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2020年12月15日 (火)

株主総会の改革と「機関投資家の費用対効果」

週刊東洋経済の最新号(2020年12月19日号)特集記事「議決権不正集計で露呈-投資家軽視の株主総会にNO」を興味深く読みました。今年の企業不祥事ベスト10に入る(であろう)三井住友信託、みずほ信託さんの「議決権行使書カウント不正事件」を端緒として、「日本の株主総会には投資家軽視というべき問題がある」ということで、4名の有識者の方々の意見をもとに総会実務を検証する、というもの。

いずれも著名なアクティビストファンドのマネジャー、海外機関投資家のスチュワードシップ責任者、著名企業法務弁護士、東大教授の皆様のご意見は東洋経済紙面でお読みいただくとして、なるほど・・・と、個人的には実務面で勉強になる内容でした。「株主総会の簡素化」「総会手続きの電子化」「法律による株主の権限強化」「株主総会の機能の変遷」といったところに光を当てなければ「企業統治改革の実質化」も図られない、という点については納得するところであります。

ただ、私の素朴な疑問ですが、国内外の機関投資家も「正義の味方」ではないはずです。ESGに関連する情報開示が進んでも、株主の権限行使が強化されても、エンゲージメントの機会が増えても、さらには総会決議の政策形成機能が発揮されたとしても、(機関投資家として)それらを十分に研究して議決権を行使するために要する経費よりも、議決権行使の結果から得られるメリットのほうが大きくなければ「機関投資家に期待される役割」は演じられないのではないかと。いままで、そこの議論がほとんどされてこなかったように思うのです。

議決権行使助言会社の推奨意見が重宝されることも、ESG投資の非財務情報を(他者比較したり、統計的に分析できるように)データ化したり財務情報化することも、機関投資家の「費用対効果」に見合うからではないでしょうか。アクティビストファンドが会社関係者と面談する場面をみていても、単純に議決権行使のためだけでなく、ガバナンスに関する情報を詳細に入手して、データ化したうえで「情報を商品化する」ためではないかと推察いたします。

ということで、大株主である機関投資家にとって「費用に見合う効果がある」ことが明確にならないかぎり、もしくはその「費用」が国策に基づくインフラ整備によってきわめて低廉にならないかぎり、株主総会の改革はなかなか進まないような気がします。

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コメント

山口先生の素朴な疑問『国内外の機関投資家も「正義の味方」ではないはずです。』===ごもっともと、私も思います。
あらためて、ふと感じるのは、機関投資家の「正義の味方」スキルの低下を見て見ぬフリをするほど、今の「東洋の経済大国」に余裕はあるのでしょうか?…です。
以前のエントリー/コメントに、(甚大な不祥事を起こした)第一生命社に機関投資家の資格はあるのか?と提起しましたが、機関投資家を正義の味方にするもしないも、エンドユーザーの行動に尽きると論じるのは極端でしょうか。
(先日また、大量の処分者を発表した日本郵政なのに、多くの人は年賀状を買い求めるし、年賀状販促告知テレビの扱いはおそらく「数年前のクリスマスに自殺者を出した電通社」や博報堂社等…)
株主総会の改革を進める柱の一つとして、地道な一歩一歩かも知れませんが、エンドユーザー/我々の「更なる行動変容」の積み重ねが不可欠かつ緊急要素では…と。
欧米でよく見かける、殺気ばった不買運動等に倣えと申す訳ではございませんが、いつまでたっても、国内での不祥事と非効率な「費用対効果対応」による経済損失に歯止めがかからなく、正当かつ誠実な労力が報われなければ、「日出ずる」どころか、「凋落カウントダウン」に進む一方かと不安視しています。

JAPANの貨幣の象徴も、来年(?)には渋沢栄一氏に紙面が代わるとのこと。かつての偉人は、現状をどんな思いであの世から眺めているでしょう?。
コロナ騒動が拡大の一途なのに、購買喚起のツール:民放/TVコマーシャルは相変わらず茶化した仕上げが大半だと、在宅勤務が増えた事で、自社のテレビコマーシャルが、いかに陳腐なメッセージ放映を大量発信しているかを知った上場企業の社員も多い筈。各局:各スタジオで熱弁を振るう著名識者の労も、一個の無神経なコマーシャルで、視聴者の折角の真剣な学びの芽もしぼんでしまう弊害に、出演者各氏は気付いておられないのかも?。(コロナ感染注意喚起の政府公報も、皆無に等しい発信?)
(現金/紙幣使用が減り)電子決済が増えたものの、お金を払う=費用対効果を考える機会を軽視せず、認識を少しでも高めれば、年の瀬の買物類や、年末年始のテレビ放映にみる、JAPANの現状がどんなものか…。それを冷静に考えつつ来年を想う…(自身も含め)投資家の立場の方々は、再考の時期に来ているのではないでしょうか・・・。

投稿: にこらうす | 2020年12月15日 (火) 09時56分

企業が選ぶ弁護士 危機管理部門 7位にランクイン 誠におめでとうございます!

投稿: コンプライ堂 | 2020年12月16日 (水) 10時48分

山口先生、危機管理に対する評価、おめでとうございます。
「正義の味方」が現れるのを待つより行動あるのみですね。

投稿: 試行錯誤者 | 2020年12月16日 (水) 13時39分

山口先生、日経弁護士ランキング危機管理部門ランキング入り、おめでとうございます。今年はお世話にならずにすみましたが、また来年もなにかありましたらご相談に乗ってくださいませ

投稿: たけむら | 2020年12月16日 (水) 17時13分

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