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2020年11月24日 (火)

独立社外取締役に求められる「人の問題」と「仕組みの問題」への対応

11月21日(土)、第13回日本内部統制研究学会の年次大会がリモート会議で開催されました(参加者は関係者を含めて120名前後だったようです)。午前の自由論題から午後の統一論題討論まで、休憩をはさんで8時間の長丁場でしたが、テーマ「内部統制報告制度導入後10年が経過した実務上の課題」にふさわしい、たいへん有益な学会発表でした。

とりわけ金融庁参事官I氏の「10年のふりかえり」と「今後の検討の可能性」に関する特別講演でのお話は、(もちろんI氏の個人的な見解を述べられたものですが)これからの内部統制制度への取組みを検討するうえではとても参考になるお話しでした。ちなみに英国ではカリリオン社事件、ドイツではワイヤーカード社事件を契機に、いずれもSOX法(米国)や監査品質の向上に関する基準等の研究が進み、法改正が検討されているようです。ただ、結局のところ、どこの国でも大きな会計不祥事が発生しなければ内部統制報告制度への関心も高まらない、というのが現実ではないかと。

上記金融庁参事官の講演を拝聴して痛感しましたが、この10年の市場規制の流れの中で、内部統制とガバナンスの議論の関係をどう整理するか、という問題への回答は、ますます重要になりつつあります。たしかに、年次大会の各発表を拝聴していても、現状の問題を解決するためには、全社的内部統制を問題とすべきなのか、それともコーポレートガバナンスを問題とすべきなのか、明確には詰め切れていない議論がなされていることが垣間見えたように思います。

そのような中で、日本公認会計士協会のT会長が語ったエピソードがなかなか興味深いものでした。T会長が、某上場会社の会計監査人をされていた頃、当該会社に独立社外取締役としてN氏(著名な元経営者の方)がいらっしゃったそうです。監査委員でもあるN氏とは、定期的な監査委員会との報告会で意見交換をしておられたそうですが、T氏が監査上の問題点を当該N氏にお伝えするたびに、「その問題は『人の問題』なのか、それとも『仕組みの問題』なのか、どちらで解決できる問題ですか」と質問されたそうです。大きな組織のトップとして、経営上の責任を担ってこられた方らしいN氏の質問が、当時はとても印象的だったとT会長が語っておられました。

(ここからは私の意見ですが)独立社外取締役として「人の問題」だと認識した場合には、取締役会の監督機能を発揮して経営者の交代、つまりコーポレートガバナンス上の問題として対応する必要があります。いっぽう「仕組みの問題」だと認識した場合には、経営管理の手法、つまり(事業戦略の実行、もしくはリスクマネジメントの実践のための)内部統制の問題として対応する必要があります。

少し前までは、「ガバナンスと内部統制の関係整理」といった話はやや「青臭い」「実務とは遠い」「原理的な」議論ではないか、といった「空気」が日本の上場企業に漂っていましたが、10月20日に再開された金融庁「SSコード、CGコードのフォローアップ会議」の議論の中身などから拝察しますと、真剣に「独立社外取締役に期待される役割」が取り上げられ、もはや「原理的」などとは言っておれない雰囲気になりつつあります。ESG経営が推進されるなかで、数値化することがむずかしい「G」のレベル感を上げるためには、独立社外取締役の役割と期待を明確に打ち出さねばならない風潮が高まっていることは事実です。

先が読めないVUCAの時代、企業の持続可能な生産性を向上させるためには、いかに変化に対応できるかという点が重視されます。その変化への対応は、経営管理の視点から臨むこともあるでしょうし、そもそも人の交代によって臨むこともあるのでしょう。私は独立社外取締役に必要なスキルとして、「人への評価」だけでなく「仕組みへの評価」つまり内部統制の整備・運用に関する基本的な理解も不可欠ではないかと考えています。

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コメント

山口先生の本エントリーを一読させて頂き、特に「日本公認会計士協会のT会長が語ったエピソード」の部分に興味が湧きました。

…「その問題は『人の問題』なのか、それとも『仕組みの問題』なのか、どちらで解決できる問題ですか」と質問された…→海を越えた某大国の大統領選挙での、得票数の少なかった現職大統領が敗北宣言をせず、物議を醸し出している報道と重ねています。
中国の報道官がよく用いる「内政干渉」かどうかはさておき、このままではJAPANの存続さえも危ぶまれる様な報道の日々ですが、「今はコロナウィルス対策で、それどころではない!」と思っている企業関係者の方が多いのではないでしょうか。「猫の目の如く、中長期展望に乏しいGoTo政策が国民を混乱させている」という報道記事は、猫に対して失礼かと思いつつ(苦笑)、公私にわたり、自己防衛する事の重要性を感じています。
現存する人類の殆どが、コロナウィルスという、しつこい病原菌に悩まされています。しかも、その変異を含め、ビジネス展開に多大な影響を及ぼす事など(昨年まで)考えられなかった訳ですから、過去に構築して来た仕組みを継承するのか?それとも思い切って変革するか?という選択肢を求められている昨今、更なる高度な決断力が問われています。

経営陣が部下や取引先にその決断を浸透させる際に、わかり易く(誤解されにくい)説明伝達する事が不可欠です。しかし我々の周辺では、権力を持つ年配者の、時には「?」な表現に出くわす事が少なくありません。
国のコロナウィルス対策専門家会議の部門トップ(70歳代?)が、先日、感染の注意喚起コメント内で「フンドシを締めてかからなくてはいけない時期に来た…」という様な表現を用いていました。(コロナウィルス会議の注意喚起報告に、フンドシって…)60歳手前の私ですら、フンドシなど着けた事もありませんので、100%の理解/実感がわきません。(海外向けプレスリリース時にどんな翻訳をしたのでしょう?)こんな例えでは、若い世代にコロナの怖さ/注意喚起がきちんと伝わらないのも仕方ないなあと…。上層部の者が組織全体に様々な整備・運用類の「トップダウン」をする際、はたしてどこまで、聞き手の理解を考えた表現手法で発信をしているのでしょう。(もちろん、その線引き/レベルはケースバイケースです。)
僭越ながらその見極める眼力の有無が、内部統制報告制度の浸透ひとつ取っても、鍵を握るポイントかと思っています・・・。

(命あっての、私たち人類の諸制度:運用展開かと…)
特効薬はおろかワクチンも、市民レベルでの接種はまだまだ先の様ですので、個人的には、持続可能なオーガニック農法/収穫での大豆と無添加調味料による納豆を食しつつ、医学博士の須見洋行氏が発見した酵素=ナットウキナーゼを含む食品摂取による、(万一:コロナ感染後の後遺症の一つ=血栓を溶かす唯一の食品とのこと…)自然免疫向上/予防効果を期待/フードリスクマネジメント=予防的食生活等で、「怒濤の2020年」を越せれば…と思っています・・・。

投稿: にこらうす | 2020年11月24日 (火) 10時19分

TKです。

先週18日のCGCのフォローアップ会議をYoutubeで視聴しましたが、独立社外取締役について、

①報酬によっては独立社外でも経営者に忖度しがち
②就任期間が長期になるほど経営者に忖度するようになる
③元経営者とか年配者が就任すると、OSが古く環境変化に対応できない
といった負の面の話が出ていて、なるほどと感じました。

裏返せば、独立社外取締役は、
①低報酬か無報酬
②就任期限の短期化
③就任年齢の上限設定

としないと実効性に乏しいということになりますが、
これでは成り手がまずいないでしょうねw

ともあれ、機関投資家や助言会社には受けがいいのでしょうが、独立社外取締役の比率が高ければいいわけではないということを認識する必要があると考えます。

投稿: TK | 2020年11月24日 (火) 18時46分

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