ガバナンス・コード改訂版に対応する日本の上場企業を機関投資家はどうみるか?
本日も日帰りの東京出張で、帰阪後もまとまった時間がとれませんでしたので、自分用の備忘録としてガバナンス関連の話題をひとつ。備忘録なので、私個人の意見などはあまり記載しておりませんのでご了承ください。
先週末、金融庁Gコード&Sコード・フォローアップ会議のメンバーの方と、ある団体の会合で意見交換を行う機会がありました。ガバナンス・コード2021がもうすぐ適用されますが、ガバナンス・コードに対応する日本企業についての当該メンバーの方のご意見がとても興味深い。
まず「日本企業はエクスプレインする(コードに従わない理由を説明する)企業が少なすぎる」とのこと。「日本企業はガバナンス・コードへの誤解があるのではないか」とおっしゃっておられました。自社にとって最適なガバナンスはどのようなものか、企業理念に沿った考え方が、ます自社で確立していることが前提。だからこそ、投資家はエクスプレインを期待している。これほどコンプライする、ということは、そもそも自社のビジネスモデルに沿ったガバナンスの理想形が存在しないのではないか。だからあまり考えることもなくコードができれば従う・・・ということになるのではないか。
たしかに英国では「コンプライ」が基本であり、エクスプレインは例外的かもしれない。しかし、それは英国が2008年のリーマンショックの際に改訂した「守りのガバナンス」に関するコードが中心だからであり、また、国家ではなく「シティ」が主導で策定されたソフトローだから(人から押し付けられた規制ではなく、自分たちで決めたルールだから従うのが当たり前)。攻めのガバナンスのためのガバナンス・コードを国から要求されて従うとなれば、日本と英国と背景事情が全く異なる(よって、堂々とエクスプレインすればよい)。
役員からみてコードへの対応として重要なのは取締役会の実効性を評価することであろう。しかし、自己評価ができているとは思えない。とくに社外取締役の評価はどうしているのか。日本では「健全なリスクテイク」のために社外取締役が果たすべき役割があるはず。ではそのような役割を果たす社外取締役は、誰がどのように格付けしているのか。
私の聞き間違いもあるかもしれませんので正確性は保証できませんが、ご意見には共感するところが大きいです。やはり「成長戦略を後押しするガバナンスなど掲げているのは日本だけ。ガバナンスは不正防止、社長の暴走抑止、エージェンシーコストの低減、といったところが目的」という点はとても重要ですよね。ガバナンス・コードへの対応は二の次として、まずは自社の持続的成長のための最適なガバナンスを考えることが最優先ではないか(←これが2013年以来、ガバナンス改革に一生懸命取り組んできた日本が得た知見では?)といった考え方が次第に浸透するような気もします。