「公正なM&A指針2019」で変わる独立委員会実務
本日は企業価値算定に関連する独立委員会(主に社外取締役の責任と役割)に関する話題です。2月28日に、(企業の公正価値算定で著名な)プルータス・コンサルティング社から送られてきたメールマガジン(プルータス・ニュース)では、昨年6月28日付け「公正なM&Aの在り方に関する指針」が公表された後に、実際に公開買付が行われたMBO事案(18件)の調査結果が示されています。
主に「独立委員会の実務が、上記指針公表によって変わってきたのか」というところに焦点を当てたものですが、①独立委員会の構成員、②構成員の変化に伴うアドバイザーの起用、③フェアネス・オピニオンの取得、という点において、顕著な変化がみられます。
たとえば①では、かつては委員の独立性・公正性という点が重視されていて、外部有識者が構成員を占めることが多かったのですが、上記実務指針が公表された後は、被買収会社の社外取締役が構成員になるケースが増えています。また、ファイナンスや法務に詳しくない社外取締役の方が構成員になる以上、アドバイザーとして専門家が独立委員会に関与するケースが増えています。
さらにフェアネス・オピニオンについては、18件中7件ということで、半分以下ではありますが、上記指針を意識してオピニオンを取得する事例が増えているそうです。今後も、フェアネス・オピニオンの取得については、公正な企業価値算定のプロセスにおいて重要と認識する企業が増えてくるのではないかと思います。
先日も「アスクル・モデル」についてご紹介しましたが、親子関係もしくは支配・従属関係にある場合に、子会社(従属会社)側の独立社外取締役の責任と役割が重要視されるようになっています。そのあたりは、昨年6月以降の実際の例からみても、子会社側の社外取締役の中でもかなり意識をされている方が多いことがわかりました。
なお、独立委員会が設置する法務アドバイザーについて、会社側のアドバイザーとは別の事業者を選任するほうがよいと思います。社内取締役と利益相反にあるからこそ、独立委員会を設置しているのですが、当該委員会と会社側と同一のアドバイザーが支援しているとなりますと、やはり少数株主からみれば「なれ合い」に映る可能性があります。ここは会社側の矜持として、独立委員会がイニシアティブをとって、自らのアドバイザーを選任すべきだと思います。
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