そういえば12月22日は重要な最高裁判決(エフオーアイ損害賠償請求事件上告審判決)が出る日です。
年の瀬ではありますが、12月22日はエフオーアイ損害賠償請求事件に関する最高裁判決が予定されています。ご存じのとおり、同社は2009年11月の東証マザーズ上場後に粉飾決算が発覚。売上高の97%が架空で、東証は10年6月に同社を上場廃止としました(当時の同社社長らは金商法違反罪で実刑判決が確定)。
上場廃止となった同社の粉飾決算で損失を受けたとして、株主らが上場時の主幹事だったみずほ証券や日本取引所に(金融商品取引法に基づいて)損害賠償を求めた訴訟の経緯については本ブログでも過去に取り上げておりました。一審・東京地裁は、粉飾を示唆する投書がみずほ証券に届いていたことなどから「主幹事としての注意を尽くしていたとは認めがたい」として、同証券の賠償責任を認定していましたが、二審・東京高裁は、同証券がエフオーアイの販売実績等を調査していたことで注意義務を尽くした、として、みずほ証券勝訴の判断となりました。
新聞でも報じられているとおり、最高裁第3小法廷(宮崎裕子裁判長)は今年11月17日、当事者の意見を聞く弁論を開き、判決は12月22日に言い渡される予定です。最高裁は結論を変更する際には弁論を開きますので、賠償責任を否定した二審・東京高裁判決を見直す可能性がありますね(破棄自判もしくは破棄差戻し)。企業法務において、たいへん注目される判決です。
公益通報者保護法が改正され、2号通報(行政機関への通報)、3号通報(不正を抑止する事実上の権限のある第三者への通報)の要件が緩和されたため、今後は同様の内部告発は増えることが予想されますが、このような公益通報を受領した組織がどのような対応に出なければ(金商法上の)注意義務違反となるのか、考察するためのヒントについて(たとえ事例判決であったとしても)最高裁の判断の中で触れてほしいですね。年末ではありますが、早めに最高裁のHPにて判決全文が公開されることを希望しております。
今年、上場前後から不適切な会計処理を行っていた会社の第三者委員会の仕事を経験しましたが、監査法人に対して業績を良く見せることと、主幹事証券会社に業績を良く見せることとでは、粉飾の質が違うものであることを理解いたしました。そのあたりは、また来年にでも(守秘義務に反しない範囲で)ブログで解説したいと思います。
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コメント
(何を根拠に、「人生100歳時代」という風潮が広がっているのか不可解ですが)私は今までの長い人生で「粉飾会計」に触れた事もありませんし、今後もそんな場面に出くわしたとしたら、頑に異を唱える気持ちはあれど…新規上場に立ち会う等、人生にそうそう在る訳でもなく、更にコロナ騒動という特殊背景では、粉飾と言う誘惑に揺れる心境〜手を染める経緯、実行=違法行為に走る状況に自分自身が追い込まれたら…正直:非常に悩むかも…です。
しかし世に多発し、今後もコロナ騒動を背景に来年以降増加する可能性が高まっているのなら、例えば「偽札作り」の様な、「割に合わない犯罪」=重罰を課する度合いを(もう一段階)高める法改正が必要と思っています。それが抑止力になれば、周囲からの強権圧力/誘惑に負けない抵抗力が発揮出来るかも知れません。
巷では、ようやく、特措法改正の気運が芽生えたばかり…、立法に携わる関係者/議員の世界にも、「JAPAN政権は老老政権」と皮肉が伝わってくる中での、「8人会食」騒動などの政治家起因の感染危惧〜議員及び周辺関係者への濃厚接触波紋での、立法作業に支障が出ないかと、懸念します。杉氏や、みの氏…そして別の会合参加の(TV出演多い)田崎氏しかり。声高になり易く飛沫度の高い環境=テレビ各局スタジオ等でのクラスターが出ません様、「報道1930」番組愛好者の一人としても願いつつ…です。
先日も、前法務大臣絡みの裁判も延期になる等、法曹界の感染拡大も無視出来ない昨今、金融商品取引法、公益通報者保護法等に反する違法行為への刑罰展開や、防止展開されている現場こそ、今一度、関係者の行動範囲の再確認をしつつの感染予防策を…僭越/恐縮です。(年末年始の首都圏等公務員諸氏:地方実家等への帰省起因も「複合感染」になる?)
以前の投稿にも記した(「ウィルスは、人間より賢い」という)感染症専門家の記述/評論を思い起こしつつ、来年の仕事始め=首相の伊勢神宮参拝の頃には、一体どれだけの社会不安が広がっているのか?と、「2週間後」の月曜日を想像…「令和版:(多面的な意味での)ブラックマンデー」とならない事を祈りつつ・・・です。
投稿: にこらうす | 2020年12月21日 (月) 18時00分
みずほ証券が逆転敗訴で破棄差し戻し(賠償額の算定)という判決が出ました。
3号通報を受ける方も大変ですね
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG217IT0R21C20A2000000
投稿: Kazu | 2020年12月22日 (火) 15時57分
コメントありがとうございます。
やはり高裁判決が見直されましたね。これは企業法務や企業会計において、いろんな影響が出るでしょうね。まだ判決が読めていませんが、読めるようになりましたら円とr-でご紹介したいと思います。
投稿: toshi | 2020年12月22日 (火) 16時47分
kazuさんが引用しておられる日経の記事(更新版)を読むと、やはり内部告発の投書が主幹事に届いたことが、主幹事証券会社の注意義務の判断にかなり影響を及ぼしているようですね。これは極めて興味深いです。
投稿: toshi | 2020年12月22日 (火) 16時55分