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2021年11月 9日 (火)

関西スーパー経営統合事案に法廷闘争という「第2ラウンド」がありそうですね

(9日午前 追記・更新)

つい先日、「関西スーパーの臨時株主総会-オーケーに学ぶこれからの戦略法務の在り方」なるエントリーにて、オーケー(スーパー大手)の経営者は潔い負けっぷりだな・・と書きましたが、11月8日の日経スクープ記事によりますと、10月29日の関西スーパーの臨時株主総会で決議されたエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)グループとの株式交換契約について、オーケーは9日にも神戸地裁に差し止めの仮処分を申請する方針を固めたそうです。

オーケーは「総会検査役の報告書で明らかになった議決権集票の過程に問題がある」と判断したことが紛争再燃の理由とのこと。たしかに総会検査役の報告書の内容が日経ニュースのとおりであるなら、統合決議の結果がひっくりかえる可能性が出てくるわけですから、オーケー側が経営統合の差し止めを求めて提訴することも納得します。

私の見立てが間違っていないとすれば、関西スーパー、オーケーいずれの陣営もアドバネクス事件の東京高裁判決(2019年10月17日付)の射程距離をどう理解するか、というところをきっちり押さえた上での法廷闘争になると思います。関西スーパーにとって「自分の議決権行使結果を確認したい」と申し出た法人株主が議決権行使書とは異なる内容で議決権を行使する意思を有していないことが明らかだったといえるのか、つまり法的な意味での「出席」はしていなかったと評価できるのかどうか。アドバネクス事件の場合とは状況が異なるように思えるので、とても微妙な問題を抱えているようです。(9日午前の日経ニュース更新版を読むと、総会現場では間違いが起こらないように「十分なアナウンスはあった」とのことで、このあたりも裁判では斟酌されるかも)。

また、議決権の事前行使で「反対」としながら、当日出席して賛成票を入れた株主さんはいなかったのでしょうかね?いったん票読みが終わった後で、個別の株主からの申し出を認めて、その結果を決議に反映させるということになると、会社側の恣意的な総会運営を許すことにならないのでしょうか。

ただ、そもそも僅差となることがはじめからわかっていた株主総会であり、総会検査役まで選任されていたのですから、関西スーパー側が、本件のような株主権行使は普通に想定されていたはずです(実出席者も130名程度の総会なので、本件のようなことが起きないように総会の受付において確認しておくことはできたはず)。関西スーパーの株主総会で、アドバネクス事件のような会社法上の論点が浮上することにとても驚いております。

それにしても株主総会の検査役は重要な役割を担っていることがわかります。

(9日午前追記)こちらの毎日新聞ニュース(有料版?)を読むと、さらに緊迫の現場の様子がわかります。これはたいへんですね。

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コメント

私は姓名上、男/オスに属して半世紀余り…過去に食品関係のマーケティングや広報等の末席を濁す仕事に携わった中で、下記の展開を耳にしました。

(カップ麺の「どん兵衛」が関東と関西では味付けが異なる)とか、
(ポカリスエットの調合が、東日本と西日本では変えている)とか。
最近では、サントリーの「金麦」ビールは、四季それぞれで内容を変えているというTVCFに触れると、(それにかける生産現場や、広報コストを売価に転嫁しつつも、安値合戦で勝たねばならない…)週に数回スーパーで買物をする度に、食品メーカーのSDGsって何だろう?と考える時があります。

原材料の麦類や、石油を筆頭とする鉱物資源を原資にするプラ/金属容器なくして製品化/売上/企業利益が成立しないビジネスモデルを、その原資の大半を自給も出来ず輸入に依存する国内で、一体いつまで続けるのでしょう?

そんな製品が何百、何千(ひょっとしたら何万?)と陳列販売するスーパー各店舗。そして日々の特売チラシに目を皿の様にして店に向かうのに主婦達さえもクルマを使って…数円の安さメリットを求める為にガソリン使って排気ガスを排出、郊外型店舗には週末となれば、駐車する為に渋滞を引き起こす…けれど、スーパー各社に、気候変動の相応的責任は付加されていません。

企業の価値を、これからどの視点で、評価/判断する事が重要なのでしょう。

H2O=水の星:地球と、児童の教科書などで例えられていますが、
子ども達のお手本となるオトナの我々は今、各国の代表と称されるトップの人達が顔を揃えて、真剣(?)にCOP26という会議で問題解決に向けて、問題解決の解答を出せている(本当?)。

その動きの下で、市民の消費活動と、企業の生産/販売活動は、どれほど、昭和の時代から変化/改善したのでしょう。

鶏が先か、卵が先か?の例えではないにしても、国内のビジネス及び、市場:マーケットの視点から、独裁又は軍事政権では無いはずのJAPANにおける社会全般の正常展開に、我々は本当に進んでいるのでしょうか。

企業経営に携わる一人一人/1社1社、そして法治国家の下で活躍されている方々の「これまで」から「これから」への行動変容…が今ほど問われている時代はない…と感じているのは私だけでしょうか・・・。

アメリカのビジネスを参考にしたとされるスーパーマーケット。その経営戦争を勝ち抜く為の様々な工夫と知恵の合戦…山口先生の本エントリーで登場されている2社はじめ、流通関係各社の今後の動向を鳥瞰的に眺めさせて頂こうと、僭越ながら、思ったりしています・・・。

投稿: にこらうす | 2021年11月11日 (木) 17時14分

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