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2021年6月30日 (水)

三菱電機の性能偽装(不正検査)事件はかなり罪深い(と思う)

6月30日の深夜に各メディアが報じた三菱電機の性能偽装(不正検査)事件。毎日新聞ニュースによりますと、「三菱電機が鉄道車両向け空調機器の製造過程で、長年にわたって出荷前に必要な検査を怠ったり架空のデータを記入したりしていたことが関係者への取材で判明。不正な検査は35年以上前から繰り返されていたとみられる。同社は『安全性に問題はない』としているが、詳しい社内調査や顧客への説明に着手した。」とのこと。

6月17日の日経朝刊に沢井製薬の社長さんのインタビュー記事が掲載されており、「小林化工の品質偽装によってジェネリックの信頼が大きく毀損された。時間を要することになるが、これから業界挙げて後発薬の信頼の回復に努めていきたい」と述べておられました。

三菱電機では、今年2月の自動車業界への性能偽装事件に続いて、今度は鉄道業界への性能偽装事件の発覚ということで、おそらく大きな不祥事に発展するものと思われます。ただ、三菱電機の偽装事件でもっとも罪深いのは(上記インタビュー記事と同様)「おそらく他の電機メーカーでも似たようなことをやっている」という業界全体の信用問題に発展することです。名門企業であるがゆえに、おそらく今回の性能偽装は「日本企業はどこでも性能偽装をやっている」という印象を世界に広げてしまうことになると思います。業界挙げて信用回復に努める必要があるという事態はとてもマズい。

こちらの記事が三菱電機の過去の不祥事をまとめていますが、それにしても同じ会社でなぜこんなに不祥事が次から次へと発覚するのでしょうか。おそらく組織としての根本原因があると私は確信します。普通の第三者委員会のようなものではなく、2年間程度の時間をかけて外部有識者で構成する「ガバナンス改善委員会」による調査と改善策の実践・検証(最終的には活動報告書の開示)は不可欠ではないでしょうか。会社法上の「社外取締役」ではなく、業務執行にまで手を突っ込める「非常勤社外取締役」(たとえば法律参与)を導入することも検討すべきです。今回の性能偽装事件の詳細が明らかになった時点でまたコメントをしたいと思います。

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2021年6月29日 (火)

法務担当者必携-解説・改正公益通報者保護法(新刊のご紹介)

51slm7sfes先週に引き続き、ご恵贈いただいた書籍のご紹介第2弾でございます。この週末にご献本いただいたのですが、ぜひともご紹介したい本がこちらです。解説・改正公益通報者保護法 山本隆司・水町勇一郎・中野真・竹村知己著 弘文堂 2021年7月1日初版 3,300円税別。

公益通報者保護法の改正に携わってこられた学者・立案担当者による(まさに待望の)改正公益通報者保護法の解説書です。公益通報対応体制の整備義務が課される常用雇用者300名超の事業者においては必携の一冊といえます。ちなみに帯書きは

改正法の立案に携わった学者・弁護士による解説書-制度および改正全体を概説するほか、改正に至るまでの議論や実務上の疑問点を踏まえ、改正後の全条文を逐条解説。具体的にイメージしやすいようQ&Aも収録。行政法・労働法の議論に基づく考察を行った、公益通報者保護法を真に理解するうえでの必読書

とあります。「著者一同」の皆様からご献本いただいたのは、これまで消費者庁公益通報者保護法制の実効性検討会委員としてのお役目を務めさせていただいたことと、山本隆司先生を中心としたジュリストの座談会に登壇したことからだと推察いたします。400頁を超える解説書をパラパラとめくってみますと、おそれ多くも拙著や私の座談会発言が少なくとも10か所以上で引用されており、少しうれしい(*^-^*)・・・(どうもありがとうございます!)。

本書が「法務担当者必携」と申し上げる意味は、単に新法の逐条解説書だからではございません。ご承知の方もおられると思いますが、今回の大幅な法改正によって条文数が大幅に増えましたが、その条文には「指針」に委ねられるところがあり、さらには条文の文言があいまいな点もあり、「罪刑法定主義の視点から」条文解釈がとても運用面において重要となるからです。つまり(もちろん最終的な条文解釈権は裁判所にありますが)かなり公的な立場から逐条解説によって条文の解釈が示されている、という点が本書の特徴かと(ちなみに「指針」については、消費者庁内の指針策定検討会の報告書が公表されており、本書の各条文の解説の中で指針の解説もなされています)。

しかも、本書には「第2編 逐条解説」においてかなり詳細なQ&Aが示されています。公益通報者保護法は、内部通報制度との関係で誤解されがちな点があるために、そういった誤解しやすい点を理解するために、このQ&Aはかなり有益です。さらには公益通報者保護法を理解するために労働法の視点と行政法の視点から、それぞれ著名な先生による解説が付されているという、まさに改正法を理解するうえでは最高の構成に仕上がっております。

Naibutuho090 ちなみに、左の図は私がこの5年ほど、内部通報制度の研修の際にPPTでお示しする図です(消費者庁主催の研修でも活用しておりました)。内部通報制度と公益通報者保護法との関係理解のためには、消費者法的視点、労働法的視点、会社法的視点、行政法的視点からの考察が必須です。ご著者の皆様はこのうち、3つの視点から改正法に向き合って解説しておられるわけでして、さらに会社法的視点については田中亘先生が改正法の審議に関わっておられたので、会社法的な視点も盛り込まれた逐条解説がなされていると言っても過言ではありません。したがいまして、内部通報制度の見直し、構築についても有益な一冊といえます。

本書も通読できればベストかもしれませんが、内部通報制度の見直しの際に、必要箇所を参考にするような活用方法でもよろしいのではないかと思います。いずれにしても、本格的な改正審議に5年間携わってきた私からすると、本当に「( ;∀;)ナミダモノ」の一冊であり、(筆者ではございませんが)多くの方に手に取っていただき、自社の内部通報制度の運用や、公益通報対応業務等の体制整備に役立てていただけばと思います。

なお、最後になりますが、本書が「改正に至るまでの議論」や「今後の課題」を詳細に説明している点はとても重要です。なぜなら、法改正にあたっては衆参両議院で附帯決議が示されましたが、その中で今後3年ほどでのさらなる見直しが検討されるようで、その見直しは「改正に至る議論から最後にこぼれてしまった重要なポイント」から見直される可能性が極めて高いからです(とくに公益通報者に不利益な処分を行った事業者へのペナルティは最重要でしょう)。私が「次の法改正」を見越した内部通報制度の見直しをお勧めする理由はココにあります。

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2021年6月28日 (月)

東芝・定時株主総会における圧力問題と行政手続法36条の3

先週金曜日(6月25日)は自身が社外取締役を務める会社の定時株主総会が開催されまして、今年も述べ5分程度は株主の方からの質問にご回答申し上げました。ご納得いただけたかどうかはわかりませんが、想定問答集に関係なく自身の思いを誠実にお話しさせていただきました。ちなみにあとひとつは6月30日です。

さて、先週まで諸々忙しかったので、遅ればせながら週末に6月10日付け東芝「会社法316条第2項に定める株式会社の業務及び財産の状況を調査する者による調査報告書」を拝見いたしました。といっても、ざっと一読させていただいた程度ですが。さすが会社法に定める調査権限者による報告書だけあって、本当に東芝経営陣(元経営陣含む)および経産省に厳しい内容が自信をもって認定されており、とてもおもしろい内容でした。

とくに興味深いのは後半の「圧力問題」です。機関投資家の議決権行使を不当に妨げたということでありますが、もし仮に東芝は経産省に対して外為法違反に基づく権限行使を求めた、つまり行政手続法36条の3に基づく「処分等の求め」を行ったとすれば、本件ではどう評価されるのでしょうか。報告書によると、経産省担当者は東芝側に(機関投資家による要求内容等を指摘したうえで)「申入書」の提出を促した、とありますので、ひょっとすると行政手続法36条の3を念頭に動いていたのではないかと(経産省は何ら説明していないので、真相はわかりませんが・・・)

ちなみに行政手続法36条の3というのは、

第三十六条の三 何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分又は行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し、その旨を申し出て、当該処分又は行政指導をすることを求めることができる。
2 前項の申出は、次に掲げる事項を記載した申出書を提出してしなければならない。
一 申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所
二 法令に違反する事実の内容
三 当該処分又は行政指導の内容
四 当該処分又は行政指導の根拠となる法令の条項
五 当該処分又は行政指導がされるべきであると思料する理由
六 その他参考となる事項
3 当該行政庁又は行政機関は、第一項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、当該処分又は行政指導をしなければならない。

という条文です。改正外為法には「是正措置に関する勧告」という「法律で定めた行政指導」に関する規定がありますので、もし外為法違反の疑いのある投資家の行動があれば、その情報を経産省に提供して適切に指導せよ、処分せよ、といった処分要求は誰でもできますよね(当然、法人である東芝も処分要求は申出書によって可能です)。また、行政手続法の解説書では、処分方針については後日要求者に対して結果を説明すべき、ともありますので、ある程度、東芝と経産省の間で隠密裏にコミュニケーションを図ることも想定された条文です(「逐条解説行政手続法」平成28年5月20日 一般財団法人行政管理研究センター編著 ぎょうせい 280頁)。本件ではこの行政手続法36条の3は適用されないのでしょうか。まあ、しかし報告書で示されたような事実が認められるとすれば(第三者を使って特定の投資家に議決権行使を思いとどまらせることを東芝と経産省で画策していた、という事実)そもそも行政手続法の適用場面ではない、ということかもしれません。ただ理屈の部分はきちんと整理しておく必要があるように思いました。

あと、昨年9月に初めて議決権への圧力問題が海外メディアで報じられてから、一部投資家によって臨時株主総会の開催請求が出される12月までの間に、東芝自身が(もしくは東芝の監査委員会が)第三者委員会を設定できる余地はなかったのでしょうかね。この点については、元監査委員会委員長の方の(第三者委員会を設置できなかった)説明(言い訳?)が報告書にありますが(91頁)、ここで中立・公正な第三者委員会が立ち上げられていれば(とても穿った見方ではありますが)6月25日の議決権行使結果(取締役会議長、監査委員の選任議案否決)のようにはならなかったような気がします。今回、株主の総意次第では、会社法に基づく強力な調査がなされるということがひとつの教訓となったはずであり、今後、不祥事が発生した会社、ガバナンスに問題が発生した会社では、すみやかに独立性の高い第三者委員会を自ら立ち上げることが増えるのではないでしょうか。

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2021年6月24日 (木)

証券取引等監視委員会の使命とは?ー「市場の守り人」

Sijomamori002 現役の証券取引等監視委員会委員の方から新刊書をご恵贈いただきました。中央青山監査法人、みすず監査法人、あずさ監査法人の代表社員、理事を歴任された後、2016年12月に証券取引等監視委員会の委員に就任された浜田康氏のひさりぶりのご著書です。

市場の守り人-証券取引等監視委員会の使命(浜田康著 同文館出版 2021年6月初版 3,400円税別)。出版元による紹介文では

公正性・公平性を高め、国内の投資者、海外企業や海外投資者から信頼される証券市場に向けた監視委員会の役割とは?より強力で実効的な機関とするためには何が必要かを検討する!

監視委員会は市場の公正性・公平性を高めるために何ができるのか?どのような権限や責任があるのか、国内外の投資者、消費者から信頼を得られる市場にするために何をすべきか、米国証券取引委員会(SEC)、英国金融行為規制機構(FCA)と何が違うのか(帯書きより)

とのこと。本書は今後多くの会計実務家、研究者の皆様からきちんとした書評が各会計専門誌にて登場するはずですので、内容に関する高尚な論評は会計のご専門の方にお任せして本書の概要のみお伝えいたします。

まず、なぜ私が浜田委員からご献本いただいたのか、と申しますと「内部統制報告制度の課題」のところで私の素朴な疑問を5頁にわたって真摯にとり上げてくださっており、浜田委員が正面から私の素朴な疑問に向き合ったうえで、一定のご理解を示していただき、その結果として証券取引等監視委員会の開示検査課の新たな取り組みに活かしていただいている、ということから、と推測いたします(2013年10月17日付けの拙ブログを本文でも引用していただき、さらには「この山口弁護士の主張内容がちょっとむずかしいので」ということで解説までしていただいております)。内部統制報告制度の運用上の課題については、ここ10年ほどブログでも何度か取り上げましたが、私の意見を(たとえ浜田委員の個人的意見としても)SESCの委員の方に検討していただけた・・・というのは本当にありがたいことです。これからも会社法及び金商法上の内部統制について研究を続ける励みになりました。

さて、本書は浜田氏の「勉強ノート」ということだそうですが、さすが現役の監視委員会委員の視点から、様々な論点について「監視委員会にもっと力を!」ということで浜田氏の個人的見解が述べられています(「もっと力を!」というフレーズは本書ではとても大事です)。最初の3分の1くらいまでは、取引調査課関係ということでインサイダー取引規制の現状を、証券検査課関係ということで金融商品取引業者規制の実状を、そして開示検査課関係ということで上場会社のモニタリングの現状をそれぞれわかりやすい文章で解説されています。中盤あたりからは特別調査課の告発事案に関する考え方(虚偽記載や公正なる会計慣行が問題となる事例等について)が、過去の著名な事件を参考にしながら示されており、我々「不祥事対応」に携わる者にとても参考になりますね。「勉強ノート」という位置づけからか、各テーマとも平易な文章で書かれていますので、上場会社の管理担当者の方、会計士、弁護士等にもお勧めの一冊です。

私も過去に「法と会計の狭間に横たわる諸問題」をとりあげた本を書きましたが、まさに後半部分は(さすがSESCの委員ということで)長年会計実務に携わってこられた方からみた「法と会計の狭間の問題」を丹念に問題提起され、また浜田氏なりの見解が示されています。法人の刑事責任、金商法上の開示責任(粉飾決算)の「再度の無過失責任化」、経営者確認書の罰則条項の創設、課徴金制度の見直し、会計裁判所制度や紛議調停制度の見直し等による被害者救済の拡大等、いずれも当ブログで私も検討したことがある内容が多く含まれています(ちなみに東芝の会計不正事件を取り上げて、今後、会計監査人の意見表明がどのような影響を受けるのか、といったお話しなどは「なるほど」と納得いたしました)。長らく改正されていない「会社法における刑事罰の改正」などにも触れられており、政策提言という意味においても多いに共感できます。おそらく当ブログにお越しの皆様なら関心の高いテーマをたくさん取り扱っておられて、興味をそそられる内容です。

Img_20210623_162714580ところで、浜田先生のご著書といえば、このブログを書き始めた頃(2005年)から次々と愛読している3部作がありまして、左の写真のとおり、私の蔵書にはたくさんの付箋が貼ったままであり、今でも参考にさせていただいております。とりわけ中央青山の社員でいらっしゃった頃はカネボウの粉飾事件に関与した監査法人、ということで会計不正事件の真っただ中におられたわけで(2002年「不正を許さない監査」参照)、事件が現在進行形だったときに会計監査人として何を思ったのか、その文章はいまでもはっきりと記憶しております。この「不正を許さない監査」では、中央青山監査法人側で、証券取引等監視委員会による調査に向き合う立場にあった方が、いま逆に委員会側の要職に就かれて何を思うのか、そのあたりを上記「守り人」から推察できるかもしれませんね。先日ご紹介した弥永先生の「監査業務の法的考察」とともに(ようやく好きな本をじっくり読める時間がとれるようになりましたので)本書でもしっかり勉強させていただきたいと思います。

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2021年6月23日 (水)

フォレンジック調査の有効性はチームとのコミュニケーションが最も重要と考える

6月10日に開示された(株主への圧力問題に関する)東芝の調査報告書はいろいろなところで話題になっています。その調査報告書では、AIを活用したメール分析が威力を発揮したことが6月12日の日経朝刊で報じられていました。東芝の調査は会社法316条に基づく調査委員によるものですが、一般の第三者委員会調査においても、もはやフォレンジック調査はあたりまえですし、テキストマイニングによる分析も、多くのフォレンジック事業者が行っているものと思います。

昨日まで私が委員として調査をしていた案件でも、大手のフォレンジック事業者のチームとともに2カ月間の調査を進めましたが、いくらAIを活用したとしても、一番重要なのは調査委員とフォレンジックチームとのコミュニケーションです。フォレンジックチームの方々に、調査委員会がどのような対象事実に関心を持っているのか、どのような事実が出てきたら委員会のヒアリングが前に進むのか、といった委員会活動全体の流れを理解していただけるかどうか。いくら委員会から重要な検索ワードをフォレンジックチームにお伝えしたとしても、いくらワード間の関連性をAIで分析したとしても、調査委員会の局面が大きく変わるということはむずかしいと思います。

今回の我々の調査委員会では、ほぼすべての委員会にフォレンジックチームにも参加してもらって、ヒアリングの進捗状況なども理解をしていただき、いまどんなメールが出てくれば、どんな事実が明らかとなるのか、たとえば今から10年前までメールを時系列に並べると、その時系列の流れはどんな重要事実を推認させることになるのか、といったことも、委員会からの指示なくしてフォレンジックチームの判断において調査を進めていただいたので、「このメールをヒアリングで出すことで、もはや言い逃れはできないだろう」と自信をもってヒアリングに臨めました。

もちろんフォレンジックチームの方々はプロとはいえ法律の専門家ではありません。したがって、委員会とのコミュニケーションはとても苦労されることと思います。ただ、100個探し出してくれたメールの中から、たとえ1個でも「お宝メール」が出てくれば、委員会も元気が出てきます。そういった貴重な経験を今回は何度もさせてもらいました(調査委員のほうでも、現時点でフォレンジックチームに何ができるのか・・・といったことへの理解が必要ですね)。

現時点での第三者委員会調査にはフォレンジック調査は不可欠、と言われており、データ解析やAI活用といった最先端の技術を駆使することに光が当たります。ただ、実際に調査に携わる者からすれば、フォレンジック調査にも技術的な限界はあるわけで、むしろ限りある資源を最大限に利用するためには、生身の人間どうしの意思疎通がどれだけできているか、意思疎通を図るスキルをお互い持ち合わせているか、その意思疎通のための時間をどれだけ作ることができるか、というところが大切だと思います(とりわけ今回の調査委員会では、そのようなコミュニケーションの重要性を痛感いたしました。事業者名を出すことは控えますが、本当にお世話になりました)。

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2021年6月22日 (火)

特別調査委員会の仕事終了・・・ブログ再開いたします。

某社の取締役会が特別調査委員会を設置したのが本年4月21日でしたので、丸2か月間、調査委員会委員長の仕事に没頭しておりました。今回も他の委員、委員補助者の皆様、フォレンジック・チームの皆様にたいへんお世話になり、本日(6月21日)、報告書最終版の提出とともに某社取締役会に出席して調査結果を報告することができました。

私の場合、3月~6月まで、計2社(いずれも東京本社)の調査委員会(委員長)の仕事をほぼ休憩なしでやり通しましたので、「よく体調を崩さずに4か月間仕事ができたなぁ・・」というのが実感でして、周囲に迷惑をかけずに全うできたことにホッとしております。対面によるヒアリングもこなしましたが、時節柄「リモートによるヒアリング」も併用できたので、なんとか体力が続いたのかもしれません。

実は二つの調査委員会には共通点がありまして、いずれも著名な弁護士の方々が作成した調査報告書が存在しているにもかかわらず、(諸々の理由により)その報告書を超える「再調査報告書」を作成しなければならない、といった「とても要求水準の高い仕事」でした。果たして超えられたかどうかは、読まれる方のご判断に委ねるしかありませんが、いろんな方にお尻を叩いてもらったから出来たことでありました。とりあえず次の調査案件の予定は入っておりませんので、少し休みたい(笑)

ということで、ブログのほうも長い間ほとんど書けていなかったので、(私が役員を務めております会社の)定時株主総会が終了したころから、少しずつ更新頻度を高めていくつもりです。また御贔屓によろしくお願いします。

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2021年6月15日 (火)

今年は「有事に直面する監査役(監査役員)」の話題が豊富ですね。。。

コーポレートガバナンス・コードの公表や東芝の調査報告書の指摘事項等、世間を賑わせている話題から完全に取り残されておりますが(;゚Д゚)、いよいよ特別調査委員会の仕事もあと1週間、ということでして、ブログの更新ももう少しで復活でございます。

そもそもインプットする時間がないので「ブログを書きたい!」という衝動も湧いてこない状況でありますが、さすがに世間を眺めてみると、今年は監査役(監査役員)に関連する話題が多いことに気づきます。本業が少しヒマになったら書きたいネタとして、①日産元会長事件発覚の端緒となったI常勤監査役の調査権限の行使、②ユニデンホールディングス常勤監査役の限定付き監査意見とこれに対する経営執行部の反論(6月14日も火花が散っています)、③アルケゴスショックで巨額損失を発生させた(と言われている)野村HDの監査委員候補者への議決権行使助言会社による反対推奨意見、④東芝調査報告書の指摘に基づく監査委員候補者の変更、⑤天馬における監査等委員会と経営執行部とのさらなる攻防・・・。いずれも、ガッツリ個人的な意見を述べたいものばかりであります。

「攻めのガバナンス」が謳われる中で、問題が発生すると「守りのガバナンス」の要となる人たちの責任が問われる、ということでしょうか。リスクの顕在化を100%防ぐためには、そもそも顕在化しない可能性が高い場面でも利益獲得行為を止めなければならないのは当然(つまり「オオカミ少年」を尊重しなければいけない)わけですが、機関投資家の方々はこれをどう理解されているのでしょうか。会社に損失が発生したからといってリスクマネジメントの責任者が更迭されるとなれば、もはや「運」に頼るしかないように思います。むしろ普段から「守りのガバナンス」の運営状況に機関投資家の方々がどれだけ気を配っているか・・・今後はそこに注目すべきかと。

いずれにしましても、監査役(監査役員)と経営執行部との対立が顕著となった場合には、どちらの行動が正しいのか、株主の皆様に判断していただけるような情報開示こそ、取締役の善管注意義務の実践ではないかと思います。大株主を代表する社外役員(社外取締役、社外監査役)が増えるとなれば、今後は身内の紛争もオープンにすることが「株主から信認を得られる姿勢」として評価されるのかもしれません。

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2021年6月 8日 (火)

トヨタ自動車パワハラ事件にみる「ビジネスと人権:行動計画」の重要性

6月8日10:45 最終更新

第三者委員会の業務もあと2週間、ということで、まだ時間的な制約がある中、本日も短めのエントリーで失礼します。今朝(6月7日)の朝日・毎日新聞の1面記事で「男性社員の自殺 パワハラが原因と認定 トヨタ社長が謝罪 遺族と和解」とありましたが、トヨタ自動車の社長さんが(和解の席で因果関係を認めたうえで)上司のパワハラで自死された社員のご遺族に(2度にわたって)パワハラ事件の再発防止策を説明されたそうです。

お恥ずかしい話ですが、企業側のパワハラ調査を担当する者として、大きな企業の社長直々にご遺族との面談に出向き、陳謝をして再発防止策を誓うというのは経験したことがないので、この報道にはたいへん驚きました。政府の「ビジネスと人権に関する行動計画」(令和2年10月)ではハラスメント対策が重点項目とされていますし、ガバナンスコード改訂2021版でも「人権尊重」が補充原則の中に盛り込まれることになりますので、パワハラ撲滅は企業のリスクマネジメントにおいて優先順位が上がってきたことは間違いないと思います。

少し話は違いますが、5月28日の朝日新聞朝刊(東京版10面)に「投資信託保有者2万人アンケート」の結果として、ESG経営に対する投資家の意識が示されていましたが、50代~70代の投資家が「環境問題の改善、再生エネルギーの普及に取り組む企業」を投資対象とする、という回答が圧倒的に多かったのに対して、20代~30代の投資家は「貧困・飢餓問題、教育格差の是正、ジェンダーフリー、女性活躍推進に取り組む企業」を投資対象とする、という回答が圧倒的に多かったことに関心が向きました。若い方はESGの「S」に関心が高いことが示されています。ハラスメント問題への世代間ギャップは、経営層にとって要注意です。

パワハラを生む企業風土を変えるための一番の特効薬は、やはり社員に共感されるストーリーです。トヨタ自動車のトップ自ら和解の場に出向き、再発防止を誓う、というのは大きな「ストーリー」になりうるものかもしれません。トヨタ自動車の上記記事では、多くの社員が「見て見ぬふり」だったことが報じられていますが、ストーリーによって変えなければならないのは(パワハラ行為そのものよりも)「見て見ぬふり」に徹する多くの社員の意識ではないか、というのが実際にパワハラ調査業務に携わっている者としての心境です。

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