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2022年1月 6日 (木)

「ZAITEN」最新号(2022年2月号)を読んだ感想をふたつほど・・・

ZAITEN2月号が改正公益通報者保護法の特集を組んでいることから、興味深く拝読いたしました(相変わらず尖っている記事が多い('◇')ゞ)。改正公益通報者保護法の弱点についても、なかなか鋭いツッコミが入っていて勉強になりますね。とりわけ「弱小消費者庁が行政処分を下すことができるのか?」という挑戦的な(?)問題提起は、たしかに当たっているのではないか(だからこそ、人員増強が必要ではないか)と思うところです。

ただ、最近の企業不祥事の発覚経緯をみると、著名事案の多くが(社員もしくは取引先社員による)内部通報もしくは外部への情報提供が端緒となっていることは間違いないわけでして、まずは6月に施行される改正法の運用状況をみながら前に進むしかないものと思います。上記記事によると、最近は自社の違法行為を海外当局に申告して、高額の報奨金を狙っている社員もいらっしゃるようですから、これまで以上に内部通報を促す制度作りに励みたいところです。

なお、ZAITEN2月号の記事の中で、もっとも面白かったのは「株主を惑わす『議決権行使一体型委任状』の姑息」なる記事でした。いや、記事というよりも、甲南大学梅本教授へのインタビュー回答集でして、内容はかなり格調が高い。今後、商事法務や他の法律雑誌で関西スーパーの一連の決定に関する評論を執筆される方は、日経の記事や梅本教授の意見として書かれていることは無視できないのでは、と思います。私は12月24日のエントリーにて

本日、午前11時に日経電子版(有料版)で配信された「関西スーパー争奪の教訓 裁判招いた株主以外の意外な票」はとても興味深いですね

と書きましたが、ほぼ時を同じくしてZAITENが発売されていたようで、ナイスなタイミングです。実際にこの「議決権行使一体型委任状」のために錯誤に陥って「統合反対」の意思を表明していた株主は(自らの不注意によるものだとしても)「統合賛成に一票」とされてしまったのですが、反対票に計上されていたら決議はどうなっていたのでしょう。東京高裁の決定が出る前に日経の記事やZAITENの記事が出ていればもっと面白かったのではないか・・・と悔やまれます(いや、さすがに決定前は出せなかったのか?)。

今後、会社法の趣旨に反する総会実務(一体型委任状)は改訂されるのか、それともそのまま維持されるのか。関西スーパー事案は裁判だけをみれば事例決定に過ぎないのかもしれませんが、実に興味深い問題を残したと思います。

最後になりますが、当ブログ宛に世間で話題になっている会社の社員の方々から内部情報が届きます。たいへん真摯なお気持ちで情報をお伝えいただいていることは承知しておりますが、当職はZAITENではありません。どんなに興味深い情報でも、コメントは公開できませんので、あしからずご了承ください。

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コメント

山口利昭先生,あけましておめでとうございます。
ZAITENインタビュー記事をご覧いただき,また過分なコメントを頂戴し恐縮です。研究者であれば,本来なら論文にまとめて公表すべきところなんですが…汗顔の至りです😅

投稿: 梅本剛正 | 2022年1月 6日 (木) 10時24分

山口先生の本エントリー内容とは視点が異なるかも知れません/恐縮ですが、ネットニュースにて、
「賞味期限切れ おでん 札幌のセブンで販売 従業員がネット投稿」
の報道に触れました。

札幌市内のフランチャイズ店舗での出来事=店のオーナーが、賞味期限切れの具材と知りながら、店員に調理への使用許可を下していた事が、告発のきっかけになった模様です。

これに対し、セブンイレブンの本部も認め、謝罪コメントを発表している様です。
既に保健所に報告し、健康被害も確認されていないとの事…この点は、幾多の偽装事件でも「安全上は問題ない」という口上と類似しています。ここに、安易にルールから逸脱する温床が潜んでいると感じます。

現代社会はSNS時代。上記の告発はユーチューブも使用しての「証拠動画」も発信されているようで、セブンイレブン社側のコメントしている「厳正に対処する」がどの程度進むか?に、注目です。

この事件/報道で一気にセブンイレブン社関連の株価が下落して行くとは考えにくいものの、この店舗の行為が単に1店舗なのか、又は「氷山の一角」的な長期/多店舗まん延事例なのかは不明ですが、真冬におけるコンビニ各社の「おでん売上」に影響が出そうです。

「食品ロス」問題と絡める事が本意ではありませんが、安全衛生上の若干余裕を持って適用されている「賞味期限、消費期限」を悪用してのルール違反に対し、改正公益通報者保護法も含めた、ビジネス法務の正常機能の広がりを願っています。
(コロナ/オミクロン株の猛威による数県で発令が決まった「まん延防止…」の昨今、食の安全法務を逆手に取った悪質行為が、既にまん延していない事を願いつつ・・・。)

投稿: にこらうす | 2022年1月 7日 (金) 07時35分

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