社長さんのセクハラ疑惑行為と企業のコンダクト・リスクへの対応
今朝の朝日新聞朝刊1面に、大手服飾メーカーの社長さんのセクハラ疑惑を報じる記事が掲載されていました。「これは、会社側からの反論をまって第2弾の記事が出るのでは?」と思っていたところ、3月5日の夜に第2弾の記事が朝日新聞WEB版に出ましたね。
私も現在進行形で、似たようなセクハラ事案の調査を行っていますが、第三者からの通報に基づくセクハラ・パワハラ調査というのは、被害者とされる方の(調査を進めることに対する)意向を確認しながら、また関係者の秘密を徹底的に守りながらの調査になりますので、認定は困難を極めます。職場の同僚の方に調査への協力を要請しても、(協力に向けての)いろんな条件を出されるために「真実追及と関係者保護のどちらを優先すべきか」と悩むことが多い。通報された第三者の方が、いろいろな思惑をもって通報するケースもありますので、調査する側は「職場環境配慮義務を尽くすため」とはいえ、複雑な心境になるときもあります。
このたび報道された事件について私はコメントできる立場にはありませんが、過去の査問委員会の結論(厳重注意)という点に、少し関心を持ちました。セクハラに関する調査によって、最終的にセクハラがあったと断定できないケースはよくあります。ただ、「セクハラと疑われても仕方がないような事実」については認定できることが多いのです(加害者とされる方も、これを認めるケースは多いと思います)。そのあたり、査問委員会は認定できなかったのでしょうか。
パワハラ調査と異なり、セクハラ調査の場合には、「セクハラ行為はなかったかもしれないが、セクハラと疑われてもしかたのない行為」については、ミスコンダクト、つまり企業行動規範や倫理規範に違反する行動になることが多いと思います。法的根拠としては、就業規則上、制裁条項にある「会社の品位を害する行為」とか「職務誠実義務違反」に該当する、というものです。「セクハラと疑われる行為」については、一般の社員ではなく、社長という立場にある方だからこそ「会社の品位」と密接に関係します。
なお、「セクハラと疑われる行為」は社内の業務とは一切関係ありませんから、比較的処分が出しやすいのですが、「パワハラと疑われる行為」については、上司の適切な指揮命令と密接な関係を持ちますので、簡単には処分は出せません。
このあたり、この会社では企業行動規範や倫理規程がどうなっていたのか、就業規則の「制裁条項」はどのような内容だったのか、という点がもう少し深く知りたいところです。
最後に「大きなお世話」と言われそうなことですが、査問委員会の厳重注意がなされた後に、この社長さんは内閣府の男女共同参画会議のメンバーに就任された、とのことで「これはヤバイかも。。」とは思わなかったのでしょうかね?第三者通報の結果として、処分が甘いとなりますと、今度は通報が社外(マスコミや行政当局)に向かいます。このような要職に就く、ということは内部告発者の意欲を掻き立てることは必至です(現に朝日新聞や週刊新潮の記事が出てしまいました)。そのあたりのリスク感覚はどうだったのだろうか・・と。
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