米国の内部告発報奨金制度は会計不正事件以外にも適用される
11月29日の日経朝刊7面に「米国企業の不正 内部告発増える」との見出し記事があり、米国で内部告発による企業不正の摘発が増えていることが報じられています。2019年度は合計183億円の報奨金が告発者に支払われたそうです。
記事では2010年のドッドフランク法制定を機に、報奨金制度が機能しだしたとありますが、報奨金が支払われるのは会計不正事件だけではありません。米国には公益通報者保護の包括法はありませんが、個別法において保護規定が存在します。たとえば連邦自動車安全法にも内部告発奨励制度が定められており、ご承知のとおり2018年にはタカタ社のエアバック欠陥を指摘した同社元社員2名に合計1億2000万円の報奨金が支払われています。
上記記事にもありますが、日本企業でも米国法の適用を受ける問題が存在すれば、日本の社員が米国の規制当局に告発することにより高額の報奨金がもらえる可能性があります。告発によって、タカタ社のように企業の存続が困難になるケースもありますので、このたびの公益通報者保護法の改正法施行(2号通報、3号通報の保護要件が緩和されました)とともに、海外への内部告発リスクにも留意すべきと思われます。
なお、上記記事では触れられていませんが、米国の内部告発報奨制度においても、社内通報を優先させるためのインセンティブは用意されています(社内通報後の内部告発の報奨金は増額されることになっています)。このたびの日本の改正公益通報者保護法も、内部通報と内部告発の「制度間競争」を促進していますので、いずれにしても会社が自浄作用を発揮すべく内部通報制度の整備運用に熱心であればあるほど、会社が救われる制度だと考えるべきでしょう。
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コメント
ジュリスト12月号の表紙。
筆頭が山本隆司内閣府消費者委員会委員長、止めが高巌内閣府消費者委員会(前)委員長です。
「太陽にほえろ!」で言うと、ボス石原裕次郎さんが山本氏、山さん露口茂さんが高氏です。
中味はこれから熟読しますが、御二方の「公益通報者保護」「企業のガバナンス向上」の情熱は、2018年の内閣府消費者委員会「公益通報者保護専門調査会(山本氏が座長)」のときも、びんびん伝わってきました。
もちろん山口先生の座談会意見に注目していることは言うまでもありません。
2014年に総務省で行政相談した際も「公益通報者の報奨金制度」について話しました。
日本に報奨金制度が無いことはご承知のとおりです。
投稿: 試行錯誤者 | 2020年11月30日 (月) 18時32分
JAPANのコロナウィルス感染予防対策の現状を、アリ地獄的な…という表現をすると、コロナウィルス感染の医療最前線で日々過大な心身苦に陥っている医療従事者の方々に申し訳ない心境ですが、小学生でも正しいマスク着用/励行しているご時世に、大のオトナ(一部ですが)は、グリコの看板の前でキャラクターのポーズを真似てスマホ撮影に戯れる(大阪繁華街を知る人にしか解りにくい例えでスミマセン)感染予防対策の足を引っ張る如くの行為が後をたちません。
禁酒法の時代における、隠れて飲酒をしていた反逆者の如く、感染拡大を助長する様な諸行為をメディアで知ると、最低でも交通違反キップ程度の罰金/法制度でも成立、施行されないと、いよいよ大阪は危ういのでは?と危惧しています。
本来の主旨には逸れるかも知れませんが、特例的法令適用=「公益につながる、社会的損失を回避する為の、治安維持的通報」を展開する事がコロナウィルスの感染からの収束につながる一歩の様に思い始めています。
当初の目的から外れはしますが、「コロナウィルス感染予防的告発/通報」による報奨金を得る仕組みを真剣に検討せざるをえないかも?そして多くの人は、(我が身が)病床から除夜の鐘を感じる年末を迎えたくない…と思っているのではないでしょうか・・・。
投稿: にこらうす | 2020年12月 1日 (火) 17時30分