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2020年8月 5日 (水)

東芝の株主総会決議結果の開示-国広エフィシモは大健闘と考える

(8月5日 夜 追記あり)

ドラッグストアの店頭から「うがい薬」が消えておりますが、こういった場合、塩野義製薬や明治ホールディングスから、なんらかの「コロナへの効用」に関するコメントは出されるのでしょうか?大阪府知事からは生産体制にも踏み込んだ発言がありましたので、かなりむずかしい対応を迫られているようにも思えますが。。。(以下本題)

本日(8月4日)、7月末に開催された東芝の定時株主総会における議案の決議結果(議決権行使結果)が開示されました(東芝8月4日付け臨時報告書はこちらです)。大株主であるエフィシモ側の取締役候補者3名については、賛成率が43%、42%、38%です。一方で社長さんは58%。いや、これは驚きました。国広弁護士がアドバイザーについたエフィシモは大健闘といえそうです。定時株主総会が1カ月延期されたことも、本件では微妙に影響しているのかもしれません。

先日のブログでは、「まあ、この結果(会社側上程議案がすべて可決)はおおよそ予想していた通りでした」と書きましたが、こんな結果になるのがわかっていたら偉そうに書かなければよかった(国広さん、候補者の皆様、たいへん失礼いたしました)。なんといってもISSもグラスルイスも会社側提案に賛成推奨をしておりましたので「うーーん、かなり厳しいかな」と思っておりました。

もちろん、この議決権行使結果について会社側は(遅くとも総会前日までには)わかっていたと思いますが、これ結構東芝側にとっては難題ですよね。ここからはまた勝手な野次馬的意見ですが、エフィシモの株主提案はすべて議決権の4割程度の賛成を得ていますので、来年もまた実質的に同様の株主提案が出た場合には過半数の賛成が得られる可能性が出てきました。東芝グループ全体として、コンプライアンス経営への取り組みを「目に見える形」で運用しなければ、そもそも「両立する議案」だけに株主提案に賛成票が上積みされるかもしれません。

私は東芝の株主構成を把握しているわけではありませんが、たとえば3%でも5%でも保有している大株主がいれば「俺たちの要求を呑まないと、来期は社長を信認せず、また株主提案に賛成するぞ」といった要求が出てくるかもしれません(まさに漁夫の利)。もちろん利益供与にあたるような要求はできませんが、「株主共同利益のため」として、様々な大株主からの要求が会社側に届くのかもしれません。株主総会の機能は「会社意思決定機能」だけでなく「経営に対する定量的な評価機能」もありますが、この結果の開示は、これからの東芝と株主との「建設的な対話」を促すものとして大きな意味がありそうです。

もちろん国広さんは本気で株主提案を通すつもりで総会に乗り込んだと思いますので、「大健闘では意味がない」とおっしゃるかもしれませんが、上記のとおり「株主との建設的な対話を今後も促進する」という意味では、たしかに国広エフィシモは株主提案を行ったことで、(誰が得をするのか・・は別として)実質的な目的は達成しているのかもしれませんね。

(追記)なお、当エントリーに対して、ある方から以下のようなコメントをいただきました。たいへん有益なものと思い、本文中に追記させていただきます。

東芝株主総会 ではエフィシモが取締役候補として株主提案した代表の今井氏が43.43%の賛成を得たことについて、先生のブログ「東芝の株主総会決議結果の開示」、私どもも注目しています。ご存知のように、この提案については外為法の事前審議(安全保障の観点から、1%以上保有する株主が密接な関係者を取締役として提案する場合として)の対象とされました。エフィシモのプレス・リリースでは持ち株比率を10%未満とすることで事前審査は承認されたとあります。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000052455.html
今回の賛成率を見る限り関東財務局が承認の条件とした持ち株比率を10%に下げる意味の不可解さが残るだけであり、特に海外投資家の納得は得られないと思います。外為法の不透明性についての財務省、経産省の説明責任が問われます。東芝の外人持ち株比率は70%以上です。同社が苦境にあったときにゴールドマンが幹事で大量に増資し外人株主が異常に増えました。外為法審査での10%以上(公表はされていませんが)の「基準」がブラック・ジョークに思えます。

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コメント

本論ではないほうの話題にコメントします。

イソジンの製造元であるムンディファーマのサイトに、

「ポビドンヨード(PVP-I)を有効成分とするBETADINE®製品(イソジン®)の 新型コロナウイルスに対する抗ウイルス効果を確認 ― 海外のIn vitro試験において99.99%の抗ウイルス効果を確認 ―」

というページがあります。

https://mundipharma.co.jp/1560

これで不十分でしょうか?

投稿: しがない内部監査員 | 2020年8月 5日 (水) 13時45分

ご無沙汰しております。6月総会及びその後処理が終わり、しばらく燃え尽き症候群でした。来年の6月総会に向けては各所の調整がなされることを祈っています。
さて、東芝の総会の郵送で送られた議決権行使書の信託銀行での取扱のニュースは驚くばかりです。
実務が間に合わないのでそうせざるを得なかったというのはよくわかります。前日の各社の営業時間終了時まで待っていてはその日のうちに集計しきれないのはその通りなのだと思います。
一方で「郵便局と調整の上、本来の配達日前日に議決権行使書を受領」していると認識しているという信託銀行の主張は、日本国内の大都市から大都市であればX-1日の夕方に投函してもX日の朝に通常は配達される普通郵便の実状を考えると、あまりにどうなんだろうと思います。
確実に適法に処理するのであれば、施行規則では議決権行使書の受取期限を前倒しする事も認められているはずなのに…
証券代行が自分達の実務を優先し、委託会社が会社法311条に基づき招集通知に記載された内容を実質的に無視していたという事実は驚愕です。

そもそも上場規則で株主名簿管理人の設置が義務付けられたのは、西武事件が契機でした。信託銀行であればいい加減なことは行わないはずである、という期待の元に設置が義務付けられたのに、その信託銀行がこんな事をしていたとなると、株主名簿管理人制度そのものに疑問符がついてしまいます。

他にも法令・規則よりも「実務」が優先されているケースがあるのではないかと心配になってしまいます。

http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20200918_1.pdf
https://www.smtb.jp/corporate/release/pdf/200918.pdf

投稿: ty | 2020年9月20日 (日) 16時20分

連投ですみません…

これが9月下旬に発表された事にも不信感を覚えます。6月総会の決議取消訴訟が出訴期間がほぼ過ぎるのを待ってから発表したのではないかと邪推してしまいます。

なお、議決権行使実務関係ではこれ以外にもいくつか謎な慣習があり、(ICJを使わない場合)機関投資家は管理信託に対して5営業日前までに議決権行使指図を行う必要があります。
これは名義株主が不統一行使書を3営業日前までに提出する事が義務付けられている事から来ているのですが、管理信託は機関投資家が議決権指図権利を有する場合は、毎回不統一行使書を事前に提出しておけば、機関投資家から管理信託への議決権行使指示の締め切りが5営業日前から2営業日前ぐらいに出来ないのか、と妄想しています。

こうした議決権行使実務の様々な問題は海外でもproxy plumbingとして話題になっているので、日本だけの問題ではないようです。

投稿: ty | 2020年9月20日 (日) 16時39分

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