乾汽船における買収防衛策廃止を目的とした臨時株主総会の招集請求に東京地裁が許可決定
昨年5月、自動車部品メーカーであるヨロズ社において、買収防衛策を廃止する旨の株主提案を、会社側が定時株主総会において取り上げないことの適法性が争われました。東京高裁は、ヨロズ社の定款の解釈として、買収防衛策の廃止に関する提案ついては、株主総会の専属権限ではなく、取締役会に提案権限があるとして、会社側の主張を認め、株主側の仮処分命令の申立てを棄却しました。
ところで、かねてより乾汽船の経営者側と対立していた大株主(アルファレオホールディングス合同会社)が、乾汽船が導入している買収防衛策の廃止を議題とする臨時株主総会の招集許可決定を東京地裁に申し立てておりましたが、3月6日、東京地裁はこの申立てを認めて、招集許可決定を出しています(乾汽船のリリースはこちらです)。
一見すると、この東京地裁は昨年のヨロズ事件に関する東京高裁決定と矛盾するように思えますが、どうなんでしょうか。ヨロズ社と乾汽船社とでは買収防衛策導入に関する定款の規程が異なる、という点が問題にされたのでしょうか?それともヨロズ社の大株主は「濫用的買収者」だが、乾汽船社の大株主にはそのような傾向がみられない、という点が考慮されたのでしょか?このあたりは、乾汽船事件東京地裁決定の内容を読まないとわかりません。
ただ、最近、再び買収防衛策の実効性や適法性についての話題が盛り上がりをみせていますので、結論を異にした理由がどのあたりにあるのか、ぜひ知りたいところです。
話は変わりますが、先日のエントリー(タッチの差で遅かった?-ハイブリッド型バーチャル株主総会の実務指針)において、このたびの新型コロナウイルスの影響で、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会を開催するところが出てくるのではないかと予想しておりましたところ、実際に3月総会の上場会社において実施に踏み切るところが出てきましたね。
私は、エントリーを書いた2月20日頃の情勢を前提として、そのような予想をしたわけですが、3月9日時点において、国内外の新型コロナウイルスの感染状況は深刻となっており、そもそも株主総会を開催できる状況といえるのかどうか疑問を持っています。感染のおそれ、という物理的な理由と、「当日の総会にはなるべく出席せずに事前行使をお願いします」とか「なるべく短時間に総会を終わらせましょう」といった総会運営方針をとることへの株主の違和感からです。
「株主との建設的な対話の場」としての株主総会の役割に注目が集まる中で、「実質的な対話を実現するために延期する」という選択肢もあろうかと。実際、2月末の定時株主総会の議事録を拝見しても、株主からの質問は「このコロナウイルスが会社の業績に及ぼす影響はどのくらいか」ということに集中していて、平時の経営に関する質問が少なかったようです。そもそも、このようなご時世、一般株主の方々も、たとえ出席したとしても、会社側の意向を「忖度」して、質問されないのではないかと。
ということで、法務省の見解を参考にしながら、3月総会を延期する上場会社も出てきても不思議ではない、と思っております。
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