改正公益通報者保護法-内部通報者による外部通報(内部告発)への対応
日経新聞では(ひさしぶりに)8月14日、15日と続けて改正公益通報者保護法関連のニュースが掲載されていました。いずれも8月中に改正法上の「指針」の中身が8月中に公表される、来年施行の改正法に対応する内部通報制度の見直しが必要、とのニュースです(私も指針の公表時期については存じ上げませんでした)。指針案はこちらのHPで4月に公表されていましたが、正式な指針とともにパブコメに関する政府(消費者庁)の見解が示されるので、対比して検討してみたいです。今後は、来年5月頃(?)の改正法施行に向けて「指針の解説」や「好事例集」なども公表されるものと思料されます。
ところで今回の法改正によって、(内部通報制度の見直しの必要性から)内部公益通報への関心が高まっておりますが、外部通報(内部告発)への対応についても検討をしておいたほうがよさそうです。何度も申し上げるとおり、行政通報の要件が緩和されること、行政機関に外部通報への対応体制の整備義務が定められることから、重要事案に関する外部公益通報(内部告発)が間違いなく増えることが予想されるからです。
たとえば過去の品質偽装事件について内部通報した場合に、会社は是正措置として偽装を止めたとして通報者に是正措置を通知します。しかし通報者は「止めただけでは足りない、出荷先へ報告し、社外に公表せよ」と会社に要求した場合、会社はどう対応すべきか。このような場合、放置していると内部通報者は外部通報へと向かうことがあります。内部通報によって通報者の秘密は社内でも守られることになり(守られなければ刑事罰の適用、もしくは懲戒処分、さらには法人への行政処分)、さらに社内の対応業務従事者とのコミュニケーションによって手元に相当の証拠が残りますので、監督官庁だけでなくマスコミへの通報も公益通報者保護法によって保護される可能性が高い。つまり内部通報を前置すると、安心して外部通報ができる、ということになりそうです。
上場会社における会計不正事件などは、いったん内部公益通報を行った後、対応に不満がある場合には会計監査人に外部公益通報を行う(内部告発を行う)、ということも考えられます。会計監査人としては、内部通報が先行しているからと思って、通報者の特定情報をうっかり会社に漏らす、ということになりますと(通報者の存在は法律上の「公益対応業務従事者」しか知らない、ということもありますので)職業倫理上の問題(守秘義務違反)が発生する可能性もあります。会計監査人も改正公益通報者保護法はしっかり勉強しておかないとマズイと思います。
いずれにしても、改正法への対応として、迅速適確な社内調査が求められるわけですが、誰が通報したのか、という点を明らかにしないままの社内調査はとてもむずかしいのです。通報者の秘密を守りながら、通報者による外部通報(内部告発)に対応するというのは、今後いろんなところで失敗事例が発生すると思います。できればそのような失敗事例を積み重ねて「公共財」として、公益通報者保護法の目的を達成できるような実務を築ければよいですね。
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