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2020年3月10日 (火)

コロナ・ショックは会計不正事件まで自粛させてしまうのか?

(3月10日午後0時40分最終更新)

本日(3月9日)、東洋経済ニュースで知りましたが、昨年4月にこちらのエントリーでも触れております上場会社さんが、えらいことになっていますね。元代表者の言い分と第三者委員会の認定事実とどちらが正しいのかはわかりませんが、すくなくとも元代表者の方が監査役の役割を軽視しておられたことは間違いないようなので、それはとても残念です。そして報告書が公表された当時、とても話題になりました「(元代表者の方の)私的にメールを送った女性関係図」なるものが、第三者委員会の調査において必要だったのかどうか、調査目的との関係で、ぜひ真剣にご議論していただきたいと思います。

さて、いつも有益な情報を頂戴している「第三者委員会ドットコム」さん(上記会社の第三者委員会報告書の存在も、ここで知りました)のHPにおいて、2月14日以降、会計不正もしくは不適切な会計処理を適時開示する上場会社がひとつも見当たらないことに気が付きました。コロナ・ショックで株価急落の中、上場会社では会計不正事件は起きなくなってしまったのでしょか?(追記:と言っておりましたところ、午後0時30分ころにジャスダック上場会社の不適切会計発覚→第三者委員会設置 のリリースが出ましたね(;'∀') )

ちなみに、上記HPから、2019年1月~3月の会計不正・不適切会計処理に関する適時開示の数を調べてみますと、2019年1月6件、2月6件、3月は7件となっておりました。それと比べて、今年は1月9件、2月6件、3月0件です(追記:3月1件に訂正いたします)。おそらくどこの会社でも、ビジネス自体が混乱してしまって、内部監査や不正調査における疑惑解明といった職務自体が停滞しています。そんな中で、過去の不正が表面化する確率がかなり減ってしまった、というのが現実ではないでしょうか。

会社が非常事態となり、ジョブシェアリングやテレワークが採用されるとなると、職場で隠ぺいしていた不正が発覚する機会も増えますよね。ただ、会社が非常事態から脱却するために、社員一丸となって業績回復に邁進するなかで、「この人、不正やってます」と手を上げることって、かなり勇気が必要です。このあたり、職能給制度の国と職務給制度の国では差が出るように思います。

よく「2019年と2020年を比較して、今年は会計不正事案が多かった(少なかった)」といった調査結果がリリースされますが、コロナ・ショックの影響で、今年は比較すること自体があまり意味がないかもしれませんね。

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コメント

おはようございます。

SVHの第三者委員会報告書は山口先生の記事を見た直後に、社内の事例研究会で使わせていただきましたが、その際に「これ、個人情報保護の観点からすると行き過ぎではないか?」といった指摘がありました。東洋経済オンラインの報道を見ると、やはり元会長とその弁護士はそのあたりも突いてきてるようですね。通話記録、メール履歴の提出は調査のために必要とはいえ、その内容をあそこまで露出させる必要があるのかと言えば‥‥ 「社内政治への利用(悪用)」と言われれば、かなり納得できるものがあります。

武漢ウィルスの影響といえば、やはり会社と社外専門家との集合形式の会議を自粛する方向に流れていることの影響があると思います。勤務先の場合、監査法人はテレワーク、テレカンファレンスに慣れている方が多いですが、法律事務所はアンダーセン毛利や西村あさひなどの国際業務に長けている大手を別にすると、やはり当社または法律事務所の会議室に集まってワイワイガヤガヤ、を好む傾向があります、なので、「集合会議を避けよ」となると、どうしても特別委員会や第三者委員会を組織して事態究明~対策の立案、といった活動が低下すると思います。他社の使っている法律事務所はどうなのかなぁ、と思っています。

投稿: しがない内部監査員 | 2020年3月10日 (火) 11時33分

「お前はこんな消極的な事業計画しか出せないのか。それなら監査役にしてやる!」とか「おまえは重箱の隅をつつくのが得意だから監査役がぴったりだ」など、言われて常勤監査役になった方が、このたび元代表取締役を提訴していますね(子会社の社長として)。社内政治への利用もあったかもしれないけど、こんなこと言われたら、反撃するのも当然ですよね。
調査目的に「貴社のガバナンス」がある以上、社長の女性関係について触れるのは当然ですよ。先日、アースの社長さんがセクハラで辞任しましたが、非上場でも辞任ですから、上場の場合は辞任+損害賠償が当然です。

投稿: そんたく王子 | 2020年3月10日 (火) 12時14分

SVHの場合、女性に関わる個所はセクハラではなく公私混同が問題ですので、アースの社長とは異なります。

要は公私混同の金額や程度がわかるようにすればいいのに、女性へのメールの回数や頻度、特にその相手となった女性の人数まで表に出すのか?ということです。読み手に悪印象を与えようと過度に露出させたもの、いわゆる印象操作をおこなっているような雰囲気、を私は受けました。その印象操作に引っかかる人も多いだろうなぁ、とも思っています。

実際にそこまでの必要性があったか否かは、今後の裁判の過程で他の事実関係と照らし合わせて判断されるのでしょうね。

投稿: しがない内部監査員 | 2020年3月10日 (火) 13時23分

SVHの件ですが、驚いたのは第三者委員会の費用が3億5千万円ということで、これは会社が支払うのでしょうか?第三者委員会って、そんなに儲かるのですか?途中で辞任する場合でもこのお金は受け取れるのでしょうか?

投稿: unknown1 | 2020年3月10日 (火) 13時54分

「社員一丸となって業績回復に邁進するなかで」。。。組織的な不正が計画、開始され、それが表向きの業績回復に寄与してしまうと「長年の組織的不正」として不正が正当化されてしまいます。
「王様は裸だ!」とは言い辛いので、「王様の耳はロバの耳」だとわかっていても悶々とするうちに健康を害してしまいます。
3月初の不適切会計発覚、第三者調査委員会設置、そして、もし公益通報者がいるのであれば、名誉と尊厳、健康の回復を祈念いたします。

投稿: 試行錯誤者 | 2020年3月10日 (火) 20時37分

はじめてコメントします(はじめまして)。
前段の対立周りについては、
・再調査はどういう資料に基づいて行ったのか
・再調査依頼が弁護士だけでいいのか(山下町案件の評価に公認会計士が絡まなくていいのか)
・接待以外での定宿の会社負担まわりはどう位置付けているのか
・第三者委員会もホールディングス化後にはガバナンスが整備されているとしており独裁云々はそれ以前の事項を対象としたものではないか
あたりの疑問が残るため、この記事からは追い落とされた側の主張にあまり説得力は感じないな、という印象です。(急にカラーのグラフや妙な図が出てくるいやらしさみたいなものは全く感じないではないですが)
後段の本論についてですが、3月の適時開示7件とのことですが、そのうち10日までのものは3件で、会計色が濃いのはそのうち1件なのではないかなあと思ったりしますがどうでしょうか……

投稿: 紡 | 2020年3月10日 (火) 22時34分

皆様、いろいろとコメントありがとうございます。
はい、紡さんのご指摘のとおりだと思います。まあ、全体の傾向として、ということでご理解いただければと。
また、昨日2件のリリースが出ていますので、少し説得力に欠けるエントリーになってしまいましたね(笑)このあたりが適時開示ネタを書くときに悩むところです。

投稿: toshi | 2020年3月11日 (水) 12時43分

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