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2021年4月 6日 (火)

内部通報への妨害行為が立件される時代-内部通報制度認証(WCMS)申請・審査の実態報告は参考になります

4月6日午前 追記あり

4月5日夜の朝日新聞ニュースで知って驚きましたが(追記:4月6日の朝日朝刊社会面にも掲載されております)、日本郵便の元局長さんが内部通報者への恫喝行為で起訴されたのですね(強要未遂罪)。書類送検から1年以上経過していたので不起訴処分かと思っておりましたが、内部通報の妨害行為、とりわけ公益通報者への不利益な取扱いは、強要罪で刑事立件される可能性がある、ということは民間事業者の皆様方もよく認識しておいたほうがよいと思います(以下本題)。

さて、先日(3月23日)、消費者庁HPにおいて「内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)の登録事業者が100社を超えたこと」が発表されていました。これを契機としたのかどうかはわかりませんが、本日(4月5日)、認証第三者機関である商事法務研究会のHPにて、「内部通報制度認証(WCMS)申請・審査の実態概況報告-登録事業者100社の概況と審査の概要ー」がアップされています。追記:にこらうすさんがコメントされているように、YouTubeによる解説チャンネルもできていたのですね。そちらもご参照ください(すいません、私は閲覧しておりませんが・・・)。

申請したけれども、資料や説明が不十分として補正が要求される対象となる項目が結構多いのですが、多くの申請企業にとって補正の対象となった項目をみると、内部通報制度の整備・運用のどこにむずかしさがあるのか、ということがよくわかりますね。通報事実に対する調査協力を確保する仕組みや調査妨害を防止する仕組み、被通報者による不利益取扱いを防止する仕組み等は、その運用面も含めて各社頭を悩ませている様子がうかがえます。また、禁止される不利益取扱いの類型の具体化や外部窓口の中立性、公正性等の確保についても補正が求められることが多いようです。

とりわけ後半部分は審査項目のどこに注意しながら整備・運用すべきか、という点を「補正による主な確認事項」としてまとめられているので、とても参考になります。今までなら「認証登録をして、自社の内部通報制度が充実していることをアピールしたい企業は登録申請してみてはいかがでしょうか」といったコメントがピッタリでしたが、これからはおススメせずとも認証申請を行う事業者が増えるものと予想しております。

その理由としては、なんといってもガバナンス・コード改訂2021の施行が大きい。ズバリ内部通報制度の充実を要請している原則2-5、補充原則2ー5①については変更はないものの、補充原則2-3①は、

取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステナビリティーを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り組むよう検討を深めるべきである。

と修正されました。まさにESG経営の一環として「従業員の健康・労働環境への配慮、公正・適切な処遇」が要請されていますので、内部通報制度の充実は攻めのガバナンスとの関係でも必須の条件になるということです。労働者保護の施策を対外的にアピールするには、まさに認証制度を活用するのが近道だと思われます。

さらに、来年施行される改正公益通報者保護法が「公益通報への適切な対応体制の整備等措置」を常用雇用者300人超の事業者に義務化したことです。これに伴い、今後は民間事業者向けガイドライン(平成28年版)も改訂されるはずです(おそらく改正法の「指針」が公表された後に、指針の解説等と一緒にガイドラインも改訂されるものと予想されます)。もちろん事業者の「内部通報対象事実」と「公益通報対象事実」は異なるものですが、事業者向けの内部通報制度ガイドラインに沿った対応がなされていれば、公益通報への適切な対応体制の整備についても広くカバーできるものと考えられます。

そして上記の実態報告を読んでみて気が付いたのですが、補正の対象となっている項目は、いずれも「経営者が認証登録を支援する気持ちがないと通報制度の整備・運用が進まない」ものが並んでいるという事実です。つまり担当者任せで認証申請をしてみたものの、補正を求められて「これは経営者から許諾を得ないとルール改正がむずかしい」という項目が残ってしまう。そういった項目だからこそ「何度も登録機関から突き返された」のでしょうね。つまり経営者自身が内部通報制度の重要性を認識する、全社的に内部通報制度が機能する組織風土を醸成することのきっかけになる、という点はこの認証登録制度のメリットかと思います。

現在は「自己適合宣言登録制度」として運用されていますが、将来的には「第三者による適合認証登録制度」になることが想定されていますので、いまのうちから整備・運用の勘所を知っておくのも得策ではないかと。サステナビリティ経営が謳われる時代、ぜひコンプライアンス経営の実現、労務環境の向上のための制度を活用してみてはいかがでしょうか。

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コメント

日本郵便、福岡県直方市の事例だと思います。
在宅起訴!
私の事例など、自分のことなので「より辛い苦しい」事例、脅迫、強要未遂だと思ってしまいますが、日本国政府、官邸や監督行政、関係行政(霞が関中心に相当アチコチ回りました)にも支援を受けながら、当該企業経営陣への通報を粘り強く続けてきました。
先週も経緯を知る某行政に「がんばれ!」と電話で叱咤されました。
取締役会が「人権尊重」をするためのCGコード補充原則2-3①は心強いですし、取締役会で話しあってほしい事案、事例です。
原則2ー5、補充原則2-5①はこれまでどおり社外取締役、監査役への通報窓口整備を促しています。
社外取締役にどれだけ通報したか、「記憶、記録にございます」

投稿: 試行錯誤者 | 2021年4月 6日 (火) 01時04分

還暦手前の者(ガラケー世代)として、スマホの搭載機能習熟度などは、おそらく50%にさえ程遠く…そんな私ですので、山口先生の本エントリーで紹介して頂いた商事法務研究会のHPの「内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)に関するお知らせ」欄にさらに紹介されている「YouTube「内部通報制度チャンネル」開設のお知らせ」に(う〜ん、時代はここまで進化したのですね…と)、感心しています。(4月配信開始とのこと)
早速、スマホで「 な い ぶ つ 」まで検索:文字入力を進めると、
「内部通報」に始まり、「内部通報制度」、「内部通報 報復」、「内部通報者保護法」等、15の項目が出て来ました。

更に進めて…YouTube=例の赤色のマークと「本気の内部通報制度」を見つけました。(上記「う〜ん…」(2))
(私が閲覧した時=既に百人近いチャンネル登録者数)
続いて動画閲覧…赤いブレザーの女性が登場するアニメーションを交えた仕上げに、TV番組「笑点」なら「座布団◯◯枚!」若しくは「サンデーモーニング」のスポーツコーナーなら「あっぱれ!」という気持ちに…です。

公益社団法人:商事法務研究会の沿革/歴史は、私の年齢よりも長く、役員一覧にお名前を連ねられていらっしゃる有識者の方々の平均年齢も(失礼ながら)若くはなさそうです。そんな会の発信する、幅広い閲覧者層を意識してのユーチューブ発信からも「本気度」を感じました。

大袈裟かも知れませんが、本制度は法曹界の広義の「革命」的な一つに数えられるかも知れません・・・。

(因みに…会の更なる進化として、僭越ですが、次は役員構成における女性の比率の向上…でしょうか。)

投稿: にこらうす | 2021年4月 6日 (火) 05時37分

(二度目のコメント投稿:恐縮です)

日本郵便の元局長事件=今日の午後では別件:長崎市の元局長による約10億円の預貯金詐欺が発覚したとの報道に触れました。

日本郵便は、全容解明に向けてこれから社内調査…とのこと。
疑い出したらキリがありませんが、郵便局長という「ポスト」の数だけ、腐敗/不正がある(?)なんて、洒落にもなりません…内部通報制度活用の機会が一段と加速するかもしれません。

一度目のコメントでTV「サンデーモーニング」を引用させて頂きましたが、今度は(職員の教育体制に不備な)日本郵便に「喝!」…ですね。

投稿: にこらうす | 2021年4月 6日 (火) 17時36分

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