関西スーパー株式争奪戦を社外取締役の視点で考える
本日(日曜日)も妻と一緒に天王寺に出かけて、イトーヨーカドー(アベノキューズモール)と関西スーパー(あべのベルタ)で買い物をしておりました。私はどっちも好きですが、客層を見ると共存共栄してますよね(笑)(以下、本題です)。
もうすでに多くのメディアで報じられている関西スーパー社(東証1部)の株式争奪戦(上場会社であるH2Oリテイリング社と非上場のオーケー社による資本業務提携の提案)については、2021年10月29日に開催される臨時株主総会がひとつの節目となる様相を呈しております。8月31日の関西スーパー社リリースおよび9月3日のオーケー社リリースを読みますと、様々な視点から本件を議論することが可能ですが、私としてはやはり関西スーパー社の独立社外取締役の視点から、ということに興味がわきます。
子会社化の対象とされた上場会社の社外取締役が、提携先企業をどちらとするか、中立公正な立場で特別委員会の構成員となって判断する、というのは2019年6月~8月に繰り広げられたココカラファイン争奪戦によく似ています(あのときは双方とも上場会社であるマツキヨとスギHDでしたが)。マツキヨ社は当時「マツキヨの取締役会でもどちらと組むべきか議論していたが、たまたま特別委員会の答申内容と一致した。あくまでも特別委員会の意見は参考意見」ということだったように記憶しておりますが、今回の関西スーパー社の公表内容をみると「取締役会としては特別委員会の意見は最大限尊重する」とあります。
そのうえで、このたびの特別委員会の構成員には関西スーパー社の独立社外取締役の全員が構成員として入っておられるので、本当に責任重大ですね。まさに中立公正な立場で委員としての職務を果たす必要がありそうです(ちなみにリリースを読みますと、社外取締役の皆様には役員報酬とは別に特別報酬が支払われるそうです!(^^)!)。なお、関西スーパー社は、オーケー社からの質問内容にさらに丁寧に回答する予定がある、と関西スーパー社の9月3日リリースで述べておられるので、そのあたりも社外取締役に就任しておられる皆様方には注目していただきたいところです。
さて、ここからは私の勝手な個人的意見ですが、このような企業価値算定に関する特別委員会委員に就任する社外取締役としては(私も過去に同じような立場で委員長を務めた経験から)、会社の有事に向き合う姿勢として2つのことを考える必要があります。ひとつは有事ですから、社外取締役としての善管注意義務を尽くすというリーガルリスクへの配慮です。何があっても社外取締役が裁判で負けないための行動、ということを考えますと、8月31日の関西スーパー社リリースに記載されているような特別委員会としての行動はほぼ100点満点ではないかと個人的には評価しております。これは社外取締役からみれば「敗訴リスクへの対処」です。
しかし社外取締役は「敗訴リスク」だけでなく「提訴リスク」にも配慮する必要があり(そもそも訴えられないためにはどうすべきか-一般株主の共感の問題)、これは少数株主の立場から、社外取締役がいかにエージェンシーコストを下げるために尽力したか、という一般株主の納得感です。どんなに頑張ってみたところで、社外取締役自身に利益相反状況が存在しないことをきちんと説明しなければ「所詮は会社側に立って判断したに過ぎない」との少数株主の疑念はぬぐえません。そして、社外取締役の利益相反状況がないことの説明に必要なのが「私は統合提案が出されているいずれの会社から申し出があったとしても、統合後に社外役員として残ることはありません」と明言することです。
この点について、非上場かつオーナー色の強いオーケー社が事業を統合した場合には、おそらく関西スーパー社の独立社外取締役が新しい組織で社外役員として残ることはまずないと思われます。しかし、H2Oリテイリング社が統合した場合には、関西スーパー社の独立社外取締役への処遇は明確には説明されておらず、グループ会社もしくは親会社の社外役員として残る可能性があるようにも読めます(すくなくとも、私には8月31日のリリースではそのように読めました)。ということで、私は自分の経験という狭い視点からではありますが、「提訴されるリスク」を低減させるためにも、特別委員会を構成する社外取締役の方々は、関西スーパー社がいずれの会社と事業を統合する場合にも、あらたに社外役員には就任しないことを宣言することが、まず一般株主から共感を得るための第一歩だと考えております。
たぶん、そこがはっきりしないと、特別委員会の意見と会社の意見が(たまたま)一致したとしても、一般の株主が特別委員会の判断理由に納得しないのではないかと。
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