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2021年1月20日 (水)

会社法制見直しと「公益資本主義vs株主資本主義」(日経ビジネスより)

日経ビジネスの最新号(2021年1月18日)スペシャルリポート「世界で始まった新たな資本主義への模索 株主偏重、転換なるか-進まぬ会社法制見直し」を読みました。フリードマンの新自由主義思想に後押しされた株主資本主義の考え方が、2020年1月のダボス会議における「ステークホルダー資本主義」への移行提言や19年8月のビジネスラウンドテーブルにおける「中長期的な企業価値向上に向けた取組み宣言」あたりから見直しの必要性が指摘され、「公益資本主義」という言葉もよく耳にするようになりました。原丈二氏の著書「公益資本主義」も、かつて拝読したことがあります。

7101mbbkwvl 2020年9月、法務省に「危機管理会社法制会議」が設置され、第1回の会議が開催されましたが、その後、同会議は法務大臣の交代によって立ち消えになったそうです。理由は「まず自民党内でしっかり議論してからの話。省内でいきなり議論すべきことではない」とのことで、会議の設置プロセスに問題があり白紙となった模様。たしかに法務省HPで「危機管理会社法制」で検索しても何も出てきませんし、旬刊商事法務の「トピックス」(9月初旬から中旬にかけてのイベント情報)を読んでも、この会議のことは一切書かれていません(森元大臣のツイッターなどに残っている会議の写真を拝見しますと、関経連会長はじめ著名な企業実務家や学者の方が委員として入っておられるようですが)。

株主以外のステークホルダーへの利益保護について、ソフトローではなく(会社法のような)ハードローの改正で対応しよう、という流れになりますと、(昭和49年商法改正「企業の社会的責任条項を盛り込むことの是非」に関する大論争を持ち出すまでもなく)さすがに会社法の法的性格に関わる大問題であり、「守旧派」と呼ばれる人でなくても大論争になると思います。

ただ、少子高齢化が進む日本社会において、アフターコロナのビジネス社会を展望したとき、山口周さんの新刊「ビジネスの未来」(59頁)で語られているように、「『成長、成長』と叫ぶこと自体が、もはや信仰の世界だ」と指摘する声も大きくなっています。株式会社制度(正確には有限責任者の存在する共同事業制度)ができて400年が経過しましたが、アダムスミスが「国富論」において株主主権主義を強く訴えたのはオランダやイギリス政府の弾圧(覇権主義)から会社制度を守るためでした。しかし、現代は株式会社が米国や中国よりも強い実質的支配権を持つほどになりました。ここに至り、会社存続の目的が改めて議論される、という流れもおそらく今後は強くなるのではないか、と感じております。

ところで、上記写真でご紹介している本は2021年1月新刊の「アクティビスト-取締役会の野蛮な侵入者」(オーウェン・ウォーカー著 日本経済新聞出版)です。私のようなネイティブの弁護士でも(日本の証券会社さんを通じて)海外の機関投資家のご相談に乗ることが増えてきたので、仕事にも役に立つと思い、さっそく読了しました。2010年ころからのアクティビストと呼ばれる投資家が、ここまでの地位を築くに至った様子が、イベントを中心に克明に描かれています(イベント後、関係会社がどうなったのか、という顛末も末尾にまとめてあります)。

そして最終章では(ネタバレで恐縮ですが)欧州各国では複雑な規制による企業防衛システムで会社が保護されていて「うま味」がないけれども、日本はアベノミクスによって狙いやすい国になり、さらに内部留保をしこたまため込んでいる企業も多いので、アジアでは最適の的(まと)であることが紹介されています。もし、会社法が国策によって改正される方向性が既定路線になってしまったのであれば、外為法の改正といった手法のみでなく、「ステークホルダー資本主義」なる考え方で会社法制の見直しが検討される、ということも可能性としてはありそうな気がしております。

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2021年1月19日 (火)

電子署名や電子スタンプ-本当に業務の効率性を向上させるのか

今朝(1月18日)の日経朝刊「迫真」では「脱ハンコに挑む(1)『世界企業に押印は不要』」との見出しで、日立やCNSの電子署名や電子スタンプが業務の効率性を飛躍的に向上させている状況が紹介されていました。社員による「ほんの少しの勇気」が社内を変える・・・。たしかに在宅勤務制度を導入する会社で「わざわざ押印のために出社する」「内部統制ルールの形式を整えるために押印をお願いする」ということが業務の効率性を阻害してしまう、というのであれば、電子署名、電子スタンプの活用は多くの企業でも検討されるべきだと思います。

ただし、ひとつ素朴な疑問が湧くのは、脱ハンコが浸透すると、決裁者としては先に誰が、どの範囲で承認したのか「見える化」されたシステムになるのでしょうか(すいません、実務がよくわかっていないので愚問かもしれませんが・・・)?たとえば根回し文化(「もう社長は先に承認しているの?」と質問する、根回しによって「〇〇部長、もう専務の承認はとってありますので」)が浸透している中で、誰が決裁したのか確認できない中で、各決裁権限者が自分の責任で承認ができるのでしょうか。

通常は社長が最後に決裁印を押すのですが、ときどき「社長案件」「至急案件」として先に社長印が押されるケースもありますね。そういった案件について「この案件は特別案件だなあ」と、トップ以外の役職員が忖度することはできるのでしょうか?また、正規の決裁権限者のリスクアプローチにより、案件によっては普通に「代印」が活用されることもありますが、そういった代印制度は一切許されず、すべて内部統制ルールに従った内容確認が必要になるのでしょうか。

さらに、決裁印が書面上ズラッと並ぶというのは、なにか事故が発生した際、もしくは不祥事が発覚した際、「私の責任ではありません。これは全体責任です」と言い逃れができる口実となり、そのことが迅速な意思決定を(巧妙に)担保しています。日経の上記記事でも示されているとおり、電子署名や電子スタンプによって「誰がどの範囲で責任を負う」といったことが明確になるのであれば、この「なんとなくみんなで責任を負う」という口実はなくなってしまうのでしょうか。

このあたりの暗黙のルールが修正されなければ、かえって意思決定に時間を要したり、(社長の意思を忖度して)決裁のやり直しが発生したり、上司の内容確認まで時間を要することになって、脱ハンコが業務の効率性を阻害することにならないのでしょうかね?ジョブ制が浸透している企業であれば問題ないと思いますが、メンバーシップ制が中心の企業組織においては、順番に押された印鑑が物語る「暗黙の意思決定システム」がむしろ業務の効率性を高めているところもあるような気がしております。

昨年頃から、私もクライアントとの間で業務委託契約書を締結する際は「電子署名」を活用することが多くなりましたので、とりわけ昨今の「対面が憚られる」ような状況では「優れモノ」だと認識しております。「契約書」をきれいに作るためではなく、「取引」を確実に執行するためのツールと考えれば、電子署名も電子スタンプも積極的に活用すべきと考えます。

ただ、これまで日本企業で使われていた決裁印の効用というものは、結構目に見えないところの労務慣行に支えられながら業務の効率性を高めてきたところもあるのではないかと。ゆえに、ある企業で業務の効率性を高めることに成功したからといって、他社でも同様に活用できるかどうかは、一度検討の余地があるように思います。

もし「脱ハンコ」を推進するのであれば、内部ルールや取引先との取引慣行を見直すことも大切ですが、その前に「決裁印をたくさん押した書類が有しているわが社の組織慣行の見直し」が先ではないでしょうか。これを言い出すのが難問かもしれません。

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2021年1月18日 (月)

コロナ禍における会計不正事件が発覚するのは3~5年後と考える

1月16日の朝日新聞朝刊7面に「不適切会計 高止まり-昨年JDIなど58社60件」と題する記事が掲載されておりました。コロナ禍においても上場会社の会計不正事件の発覚が高止まりしている、とのことで、監査法人などのチェックが厳しくなっていることも発覚の高止まりの要因であると分析されています。

ただ、記事では会計不正事件は発生してから発覚するまで、どの程度の期間を要するか・・・という点は明らかにされていません。記事で紹介されているJDI事例も、またエフオーアイ事例も、そしてUMCエレクトロニクスの事例も、(調査期間の選定理由にもよりますが)少なくとも発生から4~5年ほど経過した後に発覚しています。

昨年、私が第三者委員会の委員長を務めたハイアス&カンパニーも2015年ころから不適切な会計処理が行われていたことは報告書記載のとおりです。つまり、不適切な会計処理が開始されてから3~5年ほどは(経営者が認識しているかどうかは別として)投資家は「過去の決算数値」についても、また「将来の会計不正リスク」についても騙され続けている、ということです。赤字なのに黒字決算であったり、公募増資が行われていたり、優良企業として資本提携の対象になっていたりすると、もう目も当てられないことになってしまいます。

ところで、当ブログで何度も申し上げているとおり、コロナ禍の監査は会計監査にせよ監査役監査にせよ、かなり問題を抱えているのが現実です。私が相談を受けているかぎりにおいては、まず監査役監査は平時からの監査自体が手薄になってしまった(監査が不十分であった)企業が多く、また、会計監査においては、経理部や監査役から(財務報告の信頼性の疑義を払しょくするために)必要な情報が会計監査人に届いていない企業も多いようです。そのうえで新型コロナに起因した業績悪化が明確になってきた企業も出てきており、海外子会社だけでなく、国内グループ会社を含めて不適切な会計処理が行われている件数は間違いなく増えているはずです。

不正が発生しても、発生からそれほど時間が経過していなければ社内で(とりあえず適正に)処理できる場合も多いので、会社も株主もそれほど大きな損失を被ることもないでしょう。ただ、さすがに「あやしい」と思っても「会計処理に問題あり」と声を上げることができる環境は築かれていないはずです。上記朝日の記事で紹介されていたUMCエレクトロニクスの事例では、5件もの公益通報(申告および内部通報)によって不正疑惑が定時株主総会の直前に発覚しましたが、役職員の誰一人として総会で「粉飾の疑義」を指摘できる人がいませんでした。

昨年同様、今年も「定時株主総会は6月に開催すること」にこだわる上場会社が多いと思いますが、そうなると、とても監査の不十分性は総会でも有報でも語られませんから、不正会計のリスクはますます高まることになります。今年の6月総会では令和元年改正会社法が施行されますので「社外取締役が期待された職務を果たしたのであれば、その内容」を事業報告に記載することになりますが、ホント、大丈夫でしょうかね(^^;?

また、架空循環取引における取引相手の破たん(相手方にトラブルが発生すること)や国税による調査、株主からの調査要請などの「不正発覚の端緒」も、おそらく不正開始から数年内に偶発的に発生する可能性が高いと思われます。そうしますと、コロナ禍における会計不正事件は、これから3年~5年ほどで社会的に認知される(会社もしくは第三者から公表される)ことになるのでしょうね。

1月16日の日経朝刊3面記事では「今年の上場見通し 100社規模」と報じられており、相変わらずコロナ禍でもIPO企業の数は高い水準で推移するようです。ただ、3~5年後に上場前からの不正が発覚する、たとえ後悔して不正会計を途中で(コソっと)止めたとしても、過去の不正を東証は許してくれない、ということを前提としますと、これからIPO企業に投資をされる方はガバナンス評価を怠らないことが肝心だと思います。

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2021年1月15日 (金)

当ブログが「ココログ・人気記事ランキング」にて4位になりました(もう今後絶対にありえない)

Blog0223 ココログを開設した2005年5月以来、すでに3180本ほどのエントリーを書き続けてきましたが、当ブログの記事(今週火曜日にアップしたエントリー)が初めてココログ全体4位の閲覧数を記録いたしました(1月15日現在)。初めてお越しになる方もいらっしゃると思いますが、当ブログは企業法務関連のとてもニッチな話題を取り上げているブログです。ちなみに人気ブログランキングでは13位だそうです(同日現在)。

こんなことはこれからも絶対にないと思いますので、記念にココログのランキングページを撮影しておきました(笑)。おもしろいと感じて閲覧された方が多かったのか、おもしろくない思いで閲覧された方が多かったのかはわかりませんが(本当は解析すればすぐわかるのですが・・・)🐱、あまり世間をお騒がせすることを好まない性格なので、またおとなしく更新をいたします。

ただ、多くの方に閲覧いただけることは場末の弁護士ブロガーとしてもたいへん嬉しいことです。これからも引き続き、当ブログをよろしくお願いいたします。

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2021年1月14日 (木)

ソフトバンクvs楽天モバイル・営業秘密侵害事件-双方の主張が食い違うのは当然かも・・

本日(1月13日)の日経朝刊12面では「サイバー攻撃 広がる裏口(上)-『社内は安全』死角を突く」との見出しで、近時の情報セキュリティリスクに対する企業の内部統制(リスク管理手法)の変遷について報じられていました。これまでは外部への防御は厳しく、そして社員(内部)への監視は緩めるという手法をとる企業が多かったのですが、機密情報を盗まれてしまう事例が相次いでいるため、「ゼロトラスト(あらゆる人物や端末を信用せず、データへのアクセスがあるたびに認証するセキュリティ対策)」を前提とした対応をとる企業が増えているそうです。

とはいえ、他社との厳しい競争に打ち勝つため、業務の効率性を(発生確率が低い情報セキュリティリスクのために)犠牲にすることはできず、また技術社員の例外的取り扱いはどうしても必要な場面があります。したがって、記事に登場する大和ハウス工業の執行役員の方がおっしゃるように「火の手はあがるがすぐに消す、というのが現実解」ではないでしょうか。私の日ごろの有事対応の経験からみても、もはや攻撃から機密情報を完全に守ることは不可能であり、むしろ侵入されることを前提に、これを早期に発見して破壊する作業にこそ内部統制の資源を重点的に投入すべきと考えます。

さて、情報セキュリティといえば「営業秘密」の管理も重要ですが、すでにご承知のとおり、ソフトバンクの元社員が、同社の通信技術情報を退職日にメール添付の方法で社外に持ち出したことで逮捕されました(※)。また、同社員がすぐに楽天モバイルに中途採用で入社したことから、ソフトバンクは法人としての楽天モバイルを「自社の営業秘密を不正に取得した」として不正競争防止法違反に基づいて民事提訴する方針であることを表明しました(損害賠償請求と営業秘密の不正使用の差止請求)。そういえば昨年10月、エディオンと上新電機との間における営業秘密侵害に基づく損害賠償等請求事件の一審判決が出ましたね(エディオン側が一部勝訴、刑事事件では上新電機は不起訴処分)。

※・・・本日のニュースによれば、当該実行者は、実際には退職日まで約30回にわたり、合計170のファイルを抜き出していたそうです。今後動機の解明が待たれますが、退職から就職までのタイムラグが存在しない中で、かなり大胆な犯行のようです。

営業秘密侵害事件の法律的な解説はご専門の方々にお任せするとして、(コンプライアンス経営の視点から)私は先のサイバー攻撃の課題と同様、どんなに頑張っても重要な営業秘密の漏えいは防げないだろうと考えております。もちろん侵害事件の裁判で重要とされる「秘密管理性」の要件を満たすためにも、事前の予防は必要です。ただ、働き方改革が進むなかで、どんなに秘密保持誓約の合意をしていたとしても、またどんなに不正行為の視認性を高めていたとしても盗む人は盗みます(笑)。したがって、営業秘密を侵害された場合、もしくは不幸にして秘密を取得してしまった場合の事後対応にこそ関心を向ける(資源を重点的に投下する)必要があろうかと。(※)

※・・・もちろん、予防のための内部統制を徹底することで営業秘密の漏えいを防止する対策もあります。たとえば技術系のキーマンが存在するのであれば、そのキーマンだけを徹底してマークする(普段から社内メール等をチェックしておく)、当該キーマンが転職するということであればガーデン・リーブによって強制的に重要情報から隔離する、といったところでしょうか。しかし、これらの対策は副作用を伴いますので、会社としても相当の覚悟が必要です。

ところで、営業秘密の管理ミスや不当な取得行為が企業不祥事として登場する例はあまり見受けられません。裁判例も少なく、先のエディオンの例、ソフトバンクの例などは本当に「氷山の一角」であり、ほとんどの事例は泣き寝入りか水面下での解決となり公開されない、というのが実態だからです。営業秘密を取得した(と思われる)法人にも刑事罰が科されますが、これまで一度も適用されたこともありません(上記の上新電機も不起訴処分)。「タダ乗り」という競争上の不正を許さず、誠実な企業の営業秘密を保護するために、国の規制を強化したり、企業行動指針を策定することも考えられますが、あまり行為規範としては実効性がないような気もします。むしろ民民訴訟を活性化させることで、事後対応次第では企業のレピュテーションリスクが高まるという事態を生じさせるほうが営業秘密管理に向けてのインセンティブになりうるように思います(あくまでも私の個人的な意見ですが)。

ここ数年、新日鉄住金(当時)とボスコの例、日本ペイントと菊水化学の例などをみても、日本企業の「オープン&クローズ戦略」が推奨される中で、営業秘密の保護の社会的要請は高まっているように感じています。そして今後は(営業秘密の適正管理、不正取得防止のために)「民民裁判」を活用する風潮が広がることは十分考えられます。営業秘密を適切に守るためにも、また、不当に他社の秘密を取得しないようにするためにも、裁判手続きを活性化させることで関係企業の内部統制の強化を図る、という考え方です(※)。

※・・・たとえば平成27年の不正競争防止法改正によって、生産技術等の不正使用についての立証責任の軽減措置が導入され、同年1月の営業秘密管理指針の全面改訂により、「秘密管理性」の解釈が緩やかになされるように(要件該当性が認められやすくなるように)指針内容が変更されました。いずれも当事者が裁判を提起しやすくすることが狙いです。

また、不正行為の実行者が逮捕される等によって事件が表面化した場合、秘密が漏えいした企業については秘密管理上の問題が指摘され、一方で秘密の取得が疑われる企業については他社秘密の不正入手防止に関する問題が指摘され、どちらの法人も役員の内部統制構築義務(善管注意義務)違反による損害賠償責任が問われるおそれがあります。したがって将来のリーガルリスクを考えた場合、双方とも最初からミスを認めるはずはなく、(株主利益の最大化のために双方の取締役は全力を尽くしているわけですから)法人としてのコメントも正反対になるのは当然ではないかと思います。

カプコンのように、重要な営業秘密を盗まれて身代金を要求され、これを断固拒否するや実行犯から情報公開をちらつかせて脅される、といった悪質な事例も出ていますので、営業秘密保護のためには海外当局とのネットワークも必要かもしれません。また、刑事事件の威嚇をもって社員に営業秘密侵害の重大性を認識してもらうことも不可欠です。

ただ、特許もとらない、技術公開もしない、しっかり情報は社内で守るという戦略を第一に考えるのであれば、今後は営業秘密を日本としてどう守っていくべきか、官民で真剣に検討すべきであり、ソフトバンク・楽天モバイル事例のように、司法手続きの活用を推奨して積極的に当事者に争わせて、その裁判例の集積のなかで(判決内容だけでなく、当事者のレピュテーションリスクなども考慮しながら)ベストプラクティスを見つけることもコンプライアンス経営の実現という視点からの現実解ではないかと考えるところです。

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2021年1月12日 (火)

京セラ・サンプル偽装事件の公表-忖度しない若手社員の存在

クラウドサービス等で業績好調なサイボウズが、「私が当社の次期取締役としてふさわしい」と自薦してきた新卒1年目社員や現社長を含む計17人の役職員を、次期取締役最終候補者に選出したことが話題になっています。人から推薦されるのを待つ人間よりも、自分から「私がふさわしい」と自薦する人間のほうが取締役としての能力を発揮できる、というのが理由だそうです。新しいコーポレートガバナンスへの挑戦として

選任基準につきましても、ビジネスの経験ではなく、サイボウズの理想とする風土である「理想への共感」「公明正大」「多様な個性を重視」「自立と議論」を理解し、「理想の番人」として実行していける者を公募する

というもので、大真面目に(株主からの承認を条件に)取締役を選任するそうです。外からみると、「ひとつの話題提供」の意味が強いようにも思えましたが、社長以外の現取締役は退任する(立候補しない)、ということなので、本当に新たなガバナンスへの挑戦のようです。たしか機関投資家が求める「ダイバーシティ」には「ボード構成員の広い年齢構成」というのも含まれていましたので、これも一つの考え方なのかもしれません。また会社法に反しない範囲で、取締役の役割を自社なりに定義する、というのも斬新です。

さて、今年初の「不正発覚→特別調査委員会の設置」のリリースは、なんと京セラでしたね。京セラ社HPリリースによると、電機用樹脂ボード等6製品について、米国の第三者安全機関の認証を取得するにあたり、不適切な対応があった、とのこと。実際とは異なるサンプルを提出して認証を受けており、その認証を取得した製品の販売先は約160社に及ぶそうです。

上記内容は京セラ自身が開示しているところですが、各社報道をまとめますと、不正は約35年間続いていた(1986年ころから続いていた可能性あり)そうで、2020年11月、社内の意見交流の場で、問題の製品を担当するケミカル事業部の若手社員が報告をしたことから不正が判明したようです。なお、このケミカル事業部は、京セラが平成14年に東芝ケミカルを買収したものであり、平成28年に京セラ本体が吸収しました(注-ということは、30年前から継続していた不正というのは、そもそも京セラの内部で起きていたということではなく、東芝のグループ会社で起きていた、ということだと推測されます)。

新聞各紙でも「ベタ記事」程度の扱いであり、また京セラの業績に重大な影響を及ぼすような不正ではありませんが、やはり記事の中で気になるのが「若手社員が意見交流の場で不正を報告した」という件(くだり)です。報じられたニュースソースは会社側の広報に基づくのか、それとも別の取材源なのかはわかりませんが、30年にも及ぶ不正を社内会議の場で(ひょっとするとリモート会議か?)カミングアウトするというのは相当の覚悟(勇気?)が必要なのではないかと。それとも私の推測は世代ギャップによるバイアスが働いたものであり、いまの20代、30代の社員の方々は「不正の片棒を担ぐなんてまっぴらごめん、公表して職場環境をよくするのが当然でしょ」という感覚なのでしょうか。

そういえば2017年12月の日経ビジネス「謝罪の流儀」で報じられましたが、神戸製鋼社の孫会社「神鋼鋼線ステンレス社」でJIS強度偽装事件が発覚した事件において、これを本体神戸製鋼に報告したのは、神戸製鋼からステンレス社に派遣されて間もない社員でした。それまで何人もの出向社員がいましたが、「これはおかしいだろう」と憤って親会社に報告したのは当該社員が初めてだったそうで、この社員は本体の副社長による謝罪会見でも副社長の隣に同席していました。当該社員を同席させた理由について、神戸製鋼広報部は「この社員の姿勢こそ、当社グループとして真っ当な姿であることを社内外に示したかったから」だそうです。

いずれにしましても、本件では外部有識者を含めた特別調査委員会による事実解明、原因究明がなされるそうなので、なぜ30年もの長期間、この不正が放置されていたのか(事業承継の様子も含め)、また、この若手社員がどのような状況で不正事実を告白したのか、できれば調査の中で解明していただき、報告書の内容については明らかにしていただきたいと思います。

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2021年1月 8日 (金)

消費者法も立派なビジネス法務だと思う-消費者相談急増の事実から考える

1月8日午前0時、昨年4月以来の緊急事態宣言が首都圏一都三県に発効いたしました。おそらく大阪ももうすぐ宣言の対象になることでしょう。当事務所としても、今後の運営をまた真剣に考えなければなりませんが、とにかく元気に過ごしてまいりたいと思います。

さて、本日(1月7日)の日経朝刊社会面では「ダイエット食品 消費者相談急増-外出自粛が背景か 健康被害の訴え多く」と題して、コロナ禍における消費生活相談センターや自治体へのダイエット食品やサプリに関する相談が急増していることが報じられていました。この記事が伝えようとしているのは「在宅勤務等で『おうち時間』が増えた人が、体重を気にしたり、健康に配慮する傾向が強くなったことから、商品の効用や表示方法の適正性に関する相談が増えた」という事実です。

上記の日経記事の主旨とはやや異なりますが、私は新型コロナウイルス感染症拡大が続く今年の法務面での課題として、企業は景表法や個人情報保護法、特定商取引法に抵触するような、消費者法関連のコンプライアンス違反には、これまで以上に注意すべきである、と考えております。近時は消費者裁判手続き特例法も充実してきたので消費者契約法や改正民法(債権法改正)の運用動向にも企業は留意する必要があります。

消費者法といえば環境法とともに市民運動的な規制法のイメージで捉えられていたかもしれません。しかし、法令遵守という意味を超えて「企業の社会的信用の維持向上こそコンプライアンス経営だ」と言われる時代となりますと、消費者法も、れっきとしたビジネス法務だと確信しております。

とくに近時の消費者は、企業行動において不審に思ったこと、違和感を抱いたことがあれば(図書館に足を運ばなくても)「検索エンジン」によって時間を要することなく調べたい事項に到達することができ、また、自身の考え方への社会の共感度を知りたければSNSやWEBシステムによる意見交換の場で確認することもできます。つまり、「時間」と「空間」を簡単に買える時代の消費者は、その連帯によって企業の社会的評価を上げることもできれば下げることもできる。

もちろん理屈からいえば「ネット情報の危うさ(フェイクニュース)」や「サイレントマジョリティー(騒がれているからといって多数意見とは限らない)の存在」により、企業としては消費者の声をあまり気にする必要はないのかもしれません。ただいったん騒ぎが起きますと、将来にわたってネット検索の対象となるわけでして、企業の社会的評価の面からみて無視するわけにもいかないはずです。したがって、企業としてはできるだけ消費者に騒がれないための対策もとる必要があります。

たとえば、監督官庁から、明確に「これは景品表示法違反です」とは言われないけれども「違反のおそれのある行為です」と指摘された場合にはどうするか。海外の人種差別問題が盛り上がる中で、米国のNPO団体から「御社はこれからも『美白効果』なる言葉を広告に使いますか」と問われて、その回答に注目が集まる中、どう対応するか。某健康食品企業のトップから(差別的表現を用いて)揶揄された日本のトップ飲料メーカーが、これにどのような反論をするか等、様々な場面で消費者から注目されるわけです。いずれにおいても、問題となった事実の真否よりも企業がどう反応するのか、という企業姿勢に消費者の関心が集まります。

ところで「できるだけ消費者から騒がれないようにしたほうがよい」というのは、いかにも消極的で「ことなかれ主義」の発想のように思われるかもしれません。しかし、炎上を放置することはとてもコワイのです。消費者を相手とするコンプライアンス問題の何がコワイのかと申しますと、私が過去に取り扱った案件でも何度か失敗しましたが「騒がれている事件の背後に潜む本当の法令違反行為があぶりだされるリスク」であります。

どこの企業でも、社内常識からすれば軽微な不正とされている問題だったり、すでに地方新聞の夕刊ベタ記事で叩かれて、社内的には「一件落着」と思われていた不祥事が、消費者による騒ぎをきっかけとして表面化したり、再度取り上げられたりします(たぶん、従業員の方々や下請先、取引先の社員の方々が、消費者による騒ぎに便乗して情報提供されることが原因だと思います)。「時間」と「空間」を安く入手できる消費者は、これらの情報を上手に活用して火に油を注ぐ。むしろ、そちらの法令違反行為のほうが監督官庁も無視できないようになり、正真正銘のコンプライアンス問題に発展する、という次第です。

公明正大に「うちの会社に不正はありません!」と自信をもって宣言できる企業であれば、堂々と消費者の意見に反論すればよいでしょう。しかし、その自信がなければ、私は消費者を敵に回しかねない企業行動については敏感に対処することが得策だと考えます。

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2021年1月 7日 (木)

サクセッション・プラン(後継者育成計画)の「もうひとつの役割」について

1月7日より首都圏では緊急事態宣言が発令されるようで、関西でも首都圏への移動自粛要請が強まる気配です(大阪もかなり厳しい状況ですが)。すでに報じられているとおり、飲食店への行政指導(時短要請、休業要請)が改正政令の施行によって行われるそうですし、また特措法の改正によって飲食店への行政処分(指示、命令、公表、罰則)も可能となるようです。

しかし、そうなると要請に反して営業を続けている飲食店への行政指導、行政処分を発動するよう、市民(誰でも可)が法的根拠に基づいて申請するような事態にならないでしょうか(行政手続法36条の3、東京都行政手続条例36条等-行政法は詳しくありませんが、たぶん「適用除外例」には該当しないはず)。

「あの店舗は午後8時を超えて営業しており、お客さんがたくさん来ている。周辺にコロナによる感染のリスクが高まっているので指示、命令を発出せよ、もしくは市民が近づかないように店名を公表せよ」といった(行政権限の発動請求の)申請です。実際に指導もしくは処分を行うかどうかは別として、申請を受けた行政機関には調査義務が発生しますから、申請を放置していると行政機関(主に地方自治体)の不作為は違法行為となります。本当にそんな調査ができるほど人的資源が豊富なのでしょうか。うーーん、ナゾです。(以下本題です)

さて、最近、いくつかの上場会社のご相談とその実践結果において「なるほど、サクセッション・プラン(後継者育成計画)というのはこのような効用があるのか・・・」と納得したことがありました。もうすぐ公表される「コーポレートガバナンス・コード改訂2021」の検討会でも「企業変革」の一環としてCEOの選解任強化が謳われており、サクセッション・プランの策定は、取締役会改革の中核的な課題といえるでしょう。

もちろんサクセッション・プランの目的は「後継者候補を計画的に育成して、企業の存続リスクを軽減しながら持続的成長を図ること」にあります。オムロン、花王、りそな銀行等、すでに立派な計画を策定・開示しておられる企業もあり、VUCAの時代にふさわしい優秀な後継者を選定するためにも真剣に導入を検討しておられる会社も多いのではないでしょうか。

ただ、少し趣旨は異なりますが、長年経営トップに君臨している経営者に交代していただくための「きっかけ」としてサクセッション・プランを活用する、ということも同プランのひとつの役割ではないかと。もちろんガバナンス改革の理想からすれば、複数の社外取締役を中心とした指名諮問委員会が「あなたはもう当社のトップとしてふさわしくないので退任してください」と印籠を渡す(拒否すれば解任する)ことが求められています。しかし、実際にはトップを前にすると言い出せないわけでして、社長(会長)自身が交代時期と後継者を決める、ということが暗黙の了解になっている会社が多いと思います。

そこで「当社でも『サクセッション・プラン』を導入しましょう」と提案をして、さりげなく「あと2年ほどで交代してはいかがでしょうか」「交代後は経営に口出しできないシステムになりますが、よろしいでしょうか」といったシグナルを(暗に?)出してみることが考えられます。これであれば、いままでの社長(会長)の功労に傷をつけることもなく、また突然の退任要求とは異なりますので、社長(会長)の人脈や社内外におけるOBとしての役割を、そのまま無形資産として残しておくことも可能になります。

また、サクセッション・プランが策定されたことが社内的にも周知されれば、それこそ後継CEO候補者や役員候補者と目される人たちが育つ土壌が生まれるわけでして、指名諮問委員会としても活動が深化することになります(ただし社内において強烈な派閥争いが存在する場合には、「誰の企画なのか」と詮索されて逆効果になることもありますので、そこは上手に根回しをする必要があります)。

阪大ベンチャーキャピタル株式会社の社外監査役を務めていたころ、同じく社外取締役を務めておられたNTTドコモの元社長さんから「山口さん、社長は業績が絶好調のときに交代しないとダメ。傾きだしてからじゃ未練を残すから」とよく聞かされました。アフターコロナなのかウィズコロナなのかはわかりませんが、以前にもましてかじ取りが難しい経営環境にありますので、サクセッション・プラン導入への拒絶反応も薄れてきたのかもしれません。計画の実践には様々な困難が伴うかもしれませんが、まず「導入ありき」で検討してみることも一考かと。

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2021年1月 6日 (水)

コロナ禍における不祥事リスクとの向きあい方-東電元エースの告白から考える

本日(1月5日)の朝日新聞WEBでは、企業不正に関与した中堅幹部の、トップに逆らえない悲哀を報じた記事が重なりました。ひとつは日産ゴーン氏・金商法違反被告事件でケリー被告の証人に立ったO氏(検察庁との間で司法取引を行った方)の証言内容を報じた記事であり、もうひとつは東京電力を数年前に退職された50代の企画部出身の方(出世街道を走っていた元エース、ここではA氏としておきます)の告白記事です。とりわけ後者の記事は、匿名であるものの、詳細な経歴と年齢、所属部、退職時期が記されており、覚悟のうえでの告白であることがわかります(有料版記事ですが、「原発事故、起こるべくして起きた」東電元エースの告白)。

東電自身による事故調査委員会が立ち上げられたとき、A氏は報告書のとりまとめを命じられたそうです。A氏が肝心の事故原因の分析結果をまとめようとしたところ、東電の当時の会長ら経営陣から厳しく「なんでお前が事後原因を決めるんだ。事実以外は書くな」と命じられたそうです。要は「想定外の事故だった」というシナリオに落とし込むことが求められていた、ということ。もちろんA氏は東電社員であるがゆえにこれに従うわけですが、これを後悔して「2002年に発覚した原発のトラブル隠しが(東電原発事故の)すべての始まりだった」と告白しています。

このトラブル隠しを契機として、東電は原子力部門の内部統制を強化することになりますが、その強化の手法は「細かな事故・不具合があれば全部報告せよ」ということで、現場には詳細な内部統制ルールの整合性が求められていた、とのこと。しかしながら、A氏が現場責任者に「もしチェルノブイリやスリーマイル島のような事故が発生した場合、放射能を外部に放射するようなリスクシナリオはないのですか」と質問したところ「そういったリスクは全部排除されているのであり得ません。安全はすでに確立しています」との回答が返ってきたそうです。

事故は起きない、起こしてはいけない、という発想でリスクマネジメントを実践することは理解できるのですが、事故は起こる、起きた時にどうするのか、という発想でリスクマネジメントを実践することも当然必要です。そのような発想が欠落しているのであれば、経営陣に法的な責任が及ぶこともありうるように思います。

もちろん電力会社が「事故は起きる、ということを想定した対策」をとれば、発電所の地域住民から「ほらみろ、運転している電力会社自身が安全でないことを認めているではないか」と厳しく指摘されます。しかし、そこを逃げずに説明を尽くすこともリスクマネジメントの実践です。「面倒なことには蓋をしろ」という姿勢は、もはや現在ではコンプライアンス違反(コンダクト・リスクの顕在化)になりそうです。

昨年4月以来の緊急事態宣言が明日にも発令され、海外とのビジネス交流も途絶えそうな状況の中で、日本企業の今後の経営環境は全く見通しが立ちません。今年から来年にかけて、「不正リスク」をはじめとする多くの事業リスクが日本企業に顕在化することは間違いないでしょう。ただ、福島原発事故から10年が経過した今日、なにか重大なリスクが顕在化したとき、企業の経営陣からは「想定外」という言葉がよく聞こえてくるようになりました(そのような言葉が出ないようにBCPも整備してきたはずだとは思うのですが・・・)。情報漏えい事件を起こした企業などは、「情報セキュリティの脆弱性については想定外だった」と言い訳するのが常套手段となりました。

もちろん、本当に想定外の事態も考えられるのですが、そもそも「事故や事件は起きる。不祥事もかならず起きる。起きたときに、御社はどう対応するのか?守るべきステークホルダーの優先順位はきちんと共有されているのか?」といったことを考えてこなかった(いや、考えてこなかった、というよりも社内での適切なコミュニケーションができていなかった、といったほうが適切でしょうか。たとえば「根拠なき安全神話」への妄信、会計不正事件の発覚を前提としたコーポレートガバナンス・コード補充原則3-2②ⅳの無視等)のであれば、もはや現状では(社外役員も含めて)取締役や監査役の善管注意義務違反と評価されてもしかたがないのではないか。

コロナ禍での会社経営は、それほどの有事に立ち至っているように思います。金融緩和政策と並び、近時の株高の根拠とされている308兆円もの手元資金が活用されるべきであれば、ESGと同様、有事を想定したリスクマネジメントという「無形資産」に投資することも不可欠だと考えます。

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2021年1月 5日 (火)

お手元のカレンダー(手帳)のご確認を・・・国民の祝日の変更(2021年のみ)

さきほど日経ニュースを読んで(恥ずかしながら)初めて気づきましたが、2020年11月の法律改正で今年の祝日は変更されているのですね。

私の15年ほど使っているDavinciの手帳も完全に違っておりまして、慌てて平日⇒祝日、祝日⇒平日の書き換えをいたしました。

具体的には 7月19日は祝日⇒平日へ 同22日は平日⇒祝日(海の日)へ 同23日は平日⇒祝日(スポーツの日)へ 8月8日は休日⇒祝日(山の日)へ 同9日は平日⇒休日へ(振替休日) 同11日は祝日⇒平日へ 10月11日は振替休日⇒平日へ

となります。東京オリンピック対応とはいえ、いやアブなかった(>_<)

「今頃、なに言うてんねん!」と笑われそうですが、ひょっとしたら私と同じ勘違いをされている方もいらっしゃるかもしれませんので、一応拡散目的でブログネタにさせていただきました。

すでに使い始めているカレンダーも、結構間違っていますので要注意ですね(笑)。取引先に配るカレンダーをギリギリになって作った会社ほど得した気分になりそうですね。

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改正公益通報者保護法-「改正(指針)の方向性」が判明

本日(1月4日)の日経朝刊法務面でも示されていたとおり、改正公益通報者保護法は2022年6月ころまでに施行されます。とりわけ常用雇用者300名を超える企業の実務に多大な影響を及ぼすものと思いますが、なかでも法的な義務とされる「内部統制の体制整備・運用の指針」「公益通報対応業務従事者の設置に関する指針」の中身がどうなるのか、とても気になるところです。

そして本日、消費者庁のHPに「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会」の第3回(2020年12月23日)開催時に配布された資料が公開されました。特に注目される資料は「(資料2)これまでの検討を踏まえて現時点において考えられる方向性」と題する資料ですね。いよいよ改正の方向性が明らかになりました。今年は当該資料に基づいて審議が行われ、3月の指針公表に向けて意見の取りまとめが行われる予定のようです。

「改正の方向性」に関する詳細は別途検討するとしまして、まずこの資料を読んで、事業者の方々に認識しておいていただきたいと思う点のみ述べておきます。ひとつめは、指針の内容は全国の常用雇用者300名を超える約14000社の皆様の関心事になるかと思いますが、それだけでなく200万社に及ぶ会社企業の方々にも参考となるように策定される、ということです。なぜなら、公益通報者は、なにも公益通報者保護法だけで保護されるわけではなく、民法や労働契約法の解釈を通じて地位が保護される可能性があるからです(平成18年の法施行前は、民法の解釈を通じて公益通報者は個別に保護されてきました)。

したがって、中小の事業者に(公益通報者保護法上の)法的義務が存在しないとしても、「指針」に沿った通報対応体制整備の努力義務はあるわけですから、改正法の趣旨は民法や労働契約法の解釈を通じて(裁判実務において)実現されることになります。そういったことも想定をして、おそらく国内の中小の事業者にも法改正の趣旨が浸透することを念頭に置いて指針が策定される、ということだと考えられます。

ふたつめは、「指針」のみならず、「指針の解説」についても法施行前に明らかにされる予定がある、という点です。これは事業者にとってはありがたいですね。法律の細かなところを「指針」で補うというものですが、その「指針」でもわかりにくいところがあるわけで、そこについては(おそらく消費者庁から)具体例などを示した解説が示されることにより、かなり安心できるのではないでしょうか。とりわけ「公益通報対応業務従事者」には「秘密漏えい(通報者を特定しうる情報の漏えい)行為」について刑事罰が科されることになりますので、罪刑法定主義の見地からも詳細な解説が出されることを希望いたします(もちろん裁判所は当該指針による解釈には拘束されませんが、やはり行政機関による解釈の存在は大きい)。

そして三つめは「内部通報窓口の在り方」の方向性が示されたことです。事業者の内部通報窓口には、公益通報の対象事実、それ以外の内部通報の対象事実などが届くわけですが、いずれにしても社内ルールにより、会社は通報への対応義務が発生します。しかし、そういった通報の受領だけでなく、これから公益通報をしたいと考えている従業員(労働者)の相談に対応することや、法令違反事実の是正(会社の是正行為)に関するモニタリングといった業務も「体制整備・運用義務」の一環として考えられている、ということです。そもそも公益通報保護法上、通報された内容が、法律上の「公益通報事実」に該当するのかどうか、実際に相談に応じてみなければわからない、という難問があります。したがって、法の趣旨を実現するためには、このように「窓口の在り方」を広めに考えなければならない、というのはやむを得ないところです。

ただ、そうなりますと、通報への対応に不満を抱いた公益通報者は、「相談対応がまずかった」とか「是正されていないのに、何もしてくれなかった」といったことで「体制整備義務違反」の事実を公益通報者保護法違反事実として新たに消費者庁に通報する、といったことも考えられます(体制整備義務違反が疑われる事業者が、当局の報告徴求に応じない場合には法22条により過料が科される←「体制整備義務違反事実」が公益通報の対象事実になる可能性が高い)。

上記の点について私が懸念しますのは、公益通報者保護法を改正して通報者の保護を強化することは良いとしても、一方で「不誠実な通報者」によって多くの通報担当社員が疲弊している、という実態が軽視されはしないだろうか、という点です。よくある例として、被通報者への調査が始まるやいなや、(ほとんどのケースで被通報者には誰が通報したのか心当たりがありますので)被通報者自身が「俺は(私は)〇〇さんに通報されてえらい被害を被っている!それに協力したのは△△さんだろが!こうなったら自力で名誉を回復するしかないではないか!」と社内で吹聴する事態となれば、「あれほど調査は秘密でといったのに、窓口担当者が秘密を洩らした」と通報者から誤った批判を受けることになります。

窓口担当者は実際には誠実に調査を行っていたにもかかわらず、濡れ衣を着せられて本業(総務や人事、内部監査、法務等)に支障を来すことにもなりかねません(通報担当者には通報に関する守秘義務がありますので、「濡れ衣を着せられた」と反論することもできないのです)。公益通報者保護法の制度趣旨を実現するためには、その担い手を元気にする運用が必要です。運用者が後ろ向きになってしまっては、そもそも通報者が(社内の問題を)通報する意欲さえ喪失してしまうでしょう。

どんなに大きな企業でも、公益通報対応の専業社員などいません。みんな本業を持ちながら通報窓口の対応に尽力しているのです。正直に申し上げるならば、みんな失敗を繰り返しながら「通報者保護と真実解明の両立」のスキルを向上させているのです。そういった対応社員が不誠実な通報に振り回されることがないよう、また、(「人権侵害の片棒を担ぐ奴ら」と罵られる等)被通報者の嫌がらせで疲弊することがないよう、運用指針が策定されることを切に希望します。そうでなければ(先日のジュリスト2020年12月号の座談会で私が述べたように)、誰も内部通報の対応業務従事者などならないでしょう(就任したからといって、とくに人事部から高い評価を受けるわけではありません)。なお「方向性」の各論についても申し上げたいことは山ほどありますが、それはまた追ってご議論させていただきたいと思います。

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2021年1月 4日 (月)

社長が知りたい「法務」の話とはいったい何だろう

昨年12月29日の日経朝刊(6面)に「日本企業、また敗れるのか」と題する梶原編集委員の論説記事が掲載されていました。今朝(1月3日)の同氏の論説「日経平均3万円の条件」(5面)とも重なる内容ですが、失敗をおそれる日本企業の文化が90年代半ばのIT革命における敗北、08年直後のリーマンショックからの復興での敗北を招き、さらに今回のコロナ後の復興でも敗北を喫する要因となる、とのこと(なるほど)。

そして、失敗をおそれる企業文化とともに、「企業の変革に必要な手つかずの課題」として取り上げられていたのが「法務部門の覚醒」です。新しいことにチャレンジするためには、経営者が法務を手元に置く必要があることが示されています。グレーゾーンにおけるリスクテイクの判断やルール・チェンジ(ルールメイキング)のための企画作りに法務を活用することはとても重要だと思いますし、ここ数年「攻めの法務」は様々なところで検討されていますね。

ただ、理屈としてはその通りなのですが、上場会社の現実をみると「法務に予算をつける権限を持つ」社長さんの意識はどうか。正直、会社の有事(不祥事やM&A、重要な株主提案等)の場面では別として、「攻めの経営」に法務を活用することを重視しておられる方は少ないように思いますし、理屈と現実の間には大きなギャップがあり、まずはこのギャップを埋める作業が必要だと考えております。

理屈からすると法務かどうかはわかりませんが(むしろアヤシイ?)、社長さんに「法務らしい」ことへの興味を持ってもらうのが、このギャップを埋める早道ではないでしょうか。ということで、私が日ごろ個人的に相談相手になっている3人ほどの社長さん(会長さん)にウケる話題はなんだろうか、と考えますと、二つしかありません。ひとつは内部統制の話です。「ガバナンス」ということになると、あまり関心を示してもらえませんが、内部統制ということですと「自分の考えが間違っていないかどうか」といった場面でよく相談の依頼があります。経営者相手ですと「意見書」など読んでくれる時間もないので、ともなく相談の場で「合ってるか、合ってないか」の判断が要求されます。

そしてもうひとつが「不祥事の他社事例」の話です。これはどの社長さんもメモをとって「なぜそんなことが起きたのか」「うちの会社と組織は似ているのか」「社長は普段からどんなことをしていたのか」と(私が知らないことまで)根掘り葉掘り質問されます。幸い、ブログを15年ほど書いているので、新聞ネタだけでなく、企業不祥事発生時の調査委員会報告書なども頭に入っていますので、あれこれと同社のビジネスに近い案件などの例をお話しするととても喜ばれます。こういったことの繰り返しで「なるほど、新しい案件を進めるにあたっては法務の話を聞かないと」といった意識が社長さんに芽生えてくるのではないかと。

この「法務らしい」「法務っぽい」というところがミソでして、私は自分の関心分野から上記の二つくらいしか話題を提供できないのですが、知財や労務、競争法など、それぞれの関心分野周辺の話題であれば何でも構わないと思うのです。「それはビジネスにとって美しい、美しくない」といった価値基準にひっかかりそうな話題であれば、結構社長さんは関心を寄せてくれるのではないでしょうか。ゼネラルカウンセルやCLOの地位にあれば別ですが、しょせん最後の経営判断は社長さんが行うわけですから。

昨年、社内のある環境問題の解決が(社内でたらい回しとなり)放置されていたところ、その問題を知った反社会的勢力から揺さぶられ、大きな不祥事に発展した事例に関与しましたが、守秘義務に反しない範囲でこのお話しすると、某社の社長さんもビックリで「やっぱりESG担当に重要な人材を配置しよう」ということになりました。「これから情報セキュリティとESGがカネになる・・・」というのは、あっちの世界の方々も同じ意見なのです。

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2021年1月 2日 (土)

謹賀新年(令和3年) 今年もよろしくお願いします。

コロナ感染が拡大する中で、まだまだ厳しい状況が続いておりますが、穏やかな新年をお過ごしでしょうか。

昨年末は紅白を視聴せずに嵐のコンサートを視聴しておりました。メンバーが終盤の挨拶の際、これまで自分たちの影武者(リハーサルのときに、忙しい嵐に代わって代役を務める方々)のひとりひとりを実名で紹介し、謝辞を述べているシーンが私には一番感動的でした。見習わないといけない点がたくさんありました。

おそらく今年も先が読めない1年になると思いますが、日本企業の法務を取り巻く状況を的確に把握して、自分自身のモノサシを決して失わずに仕事を実践していきたいと思います。本年も、どうぞよろしくお願いいたします。

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