関西スーパーの臨時株主総会-オーケーに学ぶこれからの「戦略法務」の在り方
週末の日曜日(10月31日)、妻と一緒に投票を終えて、相も変わらず天王寺に買物に出かけまして、近鉄百貨店の「バッファローズ優勝記念セール」でお値打ち冬モノを購入してまいりました。その後(これもいつも通りですが)あべのベルタの関西スーパーにも出かけましたが、こちらは「株主総会勝利記念セール」はやってなかったみたいで、いつもの風景でした。(=^・^=)ホント、隣のイトーヨーカドーとの共存共栄は、老舗の関西スーパーあべのベルタ店における「品ぞろえの妙」としか言いようがありません(笑)。
それにしても10月29日(金)の関西スーパー臨時株主総会はずいぶんと盛り上がりましたね(全国紙でも大きく取り上げられていましたね)。議決権行使について2時間以上かけて集計されましたが、会社案への賛成が66・68%という信じられない僅差だったそうです。可決には出席株主の3分の2以上の賛成が必要で、そのラインをわずかに上回る結果となったわけで、H2Oリテイリングとの経営統合が成立し、オーケーはTOBを断念することになりました。
関西スーパーが取引先株主らに対して「出席せずに議決権行使を棄権してほしい」と要請していたことが日経ニュースで報じられていましたが、もしそうだとするとガバナンス・コードとの関係では若干問題があるように思いました。ただ、私のような「場末の弁護士」のそんな懸念をふっとばしたのがオーケーの経営者の言動でした。こんな僅差による敗北は受け入れがたいのでは?不服申し立てはしないのか?との記者からの質問に対して、オーケーの経営者は「しっかりと総会検査役にみてもらったのだから(結果は受け入れる)」との発言(10月30日 産経新聞朝刊関西版のインタビュー記事より)。経営支配権を争う当事者(しかも負けたほう)から総会検査役へのリスペクトの言葉など、今まで聞いたことがありません。
オーケーは、たしかに総会では敗れたかもしれませんが、今回の一連の「TOB予告作戦」によって実質的には大きな勝利を収めたのではないでしょうか。なんといっても関西の消費者にオーケーというスーパーの存在、およびその特色を周知させました。どんなに広告費用を出すことよりも、大きな宣伝効果が得られました。また、オーケーのTOB予告価格の提示により、関西スーパーは、H2Oとの統合効果について(イズミヤやオアシスとのシナジーも含めて)対外的に説明することを余儀なくされました。統合効果についての実効性には疑問も残りますが、オーケー側にとっては(自らの手の内を見せることなく)首都圏のスーパーが関西市場への進出の足がかりがつかめたことはとても意味のあることだと思います。
オーケーの撤退により、週明けの関西スーパーの株価はかなり落ち込んでいますが、経営統合が市場の好感を呼ぶとすれば、関西スーパー株を高値で売って、次の投資に振り向けることもできるわけで、結局のところほとんどお金を使うことなくオーケーの企業価値を大きく向上させたといえます。今回のオーケーの関西スーパーに対する7月ころからの一連の行動を俯瞰するに、法務を「守り」に使うのではなく「攻め」に活用する・・・いわゆる「戦略法務」のお手本を、現在進行形で学ばせていただいたように思います。
徹底的に闘い、潔く撤退する(結果として一定程度の株主の賛同も得られた)というストーリーは、企業の社会的評価を毀損することもなく、ステークホルダーとの信頼関係を毀損することもなく、結局のところオーケー経営者のしたたかさを痛感する事案だったといえそうです。
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コメント
買取請求が行われると思いますが、合併なかりせば、の価格はどうなるでしょうか。総会で賛成した人は、TOBの価格よりも高いと思ったから賛成、総会で反対した人は、TOBの価格よりも低いから反対、となると、買取価格は、TOB価格でしょうか。となると、関西スーパーも大変ですね。
投稿: unknown1 | 2021年11月 3日 (水) 00時34分
「スーパーマーケットが発する情報」というものは、往々にして客にお値打ち感を与えつつ、実はお店/会社自体には総合的に損は出ない=いわゆる「損して得取れ」が半ば常識的手法かと。
TOBを語る上で、「週末の新聞折込チラシの、鶏卵やトイレットペーパーと同じにするな!」と叱られそうです。恐縮です。
けれど…一個人客であろうと、ステークホルダーと称される人や企業であろうと、そのスーパーに対して何らかの対価を払う事には変わりなく、
その支払額に応じた、CSが求められるのが、ビジネスの鉄則…の筈です。
市場関係者と称する高学歴/有識者が発する言動と、非正規労働者/パートのオバチャンの口コミと、はたしてどちらが、スーパーにとって大切なのでしょう。
物事を評価する上で、「長期的視野に立って、物事を判断せよ」と、よく唱えられます。新装開店した店舗で、連日お値打ちな商品を販売していたスーパーも、いつの間にか、経営者トップが絶大なカリスマ的存在となり、経済界の大物となり、プロ野球球団まで所有する様になったD社N氏の会社も、関西の小さな店舗から始まったのではなかったでしょうか。今ではその会社や氏の名前すら語られる事は無くなった?
大量仕入〜激安薄利多売=利益確保というビジネスモデルの裏で、多額の借入金負債を抱える事例は後と絶たず。街の象徴的存在だった店舗が全国各地で閉店に追い込まれている昨今、TOBの重要性もさることながら、それと同等…否それ以上に、本業での原点回帰を怠ってはいけないと思うのは私だけでしょうか。
オーケー社が文字通り、毎日数百円の買物をする顧客からも、末永く「OK!」と慕われ続ける存在である事を、願っています・・・。
投稿: にこらうす | 2021年11月 3日 (水) 23時08分