公益通報者保護法改正-不利益処分への罰則導入は見送りか?
3日に各メディアが報じるところによると、自民党の消費者問題調査会が、公益通報者保護法の改正案を検討している消費者庁への提言をまとめたそうです。通報者に不利益な取り扱いをした企業に対する罰則については触れられておらず、一昨年12月に公表された内閣府消費者委員会の専門調査会の報告書に比べて後退した内容、とのこと。消費者庁は提言を基に改正法案を作成し、3月にも国会に提出する方針だそうです(毎日新聞ニュースがわりと詳しく報じています)。
当ブログにコメントをいただく常連の皆様には申し訳ないのですが、この結果は、消費者庁の公益通報者保護制度実効性検討会及びワーキングチームにて、私が主張していた意見と同様のものです。私も、気持ちとしては通報者に対して不利益処分を行った事業者に対して(少なくとも)行政による制裁措置が講じられるべきと思うのですが、いかんせん消費者庁は小さな組織です。他に消費者保護のための所管事務をたくさん抱えている中で、事業者の行政処分のための手続きを遂行するだけの人的資源も物的資源もありません(そういった意味で、「通報を受理した担当者の守秘義務違反への罰則制度」というのも、本当に機能するのかどうか、やや心配です)。
そのことを承知で消費者庁が行政処分権限を行使するとなれば、公益通報者保護制度の実効性がかえって失われてしまう結果となるので、私は検討会委員として反対をしておりました。改正内容としては「後退」かもしれませんが、私はむしろ実効性向上のために「実をとった」と考えています。改正法の実効性を高めるためには、厚労省の協力は不可欠であり、消費者庁としても、今後は各関係機関との連携をいかに果たしていくか・・・そこに注力をしていただきたいと願っています。
そして、公益通報者保護制度については、(私の理想論に近いものではありますが)お忙しい消費者庁の所管から離れて、個人情報保護委員会のような独立行政機関として設置されるべきと考えています(たとえば「公益通報者保護委員会」の設置等)。世界的に内部通報制度の拡充が話題になっていますので、日本でも品質偽装や経済法違反事案の予防、発見のためにも、公益通報者保護制度の機能強化を図るべきだと思います。
| 固定リンク
コメント
スウェーデンという、北欧の、GDP規模からすれば大国でもない?(失礼)国の、一少女が唱える気候変動危機提起に、世界の航空会社が、従来の運航のあり方を問われています。
又、トヨタ社は巨大な恐竜の如く、大きくなり過ぎたが故の社員対策にと、意識改革を促す手帳を発行:配布されたとか。
「長いものには巻かれろ」という諺が在る反面、
「山椒は小粒でもピリリと辛い」という諺を脳裏に浮かびつつ、
山口先生のお気持ち/実をとったご背景を、僭越ながらイメージしています。
(世界の動向との有用な共同体制を望みつつ…)
ブリュッセルやジュネーブ等に本部を置くアルファベット3文字…
=「W ◯◯」や「I ◯◯」のような万国共通の下での公益通報保護機関設立/機能は、現時点では「絵に描いた餅」かも知れませんが、既存の消費者庁で真摯で正義感ある職務を遂行されていらっしゃる方々に《ご自愛下さい》《頑張って下さい》エールを送りたい心境になっています・・・。
投稿: にこらうす | 2020年2月 4日 (火) 08時02分
「不利益取扱いに対する行政処分等」については、「通報者支援(ここが重要です)の観点から、関係機関が連携して不利益取扱いの是正に向けた取組を進める」よう(案)がまとめられたようです。
行政機関の情報共有・連携は、毎日のように取り上げられるので、PTの提言にまとめられるのは良いと思います。
本日4日の日弁連「公益通報者保護」衆議院院内集会でも、ようやく法改正の第一歩が踏み出されることに肯定的な意見が多かったです。
国会議員の方も多数参加され、挨拶されました。
投稿: 試行錯誤者 | 2020年2月 4日 (火) 17時42分
現状、企業トップが関与している不正を公益通報すれば、間違いなく公益通報者は不利益処分を受けています。
第三者委員会立ち上げなどの時間が経過しているうちに不正を行っていた企業トップらは、公益通報者ではないか疑わしい従業員を素早く閑職に追いやっています。
人命に関わるような不正を公益通報しても通報者は報われず、良くて不正実行者と差し違えて退職に追いやられる現状では、普通であれば公益通報などしようと誰も思わないでしょう。不正を行うような企業トップらはそれらを承知しているため、不正が後を絶たないのだろうと思います。
監査役や監査等委員の選任案を実質的に執行取締役が考えるような現状では、骨抜きガバナンスになりやすいのは、当然のことだと思います。
従業員の公益通報を徹底して守ること、及びトップの関与が疑われる不正には強制調査力のある行政当局が徹底的に第三者委員会や調査委員会等を監視及びバックアップすることこそ、国民の利益につながると思います。
投稿: たか | 2020年2月 6日 (木) 01時05分