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2020年6月 5日 (金)

公益通報者保護法改正法案に対する参議院附帯決議(案)

本日はかなりマニアックな備忘録です。公益通報者保護法の一部を改正する法律案(閣法第41号 衆議院送付)に対する参議院「地方創生及び消費者問題に関する特別委員会」における審議が終了し、法律案は了承されましたが、そこに附帯決議案が出されました。以下、私のメモ程度ではありますが、改正法の理解に大いに参考となるため、参議院における附帯決議(案)の内容を記載しておきます。なお、青字部分は衆議院の附帯決議には入っておらず、参議院の委員会独自の決議案です。

政府は本法の施行にあたり、次の諸点について適切な措置を講ずるべきである

1 本法の改正趣旨や各条項の解釈等について、現行の公益通報者保護法及び公益通報窓口とともに、労働者、退職者、役員、事業者、地方公共団体、関係行政機関等に十分周知徹底すること。周知にあたっては、公益通報者として保護される要件をわかりやすく解説するとともに、公益通報者保護法の認知度が低いことを踏まえて、認知度が上がらなかった要因を分析し、それを解消する工夫を図ること

2 内部通報制度に対する労働者等の信頼性を高め、かつ、内部通報制度の導入に向けた事業者のインセンティブの向上を図るため、第三者認証制度の創設も含め、内部通報制度認証のさらなる普及促進を図ること

3 役員による事業者外部に対する公益通報の保護要件として求められる調査是正措置について、役員による公益通報を過剰に抑制することがないよう、事業者内部における通報対象事実の是正可能性の有無、程度や、公益通報をした役員に対する不利益取扱の蓋然性に留意した調査是正措置の在り方に関する考え方を明らかにすること

4 本法に基づき、内閣総理大臣が定める指針において、内部通報体制整備義務の内容を定めるにあたっては、法令順守の促進の観点に加え、通報者への不利益取扱いの防止や通報者の氏名等の秘密の保持等、通報者保護の観点を明確化するほか、内部通報に関する具体的な記録の作成、保管等を通じて、各事業者における内部通報制度の利用状況や、通報者保護の状況を事後的に検証できる仕組みとするよう検討すること

5 中小企業者を含め、実効的な内部通報体制の整備が促進されるよう、事業者の業種、規模等に応じて、導入可能な内部通報体制の好事例の周知、業界団体等による共通窓口の設置支援等、効果的な普及促進に努めること

6 消費者庁は、内部通報体制整備義務の履行を徹底するため、消費者庁内部の人材育成、人員増強を行うとともに、将来的に不利益取扱いをした事業者に対する行政措置を十分に担うことができる体制を整えるため、外部の専門家の知見の活用も含め、組織的基盤の強化を図ること

7 消費者庁は、内部通報体制整備義務の履行に関する行政措置を行うにあたり、その円滑かつ確実な実施に向けて、関係行政機関の協力を得つつ運用すること

8 公益通報対応業務従事者が、守秘義務を確実に守りつつ、不安を感じることなく公益通報対応業務に臨めるよう、具体的な業務における留意事項等を定めたガイドラインを整備するとともに、必要な研修、教育を十分に行うこと

9 公益通報対応業務従事者の守秘義務が解除される正当な理由については、通報者が安心して通報できるよう、詳細に解釈を明らかにするほか、事業者がとるべき措置に関して、考え方を明らかにすること。また、通報対象事実の調査および、その是正に必要な措置等を講ずる過程における過失または周辺状況からの推測等により、通報者の氏名等が不要に漏らされることがないよう、調査およびその是正に必要な措置等の手法に関する好事例の収集、周知等を行い、適切な公益通報対応体制の整備の促進に努めること

10 行政機関における公益通報対応体制の整備義務の履行が徹底されるよう、小規模な地方公共団体における公益通報対応体制の在り方について検討を行い、必要な支援策を講ずること

11 通報しようとする者が、事前に相談する場が必要であることから、民間における通報相談を受け付ける窓口のさらなる充実に関し、 日本弁護士連合会等に協力を要請するとともに、国および地方の行政機関における通報相談の受付窓口の整備、充実に努めること

12 消費者庁に開設する一元的窓口において、通報者からの相談対応の一層の充実を図るとともに、通報者への十分な支援を行うこと。また、行政機関が不適切な通報対応を行ってきた事例が生じたことに鑑み、通報者から行政機関における通報対応に関する意見、苦情を受けた際は、適切な対応を求めること

13 本法附則第5条に基づく検討にあたっては、行政処分等を含む不利益取扱いに対する行政措置、刑事罰の導入、立証責任の緩和、退職者の期間制限の在り方、通報対象事実の範囲、取引先等事業者による通報、証拠資料の収集、持ち出し行為に対する不利益取扱い等について、諸外国における公益通報者保護に関する法制度の内容および運用の実態を踏まえつつ検討を加え、その結果に基づいて、必要な措置を講ずること

以上

改正法施行3年後の見直しに向けて、多くの課題があることが附帯決議案から浮かび上がります。いよいよ施行から14年ぶりの改正が目前となりました。とりわけ従業員300名超の事業者の皆様、法律の性格が大きく変わりますので(2年の猶予はありますが)改正法案にはぜひ注目していただきたいと思います。

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コメント

山口先生、13項に渡る付帯決議案のご紹介、ありがとうございます。

5項、業界団体による共同窓口について、大企業に関しては経団連、大企業経営陣に関しては経済同友会が適切であると思い、通報を継続しています。

また青字ではないですが4項、「内閣総理大臣が定める指針」について大企業経営陣、経団連会長に重く受け止めてほしいので、首相官邸や安倍晋三内閣総理大臣にも要請を続けます。

本日の消費者問題委員会、開会が遅れましたが、14時くらいまで拝見し、先日の参考人質疑では拝師弁護士も登場したとの話もありました。

直属上司、上位上司に「公益通報」し、大企業経営陣、コンプライアンス部門に通報して不利益を受け、政府、関係閣僚、経済団体、当該企業社外取締役と情報共有を続けています。
行政機関をたらい回しされたことも経験していますが、消費者庁に開設する一元窓口への期待は大きく、不正そのものの通報経緯、不利益の経緯をあらためて通報し、公益通報者への報復抑止に繋げていただきたく思います。
「通報経験者の不利益実態調査」では消費者制度課と面談しました。

衛藤晟一消費者担当大臣にも内閣府または消費者庁大臣室に要望書提出しようと思います。
消費者相経験者、森まさこ法務大臣、河野太郎防衛大臣にも閣内連携をお願いします。

投稿: 試行錯誤者 | 2020年6月 6日 (土) 01時06分

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