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2020年4月27日 (月)

機関投資家の要望が「配当より雇用維持」へ-6月定時総会完全延期の舞台整う

4月26日(日)の深夜配信された日経WEBニュース「配当より雇用維持を-コロナ対応で機関投資家が転換」を読みました。世界の大手機関投資家、ICGN等の提言内容から、「短期的な利益追求より、社会課題に向き合う方が長期的な成長につながる」と株主の考えが変わってきたことが如実にわかります。

先週来、コメントをいただいた方々のご発言から、ISSもコロナ禍の「年次総会延期」「配当議案」への意見が示されたとの情報をいただきました。まだ情報の真偽について正式には確認しておりませんが、ISSのHPに4月8日付けで「コロナ禍における議決権行使助言方針」がアップされているのを発見いたしました(英文)ので、こちらを確認いたしました。助言方針は、これからも新型コロナウイルス感染症の情勢によって更新されることが記されています。

その中で、年次株主総会の延期について、ISSは「総会開催が絶対安全に開催されると判断された場合のみ、年次株主総会は開催されるべきである(しかし、ここ数カ月はその可能性は低いであろう)。総会が延期されたとしても、株主は企業が開示する情報によってもエンゲージメントは可能である」としています。

また「配当議案」については、「現在、欧州各国の企業は、配当議案を撤回している。その状況から鑑みて、予定されている配当利益については、これを従業員への分配と、投資に向けた内部留保に振り向けるべきである。短期利益よりも、パンデミックの元では中長期の利益の方が重要である」としています。

このような有事における議決権行使助言方針から推測するに、ISSは「日本企業は6月総会を『二段階方式・継続会方式』で乗り切ろうとしているが、計算書類も事業報告もない状況で6月総会において(3月末の株主に対して配当を行うことについて)議決権を行使させるのであれば、これに反対せざるをえない」との意見をお持ちではないかと考えられます。

こうなりますと「名無しさん」が前回エントリーでコメントされているように、(企業としては、面倒なことになることを極力回避するために)なにがなんでも5月中旬までには計算書類の会計監査、事業報告に対する監査役監査を終わらせよう・・・といった経営者、CFOの意向が強くなるわけです。しかし、緊急事態宣言が延期される可能性が高いなかで、そんな無謀なことは絶対に避けていただきたい。それで6月総会は乗り切れても、不適切会計や違法配当等のおそれが高まり、結果として株主の利益を毀損することになると考えます。 

「そうはいっても、配当議決権の基準日を変更すれば株主とのトラブルは必至、7月開催などは選択肢として考えられない」というのが企業のホンネでありましょう。しかし、冒頭の日経記事のとおり、機関投資家自身が、もはや「この有事においては、自分たちの利益よりも、まずは従業員の利益を優先して事業の継続を図ってほしい」と考えているのであれば、もはや迷うことはないでしょう。会計監査および監査役監査を尊重し、そして総会の準備にあたる従業員の健康に考慮し、そしてなによりも代表取締役社長ご自身の感染リスクを最小限にするために、いまこそ決断すべきです。

そして、各監査法人の審査部門は、断固として会計監査の矜持を持ち続けていただきたい。たとえ各企業の監査チームが厳しい圧力を会社から受けたとしても、厳格な監査人としての対応を示してほしい。また、監査役・監査等委員・監査委員の皆様は、会計監査人と協働歩調で経営者と対峙してほしい。監査役等の皆様にとっては、ここが有事の正念場です。こういったときこそ、とりわけ監査役の皆様は「独任制」であることを思い返していただき、ひとりでも「おかしい」と違和感をお持ちになったら、ぜひとも声を上げていただきたい。もちろん、前回エントリーにて「元会計監査従事者」さんがおっしゃるとおり、会社のビジネスモデル次第では、5月中旬までに監査を終了させることができる上場会社もあると思います。ただ、その際には、なぜ緊急事態宣言が出ている中で、首尾よく監査ができたのか、きちんと株主に合理的な説明ができるように準備する必要があるでしょう。

もはや6月定時総会の完全延期の舞台はそろいました。このような社会の流れの中で、たとえ継続会であったとしても、6月に定時株主総会を開催する姿勢そのものが、株主、従業員、取引先ほかステイクホルダーからどのように受け止められるのか、ぜひとも冷静に検討いただきたいと思います。

正直申しまして、二段階方式(継続会方式)を含め、6月総会を強行する企業が増えれば増えるほど、(不正調査の依頼が増えて)私個人の収入という意味ではありがたいわけですが、私のような弁護士を儲けさせるような事態にだけはしてほしくないのです。まずは従業員の方々や下請、取引先企業の事業継続や安全を優先的に考えていただくことが、未曾有の試練を日本企業の無形資産として残すための唯一の道ではないかと思います。

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コメント

(「思考変容」という視点でのコメント&考察:恐縮ですが…)

「配当議案」については、今回のコロナ渦の下では、仮に過去のレジェンド経営者=例えば松下幸之助氏や、
本田宗一郎/藤沢武夫氏、伊深大/盛田昭夫氏等が現役全盛期だったとしても、前年度までの様な配当を出せる業績を
維持出来たとは考えにくいのでは?と思っています。
2019年度〜:大幅な下方修正がむしろ当たり前…の風潮下、欧州各国=配当議案撤回が妥当な選択かと。
私がかつて「会計年度2年案」を申し上げたのは、現行の一年会計では、企業の殆どが悲痛な有価証券報告書を歴史に刻む事になる事は避けられず…と思われるので、(微かな希望的に)来年延期になったTOKYO五輪「心機一転特需」等を企業会計に何とか反映/組み入れられれば、経営層の評価や、企業数値を冷静に判断…に近づけられるのではという発想です。
又、本件:株主総会延期論は、参加者等が感染〜重篤〜死亡という「マンパワー減退」=かけがえのないビジネスマン:
老若男女がバタバタと倒れて行く=正に旧帝国軍の無謀展開に匹敵する「二の舞」…という危機回避になると思っています。

(「内部留保」についての一考察…)
(「カネは天下のまわりもの」)

上場企業等:各社の「舵取り」は経営層/監査役諸氏ですが、手足となって収益原資を集めてくるのは取引先=中小、零細企業であり、
それらの経営を縁の下で支える貴重な従業員や配偶者/家族の存在かと。
反社会的な組織が表面上は一般企業同様に商売…への支援/給付には賛同しかねますが、
日銭が必須で、自転車操業的なご商売をしている経営者を倒産/廃業に追い込んで保身優先な収入/債権回収しても、せいぜい一時的な数合わせに過ぎないのでは?
コロナ渦の今こそ、国の赤字国債負荷を緩和させる意味でも、近年積み上げてきた、各社の内部留保の一部を、政府支援と併せて基金創設的にお金を循環させてはどうでしょう?という発想です。
確か、ここ数年積み上げた内部留保は、総額550兆円近く存在。
その1%でも=5兆円余…を政府の給付金と併せて配り、それで一時的に急場をしのぐ原資に充てる…。
関東財務局「法人企業統計調査」などの資料も含め、TOYOTA社を筆頭にイオン社までの「内部留保ランキング」某では、それぞれ10兆〜1兆円台の内部留保が報告されています。例えば各社から1%ずつ、やりくり/決済了解して頂き、【新型コロナウィルス対策【絆】基金(仮称)」を創設し、国民世帯に配布・・・。
そうすれば、毎月負担のリース料、住宅ローン、個人のカードローンの返済に充てるとか、テナント料返済では、ビルのオーナー会社経由で銀行返済に回す事も可能かと。
感染予防や体調維持には、カップ麺だけでは心もとないので、栄養ある肉や魚介、生鮮青果物が不可欠。
デジカメやスマホで、3密を避けつつ、好天散歩がてら、新緑や清流、家族との憩いを撮影/プリントするとか。
つまり、一時的に内部留保を部分的支出したとしても、各社には「ファイナンス返済」や各店舗売上という形でお金が循環するのでは…と考えます。
景気の良い時は、高級車を必要経費処理契約して乗り回したり、グルメ自称&旅行三昧という消費で成り立っていた面も在る近年の日本経済に溺れ、中国経済等をあてにしてのインバウンド/イベント傾倒感覚は、簡単には行動変容できにくいかと考えます。
未曾有の危機に直面しているのは誰も同じ:行政&官僚諸氏も人間ですから心身疲弊もピークでは?
赤字国債発行は、後の世代に更なる負荷を増幅させますので、ここは一つ、内部留保の出番…
各社も余裕は無いかもしれませんが、「HESOKURI」/「TANSU-YOKIN」の一部を…、支持政党視点、好き嫌いは
少し横に置いといて、官民一体でコロナ渦起因で溺死しない様な企業の行動変容を…と、願っています・・・。

投稿: にこらうす | 2020年4月27日 (月) 07時37分

先ほどのコメントの一部補足:恐縮です。
決して「ステイホーム」に反して外出促進という意味ではなく、
自宅の庭や、ベランダの草木や、窓越しからの景観を再見しては?という意味です。誤解を招く表現があったらお詫びします。

投稿: にこらうす | 2020年4月27日 (月) 08時08分

日経の記事、非常に興味深い内容です。短期利益志向の極めて強い欧米の機関投資家がこのようなメッセージを出すほど、企業の事業継続に強い危機感を持っているのでしょう。
日本でもGPIFが率先してこのようなメッセージを発信して欲しいです。そうすれば流れが変わるのではないでしょうか?
先生は公認会計監査/監査役監査を尊重するようにと記載されていますが、経営者にとってはまず自社の多数の従業員が決算作業や総会準備作業に関わっていて、彼らが罹患した場合、自社の事業継続に多大な支障を来すことを正しく認識して欲しいですし、罹患を防ぐ義務が自分あることを認識して欲しいです。それができない経営者はさっさと退いて頂きたいです。

投稿: 名無し | 2020年4月27日 (月) 09時03分

オムロンの元社長がコロナウィルスで逝去された件が報道されていました。会社は体温計など医療用機器の特需で比較的打撃が少ないようですが、心理的にはかなりのショックがあったでしょうね。

それはさておき、書類等の返却のため、久々に出勤してみたら、監査法人のご担当が来社されていました。話を聞いたら、「在宅勤務、なにそれ? ですよ。先週はずっとこちらに来てます」でした。

勤務先は公式には「完全に政府方針に連動」なのですが、これでいいんでしょうかねぇ?

投稿: しがない内部監査員 | 2020年4月27日 (月) 10時14分

数次の掲載を拝見する都度、慧眼とご見識に感銘しており、2年前、先生のお仕事に接する機会を得ましたことを感慨深く思っております。
当社は12月期決算につき3月中に四苦八苦しながら総会を終えましたが、今なら延期を決断できます。
ご健康第一にて。

投稿: 上場企業経営者 | 2020年4月27日 (月) 10時40分

素人の素朴な疑問ですので、このようなところにコメントするのは場違いかと存じますがお教えいただきたくコメントさせていただきました。
株主の安全のために株主総会を延期するとして、6月は駄目で7月ならいいという単純な線引きは無いのだと思います。新型コロナウィルスは、治療薬が開発されるまで収束はしない、場合によっては一年以上収束しないといった話もある中、何を決め手として延期後の日程を決めればいいのでしょうか。
感染は収束していなくても非常事態宣言下でなければ開催するというのか、完全に収束するまで延期するとしてどの程度先まで延ばせるのかなど、仮に収束していないのに延期総会を開催した場合の問題等、皆様どのように判断されているのかと思いまして。
浅慮で恐縮ですが、是非よろしくお願い致します。

投稿: unknown1 | 2020年4月27日 (月) 11時05分

unknown1さんの「素朴な疑問」はもっともです。おっしゃるとおり、7月総会というのは「たとえ」でして、たとえば有報の提出猶予期限となっている9月あたりで総会を開催する、というのも選択肢かと思います。ただ、そういった延期によって、必要な情報は株主に出せる余裕があると思いますし、必要な情報を出した後であれば、書面行使やインターネット行使(スマホ行使?)を積極的に活用してもよいのではないかと考えております。9月総会を実際に行ってみてはいかがでしょうかね?その弊害については、まだきちんと理解していないのですが。。。

投稿: toshi | 2020年4月27日 (月) 12時00分

早速ご助言をいただきありがとうございました。

株主総会の開催日という重要な事項の変更にあたって、延期日程をその日と定めた合理的な理由を株主にも説明ができなければなりませんが、仰るように有報の提出猶予期限に合わせるというのはひとつの分かりやすい選択肢だと思いました。
7月であっても9月であっても、延期することで決算数値の確定や監査の適正な実施については心配も不要になると思いますが、感染症の拡大が収束しない中で株主を会場に集めることの安全や健康上のリスクの観点で考えたとき、確実な収束が予想できない中でどのような根拠で延期日を決めるのかはやはり悩ましいです。何度も延期するものでも無いであろうし、延期しても収束していなければ再延期をするのか強行するのかなど、考え始めると迷いばかりが浮かび思わず質問をさせていただきましたが、丁寧にコメントをいただきありがとうございました。

投稿: unknown1 | 2020年4月28日 (火) 17時19分

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