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2021年1月 4日 (月)

社長が知りたい「法務」の話とはいったい何だろう

昨年12月29日の日経朝刊(6面)に「日本企業、また敗れるのか」と題する梶原編集委員の論説記事が掲載されていました。今朝(1月3日)の同氏の論説「日経平均3万円の条件」(5面)とも重なる内容ですが、失敗をおそれる日本企業の文化が90年代半ばのIT革命における敗北、08年直後のリーマンショックからの復興での敗北を招き、さらに今回のコロナ後の復興でも敗北を喫する要因となる、とのこと(なるほど)。

そして、失敗をおそれる企業文化とともに、「企業の変革に必要な手つかずの課題」として取り上げられていたのが「法務部門の覚醒」です。新しいことにチャレンジするためには、経営者が法務を手元に置く必要があることが示されています。グレーゾーンにおけるリスクテイクの判断やルール・チェンジ(ルールメイキング)のための企画作りに法務を活用することはとても重要だと思いますし、ここ数年「攻めの法務」は様々なところで検討されていますね。

ただ、理屈としてはその通りなのですが、上場会社の現実をみると「法務に予算をつける権限を持つ」社長さんの意識はどうか。正直、会社の有事(不祥事やM&A、重要な株主提案等)の場面では別として、「攻めの経営」に法務を活用することを重視しておられる方は少ないように思いますし、理屈と現実の間には大きなギャップがあり、まずはこのギャップを埋める作業が必要だと考えております。

理屈からすると法務かどうかはわかりませんが(むしろアヤシイ?)、社長さんに「法務らしい」ことへの興味を持ってもらうのが、このギャップを埋める早道ではないでしょうか。ということで、私が日ごろ個人的に相談相手になっている3人ほどの社長さん(会長さん)にウケる話題はなんだろうか、と考えますと、二つしかありません。ひとつは内部統制の話です。「ガバナンス」ということになると、あまり関心を示してもらえませんが、内部統制ということですと「自分の考えが間違っていないかどうか」といった場面でよく相談の依頼があります。経営者相手ですと「意見書」など読んでくれる時間もないので、ともなく相談の場で「合ってるか、合ってないか」の判断が要求されます。

そしてもうひとつが「不祥事の他社事例」の話です。これはどの社長さんもメモをとって「なぜそんなことが起きたのか」「うちの会社と組織は似ているのか」「社長は普段からどんなことをしていたのか」と(私が知らないことまで)根掘り葉掘り質問されます。幸い、ブログを15年ほど書いているので、新聞ネタだけでなく、企業不祥事発生時の調査委員会報告書なども頭に入っていますので、あれこれと同社のビジネスに近い案件などの例をお話しするととても喜ばれます。こういったことの繰り返しで「なるほど、新しい案件を進めるにあたっては法務の話を聞かないと」といった意識が社長さんに芽生えてくるのではないかと。

この「法務らしい」「法務っぽい」というところがミソでして、私は自分の関心分野から上記の二つくらいしか話題を提供できないのですが、知財や労務、競争法など、それぞれの関心分野周辺の話題であれば何でも構わないと思うのです。「それはビジネスにとって美しい、美しくない」といった価値基準にひっかかりそうな話題であれば、結構社長さんは関心を寄せてくれるのではないでしょうか。ゼネラルカウンセルやCLOの地位にあれば別ですが、しょせん最後の経営判断は社長さんが行うわけですから。

昨年、社内のある環境問題の解決が(社内でたらい回しとなり)放置されていたところ、その問題を知った反社会的勢力から揺さぶられ、大きな不祥事に発展した事例に関与しましたが、守秘義務に反しない範囲でこのお話しすると、某社の社長さんもビックリで「やっぱりESG担当に重要な人材を配置しよう」ということになりました。「これから情報セキュリティとESGがカネになる・・・」というのは、あっちの世界の方々も同じ意見なのです。

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コメント

(大幅な感染者数の増加となった数日前の大晦日…にもかかわらず…)
都内の某ビル(ホール&スタジオ)での年末恒例「熱唱合戦」=飛沫とびまくりじゃないか!と、夜の街関連の事業者からクレームのひとつも有ったかもしれない国営メディアの行為に、「株式会社NIPPON商店」の社長などは、「待った!!」をかける事は出来なかったのでしょうか…。(特措法などがもっと早く改正されていれば…と悔やまれる?)(成人の日の頃に、「渋谷区神南」でクラスター…という報道は見たくはないのですが)

いよいよ、一都三県に(部分的)緊急事態宣言の発令が出されようとしているとの報道に触れ、上場企業はじめ、世の社長:諸氏は、感染対策の手薄な法整備の下で、ほろ苦い新年をスタートする事になりそうです。

( Low & Law )
巷のクルマの殆どはAT(オートマチック)車となり、加速する際のシフトチェンジを行う事は皆無になりました。かつては、1速=Low gear から加速して行きましたが、今はDレンジ固定。人間の手を借りず、クルマが勝手にシフトアップ/ダウンしてくれます。
けれど、人間/ビジネス社会は、他人/他社と同じ様な事をしていては、コロナ騒動2年目の今年、ウィルス変異が沈静する保証はどこにもありませんから、先見性を併せもつローギア=「Law」ギア加速をする事が不可欠かと。

既存の枠にハマりがちな、経済新聞や証券アナリストの発するコメントも大事かも知れませんが、発想の転換に将棋教室に通う…先を読む知恵の鍛錬:「フジイソウタ君の爪の垢でも煎じて飲めばいいんじゃないか?」と正月に会った友人が発した皮肉が、解る様な気がしています。

感染の減衰には先ず、外出先:ユニクロやイオンモール等の出入り口設置の「体温センサー」検温を法律で義務化/罰金制度化でもしないと無理かもと思いつつ、現行法プラスα(アルファ)の視点で、先手を打つ気構えが不可欠と思っています・・・。

投稿: にこらうす | 2021年1月 4日 (月) 11時04分

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