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2021年11月15日 (月)

東芝ガバナンス強化委員会報告書が示したコンプライアンス上の視点について

すでに皆様ご承知のとおり、東芝は(独立社外取締役5名により構成される戦略委員会の判断によって)総合電機メーカーとしての看板を下ろして事業をスピンオフし、3つの独立会社とする方針を決定しました。ガバナンス改革の潮流にも乗り、東芝による主体的な判断であることは確かだと思います。ただ、2014年の2名の社員による(会計不正に関する)内部告発が端緒となり、紆余曲折を経てこのような結果に至ったことについて、いろんな思いが湧いてきます。

そして、この報道によってそれほど話題になりませんでしたが、同日(11月12日)、「ガバナンス強化委員会によるお知らせ」として、2020年7月に開催された東芝定時株主総会における「圧力問題」に対する役員の責任(法的責任及び経営責任)を判定した報告書が公表されました。自身の本業にも役に立つものと思い、当該報告書にざっと目を通しました。

当該報告書にはいろいろな論点が含まれていますが、コンプライアンス経営という視点からは二つのポイントがあるように思います。ひとつは取締役・執行役の法的責任(善管注意義務違反)が認められない場合でも「市場が求める企業倫理上の視点」から経営責任を問いうる、ということです。おそらくこのような報告書では、市場が求める企業倫理の中身を対外的にも説得力のある理由で示すことが重要だと考えました。

そしてもうひとつがコーポレートガバナンス・コードが求める役員の行動規範、開示規範に反する行為があったとしても、(そして企業自身が当該コードをコンプライしていると宣言していたとしても)それだけで役員に善管注意義務違反が認められるわけではない、という点を明らかにしたことです。

私は2015年以来、当ブログでもこの点について問題提起しておりましたが、「コード自身はソフトローだとしても、実施すると宣言した以上は、これを実施しなければ善管注意義務違反になるのでは」と言い続けておりました。この点、結論については諸々申し上げたいことはございますが(なかなか詳細に述べる時間的余裕がございませんので)ガバナンス強化委員会報告書を生きた題材として、また議論が進展することを期待しております。

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コメント

日経XTECHの連載記事「ゲンバはこうして崩壊した」シリーズ第60回指示徹底の崩壊(本年11月11日)に、本当に怖い基礎力「ものづくり1.0」の弱体化『「いまさら言えない」と品質不正に手を染めた工場』があります。3頁には、「情報の見える化によって抑止する」があります。強い歯止めが効かなくなった組織の責任は、本当のところ誰がどのような責任を取るのかがわからなくなっているような気がしてなりません。米国のように経済犯罪者用の施設に収監することも視野に入れるのも本当の抑止になるにではないでしょうか?歴代の社長が理系出身者で、ひょんなことで文系社長が登場する。今までも、(知らなかったまたは知っていた)責任を取った社長が顧問になるというのも今後も出てくるのでしょうが?

投稿: Candy Candy | 2021年11月15日 (月) 07時27分

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