新型コロナ危機下の企業法務部門(超おススメの新刊書でございます)
先週金曜日(6月19日)に、法務、コンプライアンス部門の皆様の研究会で(リモートですが)講演をさせていただきまして、意見交換の際に、コロナ禍における法務担当者の苦悩を少しばかり拝聴させていただきました。
そのようなきっかけから、(法務担当者の方々は今頃どうやって仕事をしているのだろう、何を考えながら業務を遂行しているのだろう)と思いながら、本書を購入いたしました(大阪地裁の書店では先週から販売していたようです)。
読み始めると途中で止まらなくなりまして(笑)、2日で完読みしてしまいました。本日(6月24日)の日経朝刊一面でも広告が掲載されていましたが、法務やCSRのご担当者だけでなく、管理部門にお勤めの方にも超おススメの一冊であります。
新型コロナ 危機下の企業法務部門-経営のパートナー&ガーディアン。法務部門は現危機下で何をすべきか。(経営法友会編 商事法務 2,700円税別)
Amazonの解説では「新型コロナ危機に直面する企業法務部門は、今どのように、悩み行動しているだろうか。また、将来にわたって何を模索していくべきだろうか。1,300社が集う企業法務団体である経営法友会、その会員企業の英知を結集」と紹介されています。
「想像力を働かせよう」「法務のあるべき姿は」「仕事の質を高めよう」「機関運営を深化させよう」「みんなで語ろう」の5章に分かれておりますが、それぞれの章で大手企業にお勤めの法務グループの方々のご論稿が詰まっております(最終章「みんなで語ろう」はリモート形式による座談会となっております)。
執筆されたのは、皆様5月上旬ですが、もはやWithコロナ(新常態)を意識したうえでのご執筆ということで、在宅勤務、取引法務、新規事業のリスク管理、押印業務、リーガルテックの活用、社会貢献、情報収集や発信など、本格的に法務部門が取り組まねばならない「有事における覚悟」のようなものが感じられます。いや、どのご論稿を読んでもたいへん勉強になりましたし、これからの仕事の参考にさせていただきます。
先日も、某社株主総会の終了後、私は
「なんでこんなにたくさんの書類に(多くの社外役員が交代で)印鑑を押さなきゃいけないのかな?決議から2週間以内に登記申請って、社外の皆さんのとこまで今からハンコもらいに行くの?クラウドサインとかじゃダメなのかな?押印の機能ごとに、これから御社も電子署名や電子サインの活用を本格的に検討してみてはどう?」
などと、したり顔で法務担当者に提案をしておりました。
しかし、本書の(株)乃村工藝社法務部の方のご論稿「新型コロナ対策を契機とした業務の棚卸と文書管理のススメ」を拝読して、いたく反省し、かなり恥ずかしい気分になりました。
契約書を廃して「電子契約」を採用する、ということは、資源や技術の問題をクリアできたとしても、これだけ社内の手続きを改変し、さらに社内・社外の根回しがなければ実現しない、という現実です。果たして(電子契約制度の導入するために)これだけの企業実務慣行を変えることが法務部門にできるか…といわれると、かなりしんどいだろうな、それだったら多少の面倒があっても印鑑を押すほうがマシだよな、と思います(ホント、この論稿は多くの上場会社の社長さんとか、規制改革に関係する経産省や法務省の官僚の皆様にぜひ読んでほしいなぁ)。ちなみに最近「押印は不要」といった政府見解が話題になっていますが、私的には民法92条との関係(業界取引慣行における押印の慣習と確定的意思の認定)でも論点があるように思うのですが。。。
最近は経産省「法務機能の在り方研究会報告書」などがリリースされたこともあり、本書副題にもあるように「(法務部門に関する)経営のパートナーとしての役割とガーディアンとしての役割」が指摘されます。たしかに目指すべき方向はそのとおりだとは思うのですが、その前に立ちはだかる「法務の壁」があり、その「壁の正体」は一体どんなものなのか。本書を読み、コロナウイルス感染症対策という全社的な危機に直面する中で、その「壁の正体」が一気に表面化したような気がいたします。これを吐露する大手企業の法務部門の現場報告、ご意見の数々は、我々のような法務部門を支援する者には、まさに経営のパートナー&ガーディアンとして企業価値向上に寄与するための手がかりが見えてくるように感じました。
おそらくご興味の湧くところから読み進めていけるものと思います。ぜひぜひお読みいただきたい一冊であります。
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