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2021年7月25日 (日)

「ビジネスと人権」を時間軸で考える-長島愛生園見学

Line_111038789583650_400 連休を利用して岡山県瀬戸内市にある国立療養所長島愛生園に行って参りました。瀬戸内海に浮かぶ長島は、1987年に架けられた「人間回復の橋」によって車で行けるようになりましたので、見学に訪れる方も多いようです。

最近はESGL経営の一環として「ビジネスと人権原則」の実践に関心が寄せられることもあり、日本でも人権デューデリジェンスを義務化する国内法が制定される前に、一度「差別と偏見」に関する重要な歴史を検証したいと思いました(なお、すでに昨年来、日本の「差別と偏見」の長い歴史を持つ場所に何カ所か伺っておりますが、長島は「世界遺産登録」を目指している土地、ということなので紹介させていただきます)。現在もハンセン病の後遺症をもつ患者の方々が100名ほど入院されていて、その生活ぶりも初めて間近で拝見することができました。

少年時代、家族に別れを告げてここに連れてこられた方の人生日記など、感傷的になりそうなエピソードはここでは控えます。ただ、この島は今でこそ「差別と偏見」を象徴する負の遺産であると誰もが認める場所ですが、現在進行形で隔離政策が実施されていたころの日本人の考え方に思いを寄せる必要があると思います。私たちも、ひょっとしたら50年後、100年後に「あれは差別と偏見だった」と後世から批判されるような誤認や誤評価を日常生活においてやっていないのだろうか、と。いや、そういった誤認や誤評価でやり過ごしているからこそ(愚かなバイアスに支配されながらも)、なんとか生活ができているところもあるのではないか、と。

近時、国際的にも「ビジネスと人権」への対応が企業に求められていますが、国内にせよ、海外にせよ、人権問題に企業が踏み込むにあたっては、その時間軸から理解をしなければ、かえって企業の存立に重大な影響を及ぼしかねないリスクを背負い込むのではないでしょうか。環境問題への対応にも「企業哲学」が必要ですが、人権問題への対応にはさらなる困難があるように感じております。2年前に国が控訴を断念したハンセン病家族国賠訴訟の歴史を眺めただけでも、事業経営者が人権を取り扱うことにためらいとかおそれを感じてしまうのは私だけでしょうか。

写真は、かつて病棟として使用されていた建物の1階にある喫茶室(5周年だそうです)から眺めた瀬戸内海の風景です。このあたりにかつては「船着き場」があったそうです。この風景と島の歴史とのギャップはとても大きい。まだまだ疑問がたくさんあるので、また愛生園に伺おうと思っております。

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