コーポレートガバナンス・コード改訂2021の楽しい勉強法について
8月9日に出版されたばかりの「コーポレートガバナンス・コードの実践 第3版」(武井一浩氏編著 日経BP 2,800円税別)をご著者の方から献本いただきました(たぶん西村あさひの武井一浩先生ですよね?どうもありがとうございます🐱)。先日、2度目のコード改訂が行われましたので、本書ももう「第3版」なのですね。改訂2021への各社対応は、今年12月更新までのガバナンス報告書で明らかになりますので、このタイミングでの第3版は各社が参考にされるでしょうね。それにしてもご著者の皆様はお忙しい中、タイムリーに改訂作業を進めておられるのには頭が下がります。さっそく改訂部分を中心に拝読させていただきます。
ところで企業統治改革が始まってからすでに6年~7年が経過しますが、コード改訂版はかなり「てんこ盛りガバナンス」の内容に仕上がっているように思われます。そこで、合格最低点を目指して、改訂版をいかに「楽しく」勉強するか、ということを考えることも大切です。先日、コード改訂実務に近い立場にあった方のプライベートな講演会を拝見(WEB)しましたが、その際にとても面白いコメントが聞かれました。コード策定時(2014年ころ)と現在とでは、「中長期的な企業価値向上のためのガバナンス」という改革の方向性はブレていないけれども、なんだかいろんなものがくっついちゃった、とのこと(笑)。このあたりが「楽しい学習」のための切り口になりそうです。
ご承知のとおり、2014年頃から今年に至るまで、ガバナンス関連のいろんな「指針」やら「ガイドライン」やらが経産省、金融庁、法務省、内閣府を中心に策定されていますが、これらは各省庁担当課長の「実績作り」の一環だそうで、異動前になると、成果品として各省庁から発表されるのが常のようです。それぞれの担当課長の成果品であるがゆえに、コード改訂の際にもどこかで成果品たる指針やガイドラインの趣旨を盛り込まねばならないということになり「ずいぶんといろんなモノが改訂版にくっついちゃった」結果になってしまったとか・・・( *´艸`)
私も財務省のアドバイザーや有識者メンバーに就任していますので「なるほど」と思いましたが、たしかに官僚の皆様には(実績のための)「異動の花道」がありますよね(その「花道」を首尾よく作ってあげて気持ちよく異動させる部下はきっと出世するのでしょうね)。ここ5年ほど、〇〇実務指針とか▽▽ガイドラインなるものがガバナンス・コードの周囲にもたくさんできましたが、年を追うごとに増えていることは明らかでして、それらすべてにコードが「挨拶」をしておりますと、改訂版の中身は必然的に分量が増加し、内容も複雑化してくるわけです。では、改訂部分のどこが、どの指針やガイドラインと結びついているのだろうか・・・といったあたりを考えながら勉強する、というのも頭に残りやすい(理解しやすい)学習法かもしれません(いや、完全に個人の趣味かもしれませんが・・・)。
そういえば思い出すのが平成18年会社法改正のときの法制審議会委員だった方々の座談会記事(旬刊商事法務)。法制審における改正作業の最終コーナーを回ったあたりで某自民党議員の方による突然の「内部統制に関する条文挿入」の要望があり、いきなり「体制整備に関する決議義務」が法文化されましたね。商事法務の座談会では「いままで議論もしていなかった条文の突然の挿入について『いやァ、変なものが入ったちゃったなァ』という気持ちでした」と和気藹々な雰囲気で法制審委員の方々が語られていました。(これは私の推測ですが)あの当時から法務省官僚の方々の意向が学者委員の方々の意見よりも強くなってきたのではないかと。その後、金商法上の内部統制と会社法上の内部統制との関係など、理屈の上で難問が出てきたことは皆様ご承知のとおりです。
そのように考えますと、今回の改訂2021への対応については(周囲を見回しながら)理路整然と「コンプライ」することにこだわるよりも、会社としてどのように稼ぐのか、そのストーリーに必要な範囲でコードを自由に解釈して「対話に役立てる」「コンプライにこだわらない」姿勢が投資家にも、また経営陣にもウケが良いのではないかと思います。コンプライにせよ、エクスプレインにせよ、なぜ当社のガバナンス構築が中長期の儲けにつながるのか、そこの説明に必要な範囲で改訂版コードを活用すべきではないかと思います。
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