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2021年2月25日 (木)

中央経済社「ビジネス法務」に論稿を掲載していただきました。

Img_20210220_200343_400 2月22日の日経夕刊の1面に「買収防衛策導入-ピークから半減」との見出しで、M&A助言会社の調査によると買収防衛策を導入している企業がピーク時から半減している、と報じられています(昨年末で281社だそうです)。買収防衛策に批判的な機関投資家が増えていることから、今後も防衛策の廃止に踏み切る上場会社が増えることが想定されているようです。

ただ、非友好的買収事案が最近1年で10件以上に上る状況から、日住サービスのように(2019年に廃止したにもかかわらず)再度、買収防衛策を導入する議案を上程している会社も出てきておりますので、今後は導入すべきか、廃止すべきか(自社の株主構成なども踏まえたうえで)個社において検討される風潮も出てくるのではないでしょうか。

ところで「買収防衛策」って、(事前警告型が典型ですが)その外形にこだわり過ぎていませんでしょうか。「これが防衛策だ」といった概念が固定観念化しているわけですが、ここ15年ほどの間に社外役員の数も増えましたし、TOBルールも変わりましたし、支配権獲得を目指す議決権比率、株主総会の機能、株主とのコミュニケーションの取り方等も変わりました。最近は「(ファンドと組んだ)なんちゃってホワイトナイト事案」や「買収防衛目的で他社を買収する事案」まで登場するようになり(笑)、私からみれば事実上の買収防衛策は圧倒的に増えているように思います(大手法律事務所の功績のひとつではないでしょうか)。

このあたりの研究なくしてガバナンス・コードを改訂しても、結局は「いたちごっこ」で終わってしまうような気がしております。株主価値を高めることに熱心な経営者がすべて利他的な行動に出るわけもなく、むしろ「俺しか価値は上げられない!」と妄信しているパッションこそ、株主にとって必要ではないのか・・・と思うところもあります。要は「買収防衛策は善か悪か」といった議論ではなく、マクロの視点から「どう扱うか」といった議論が必要な時代になってきたのではないかと。

さて、中央経済社「ビジネス法務」2021年4月号におきまして、「特別企画 2020年に起きた企業不祥事とコンプライアンス強化へ向けた示唆」と題する論稿を掲載いただきました(計6頁)。昨年も「2019年に起きた・・・」というタイトルで同趣旨の論稿を掲載いただきましたが、反響が大きかったそうで、本年も6頁にわたって執筆いたしました。もちろん、法律雑誌の特別企画の一環なので、網羅的なお話しではございませんが、近年の不祥事に特徴的な点を指摘して、平時からの対応のヒントを記したものです(本当に少しでもヒントになれば幸いです)。 2月21日より、全国書店にて販売中ですので、よろしければご一読くださいませ。

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