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2020年5月22日 (金)

監査役等による株主総会の適法性維持に関する職務執行について

毎年恒例となっておりました日本監査役協会の春期リスクマネジメント講座ですが、全国7回の開催が予定されておりましたところ、ご承知のとおり大阪の2講演のみ開催後に中止となりました。その講演では、(レジメをお持ちの方は参照いただきたいのですが)監査役、監査等委員は株主総会の手続きに問題が生じた場合に、何らかの対応をとれるのか(とる義務があるのか)、それとも傍観者にすぎないのか、というテーマで例題をお出ししておりました。

昨年、一昨年のアドバネクス社の株主総会では、大株主による動議、出席株主の行動と委任状の処理等の適法性が問題となりましたので、もし同様の事態において、出席株主から「そこに座っている監査役さんの意見はどうなの?」と質問されたらどうしますか?といった例題です。

ところで、そのような例題が参考になりそうな事案が相次いでいます。ひとつは乾汽船さんの4月30日付けリリース(監査役による臨時株主総会開催禁止の仮処分に関する和解のお知らせ)、そしてもうひとつが本日(5月21日)付けプロスペクトさんのリリースです(当社監査等委員による臨時株主総会開催禁止の仮処分申立てのお知らせ)。いずれも大株主と現経営陣との経営権争いが表面化した株主総会に関する事案であり、この6月総会においても参考になるところだと思います。実際の例では、諸々の背景事情があるはずですが、そこは捨象して、理屈の問題として考えてみたいと思います。

監査役、監査等委員において、会社が上程する議案を通じて総会の適法性をチェックする、というのであれば会社法上の根拠があるのですが(たとえば会社法384条、399条の5等)株主側の提出する議案(および参考書類)を通じて適法性をチェックする、というのは、おそらく「株主総会の決議取消に関する提訴権」(会社法831条1項、同828条2項1号)くらいしか根拠はないと思います。いずれにしても、監査役等は取締役の職務執行の監視・検証を職務としますが、これに付随する職務として、株主総会の手続きの適法性を審査する義務もある、と考えることができるのではないでしょうか。

そうしますと、冒頭の例題のような場面においても、監査役さんは「私は取締役の職務執行の適法性を判断するのが職責であり、総会運営権は社長である議長の専権。議長交代の動議が成立して議長が交代してしまえば、その議長による専権。よって私は意見を述べる立場にはない」と逃げ切れるかというと、そうもいかないのでは、と考えております。

昨日のエントリーでも、少しだけ頭出しをしましたが、そろそろ6月総会に向けた株主提案権の内容が公表されるようになり、今年も株主総会で経営権争いが繰り広げられる事案がいくつか出てきそうですね。そういった経営権争いが表面化した総会、不祥事が明るみに出た企業の総会では、さすがに株主総会の簡素化はむずかしいかもしれませんね。

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