に、沈没してはならない様にと懸命の様相です。
共倒れになりかねない状況の日本国も然り。
僭越ですが、
三権分立をもじって「三権恊創」(広義の司法)で国としての善感注意義務の新局面:実践/稼働する事態では?と、
危惧が日に日に増幅…の心境です。
それを、国民に解り易い形で、動向推移を発信して行く…。(加えて、各国の医療関係者恊創視点も)
国会、内閣が互いの同胞を牽制している場合ですか?と不安視するのは、私だけでしょうか…。
舵取りを左右する「コンパス機能」の如くの法整備、それに直接/間接的に携わる法律専門家諸氏の手腕や如何に?。

(どこかに盲点と過信が?…自省も込めて)

様々なイベント/催しが国内外各地で中止/世界三大スポーツイベントの1つ:F1の中国GPも4月開催を断念。
控えるTOKYO五輪:パラ五輪や、国内の基幹産業の一つ:プロ野球やJリーグの行く末や如何に?
法治国家である以上、法令遵守は大原則なれど、個人情報保護法等に揺り動かされているかの如くの
国と各自治体の後手が国民と企業/組織を、ここまで不安に陥らせて来ている状況下です。
法の整備と施行のあり方に、既存の枠を超えた「何か」が必要ではと思いつつ、それぞれの操舵者の
方がたの航行手腕を,乗船者的視点で「どうか沈没(破綻倒産等)しませんように」と願うばかりです。

国民には「投票」という、株主等資産家には「投資」という懐刀がある事を、監査する立場の人達にも
あらためてお伝えしたい心境と共に・・・。

投稿: にこらうす | 2020年2月19日 (水) 10時32分

結局は、個々の「監査等委員」あるいは「監査役」の力量、性向に依存するのではないでしょうか。

いくら社外(独立)役員だと言っても、会長社長の顔見知り、現役を退いてご意見番に祭り上げられて十年以上経過した監査法人の元偉い人、経営学の本は書いていても経営実務をしたことがない大学教授、、、そんな人ばかりで構成されているのが現状の多数派だと感じます。

日本語で経営監査のできる人材がいない。これに尽きるのでは。

投稿: しがない内部監査員 | 2020年2月19日 (水) 12時52分

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