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「タテ社会の人間関係」ほか、中根千枝先生のご著書は私の仕事上でのバイブルであります。何度読み返したか、わかりません。
自分自身を客観視する、というクセも中根先生の本を読んで身についた気がしますし、なによりも「正解よりも問いを見つけることが大切」ということを、常に心掛けるようになりました。一番新しい「タテ社会と現代日本」の続編が読めなくなると思うと残念です。
94歳で「老衰」で亡くなられた、とのことで、長寿を全うされたのですね。謹んでご冥福をお祈りいたします。
2021年11月 5日 (金) 未完成にひとしいエントリー記事 | 固定リンク
山口先生、前に某協会長浜合宿で2年続けてお世話になりました。 以下は(1)刊行時に私の同業者に向けて書いたものです。ご笑覧のほど。
(1) 中根千枝 著、現代新書編集部 構成「タテ社会と現代日本」講談社現代新書、2019年。
新聞広告か何かでこの書名(1)を見たとき、一瞬、かの古典(2)が覆刻されたのかと思いました。 学生時代に著者と書名を知り、いずれ読まねばと思いながらそのままになっていたのです。
考えてみると、当時影響を受けたのは、今西錦司、桑原武夫、梅棹忠夫、多田道太郎、梅原猛、加藤秀俊、本多勝一等々 どちらかといえば京大系の論客が多く、私の誤解かもしれませんが、彼らは中根には批判的というか距離を置いていたような気がしました。
(2) 同 著「タテ社会の人間関係 単一社会の理論」同、1967年。
さて代表作から「52年目の続編!」((1)の惹句)を手にとってみると、附録として、(2)の原型となった論文(3)が再録されています。 むしろこの方が貴重かもしれません。時代順にと思って(3)から読み始めました。
(3) 同「日本的社会構造の発展 -単一社会(ユニラテラル・ソサエティ)の理論-」「中央公論」1964年5月号、中央公論社。
社会人類学固有の方法論を学んだ経験はないのですが、「序論」ではその概要を短くまとめていて親しみやすく感じられました。 しかし本論はフィールドワークの対象が限定的との印象を否めず、日本社会全般を解釈する基礎理論としての説得力は強くありません。
とはいえ示唆に富む断章は多く、たとえば 「(略)『家』『一族郎党』を構成した人々は、近代社会に入ると『国鉄一家』的集団を構成する。」(140頁)
「(略)親分・子分というものに象徴される人間関係は、政治家やヤクザの世界ばかりでなく、実際、進歩的思想の持主だとか、(略)、 あるいは最先端をゆく大企業の中で働いている人々の中にも、みられることが指摘できるのである。」(177頁)
(1)の本文は著者へのインタビューをもとに編集部が構成したものです。(3)の立論を背景として現代日本社会の諸相をとらえています。 我々監査役にとっては、内部統制の限界をなす統制環境、とりわけ組織風土を読み解くのに有益な示唆は得られるかもしれません。
投稿: 某協会会員 | 2021年11月 9日 (火) 08時38分
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山口先生、前に某協会長浜合宿で2年続けてお世話になりました。
以下は(1)刊行時に私の同業者に向けて書いたものです。ご笑覧のほど。
(1) 中根千枝 著、現代新書編集部 構成「タテ社会と現代日本」講談社現代新書、2019年。
新聞広告か何かでこの書名(1)を見たとき、一瞬、かの古典(2)が覆刻されたのかと思いました。
学生時代に著者と書名を知り、いずれ読まねばと思いながらそのままになっていたのです。
考えてみると、当時影響を受けたのは、今西錦司、桑原武夫、梅棹忠夫、多田道太郎、梅原猛、加藤秀俊、本多勝一等々
どちらかといえば京大系の論客が多く、私の誤解かもしれませんが、彼らは中根には批判的というか距離を置いていたような気がしました。
(2) 同 著「タテ社会の人間関係 単一社会の理論」同、1967年。
さて代表作から「52年目の続編!」((1)の惹句)を手にとってみると、附録として、(2)の原型となった論文(3)が再録されています。
むしろこの方が貴重かもしれません。時代順にと思って(3)から読み始めました。
(3) 同「日本的社会構造の発展 -単一社会(ユニラテラル・ソサエティ)の理論-」「中央公論」1964年5月号、中央公論社。
社会人類学固有の方法論を学んだ経験はないのですが、「序論」ではその概要を短くまとめていて親しみやすく感じられました。
しかし本論はフィールドワークの対象が限定的との印象を否めず、日本社会全般を解釈する基礎理論としての説得力は強くありません。
とはいえ示唆に富む断章は多く、たとえば
「(略)『家』『一族郎党』を構成した人々は、近代社会に入ると『国鉄一家』的集団を構成する。」(140頁)
「(略)親分・子分というものに象徴される人間関係は、政治家やヤクザの世界ばかりでなく、実際、進歩的思想の持主だとか、(略)、
あるいは最先端をゆく大企業の中で働いている人々の中にも、みられることが指摘できるのである。」(177頁)
(1)の本文は著者へのインタビューをもとに編集部が構成したものです。(3)の立論を背景として現代日本社会の諸相をとらえています。
我々監査役にとっては、内部統制の限界をなす統制環境、とりわけ組織風土を読み解くのに有益な示唆は得られるかもしれません。
投稿: 某協会会員 | 2021年11月 9日 (火) 08時38分