« 改正公益通報者保護法に基づく指針案報告書が公表されました(その他、お知らせ) | トップページ | 東芝-CVCによる買収提案劇中断のモーメントについて »

2021年4月27日 (火)

ガバナンス・コード改訂版に対応する日本の上場企業を機関投資家はどうみるか?

本日も日帰りの東京出張で、帰阪後もまとまった時間がとれませんでしたので、自分用の備忘録としてガバナンス関連の話題をひとつ。備忘録なので、私個人の意見などはあまり記載しておりませんのでご了承ください。

先週末、金融庁Gコード&Sコード・フォローアップ会議のメンバーの方と、ある団体の会合で意見交換を行う機会がありました。ガバナンス・コード2021がもうすぐ適用されますが、ガバナンス・コードに対応する日本企業についての当該メンバーの方のご意見がとても興味深い。

まず「日本企業はエクスプレインする(コードに従わない理由を説明する)企業が少なすぎる」とのこと。「日本企業はガバナンス・コードへの誤解があるのではないか」とおっしゃっておられました。自社にとって最適なガバナンスはどのようなものか、企業理念に沿った考え方が、ます自社で確立していることが前提。だからこそ、投資家はエクスプレインを期待している。これほどコンプライする、ということは、そもそも自社のビジネスモデルに沿ったガバナンスの理想形が存在しないのではないか。だからあまり考えることもなくコードができれば従う・・・ということになるのではないか。

たしかに英国では「コンプライ」が基本であり、エクスプレインは例外的かもしれない。しかし、それは英国が2008年のリーマンショックの際に改訂した「守りのガバナンス」に関するコードが中心だからであり、また、国家ではなく「シティ」が主導で策定されたソフトローだから(人から押し付けられた規制ではなく、自分たちで決めたルールだから従うのが当たり前)。攻めのガバナンスのためのガバナンス・コードを国から要求されて従うとなれば、日本と英国と背景事情が全く異なる(よって、堂々とエクスプレインすればよい)。

役員からみてコードへの対応として重要なのは取締役会の実効性を評価することであろう。しかし、自己評価ができているとは思えない。とくに社外取締役の評価はどうしているのか。日本では「健全なリスクテイク」のために社外取締役が果たすべき役割があるはず。ではそのような役割を果たす社外取締役は、誰がどのように格付けしているのか。

私の聞き間違いもあるかもしれませんので正確性は保証できませんが、ご意見には共感するところが大きいです。やはり「成長戦略を後押しするガバナンスなど掲げているのは日本だけ。ガバナンスは不正防止、社長の暴走抑止、エージェンシーコストの低減、といったところが目的」という点はとても重要ですよね。ガバナンス・コードへの対応は二の次として、まずは自社の持続的成長のための最適なガバナンスを考えることが最優先ではないか(←これが2013年以来、ガバナンス改革に一生懸命取り組んできた日本が得た知見では?)といった考え方が次第に浸透するような気もします。

|

« 改正公益通報者保護法に基づく指針案報告書が公表されました(その他、お知らせ) | トップページ | 東芝-CVCによる買収提案劇中断のモーメントについて »

コメント

「成長戦略を後押しするガバナンスなど掲げているのは日本だけ。」というのは真実で、同じCGCでも欧米のそれとはベクトルが逆ということですね。米国の株主とその代理人たる取締役は厳しいですから、コードなんかなくてもCEOをガンガン詰めて(ニンジンとして巨額報酬を見せつつ)、使えないならすぐに解任する。
日本企業もそうなろうというところで、コロナになって、さらに助け舟(言い訳)として連日のESG重視のトレンド。
まずは株主至上主義(利益極大化主義)を極めてから、ステークホルダー主義を唱えてほしいものです。

投稿: 通りすがりの監査役 | 2021年4月27日 (火) 15時45分

(迷走?という文字が浮かんだ、山口先生の本エントリー:拝見)

2019年までの地球規模経済と、2020年に発生したコロナ禍(進行形)と、ゴールが見えない現在及び近未来における、機関投資家の真相の一部…を、本エントリーで拝見した心境です。

例えば、東京五輪・パラに多大な投資をしている機関投資家は、
(先日の「五輪中止してほしい」「正直行きたくない」看護師500人派遣巡る現場の声)=スポーツ報知等での報道と医療現場の実情を、どう受け止め、最終判断を考えているのでしょうか。

相手が同じ人間なら、立場の違い等に起因する齟齬、対立/主張バトル等もいつかは結末/区切りがあります。
しかし、まだまだ未知の部分の多いコロナウィルスも、死滅させられない様にと(おそらく)必死なのでしょうから、「変異」及び二重変異という展開をぶつけてくる(?)
過去のスペイン風邪やペスト等の時代の経済背景とは異なる昨今、機関投資家の皆さんが下す判断は、五つの大陸に象徴されたグローバルスポーツイベント視点でどの様な形を描くのでしょう。そしてそこに、ガバナンス・コード2021(改訂版)は機能する?

(五つ目の「ショック」はいつ襲来?)
近代経済における幾つかの騒動…

ドルショック。
オイルショック。
リーマンショック。
コロナショック。

そして迷走(進行形?)の「フードショック」(五つ目の「ショックの輪」?)は真近?
地球という星の土壌と気候を迷わせてきた人類の経済活動に対し、ガバナンス・コード議論が伯仲している先進の国々とは対照的な地では、サバクトビバッタ等による穀物被害の再多発が危惧されています。中国の「新・富裕層」に群がる、国内の高級百貨店の実態も報道で知りましたが、前述のバッタ以上に、我々人類が食いつぶしている諸行動の方が、自滅/破滅を早めている様に思うのは私だけでしょうか。

自社の持続的成長しか見えていない経営層(=上場企業)に、真のSDGs的な「最後の直線でムチを打つ」様な騎手の出現(=迷走の修復)を、願っています・・・。

投稿: にこらうす | 2021年4月28日 (水) 13時13分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 改正公益通報者保護法に基づく指針案報告書が公表されました(その他、お知らせ) | トップページ | 東芝-CVCによる買収提案劇中断のモーメントについて »