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2022年1月29日 (土)

月刊監査役(臨時増刊号)にて「中堅・中小規模会社における監査役・監査等委員の職分」シンポ発言録が公開されました。

Img_20220129_132133_400今年に入って会計不正事件が話題となっていますね。グレイステクノロジー社、エデュラボ(EduLab) 社、アウトソーシング社など、いずれもよく存じ上げている方々が調査委員会に関わっていて、調査活動のレベルの高さが窺われます。ちょうど2年ほど前に「2~3年後に会計不正事案が急速に増える」と当ブログでも何度か申し上げておりましたが(いくつか理由がありますが、長くなるので本日は触れません)、当然のことながら、これからも多くの案件が発覚に至るわけでして、まだまだ入口ですね。

さて、昨年に引き続き、平日に更新する時間がとれないこともありまして、一週間ぶりの土曜日更新となります。月刊監査役の臨時増刊号(2022年2月№732号)は、昨年10月6日から8日に開催されました「第93回監査役全国会議」の特集号となりますが、当職が進行役を務めました第3分科会「中堅・中小規模会社における監査役・監査等委員の職分」と題するシンポジウムの講演録が掲載されました。これは本当におススメの記事でございます。

よく会計不正事案が発覚しますと「監査役員は何をしていたのか?不正を発見できなかったのであれば機能不全ではないか?報酬は返上すべきではないか」と、決まり文句の批判を受けます。しかし、平成16年から長い間いろんな会社の監査役(社外)を務めてきた者として、発生確率的にはとても低い「会計不正の端緒」に目を光らせることよりも、発生確率的にはとても高い「不祥事を起こす体質への歪み(不祥事の芽)」に注力することの方が「平時の監査役員」にとっては重大な職責でして、そこで活躍されている(つまり「芽」の段階で、企業体質の歪みを矯正して結果を出している)監査役員はたくさんいらっしゃるわけです。

ただ、監査役員が結果を出すためには、「職分を発揮できる監査環境」が形成されていなければ困難です。わかりやすく言えば、このブログでも何度も申し上げるとおり「監査役員の失敗を許容できる組織文化」です。監査というのは、何度も失敗を繰り返して、どんどんスキルが磨かれるわけでして(一番やってはいけない「失敗」は、「失敗をおそれて何もやらないこと」「失敗をおそれている自分を正当化する理由を探し続けること」「自分の失敗例を監査組織の後輩に引き継がないこと」です)、このスキルの向上を組織として理解できる会社と理解できない会社ではリスクマネジメント能力に雲泥の差が生じるわけであります。←なお、この部分は講演でもご異論を頂戴するところでして、あくまでも持論です。「私は好き好んで監査役になったわけではない。社長から監査役をやれと言われたからやっている。波風を立てるようなことが監査役の使命とは思えない。リスクマネジメント能力は執行部の力量で変わるものであり、私は大過なく4年を過ごすことに注力したい」というご意見も頂戴するのも事実です。

そこにようやく機関投資家の方々も関心を持たれて、シンポに登壇された蔵本さん(三井住友DSアセットマネジメント上席参与)のように、監査役員の活動状況を(エンゲージメントを通じて)、企業価値判断の参考にされる投資家も登場する、ということになろうかと思います(アセットマネージャーとして、パッシブ運用主体とアクティブ運用主体の判断基準に分けてご説明されている点が参考になります)。ということで、「監査役がその存在意義を社内で示せているかどうか」(職分の発揮)が「守りのガバナンスの要」として重要になります。

ご登壇された現役の監査役、監査等委員のパネリストの方々は、いずれも社外取締役さんが半数or3分の1以上を占めるほど、ガバナンス改革に熱心な会社の監査役員です。そのような会社は、どうしても「社外取締役の役割」に注目が集まるわけですが、そこでいかにして「監査役員」の存在感・存在意義を社内で高めてきたのか、具体的には「なぜ社長は〇〇監査役員の発言を尊重するに至ったのか」というところまでの社内での取り組みについて(ほとんど進行役の趣味的なツッコミで?)深く語っていただきました。いや、本当に私自身も勉強になりました。

「攻めと守りは一体」「形式から実質へ」とガバナンス改革では当たり前のように言われますが、どんなガバナンスの仕組みにしても、結局はこれを支える「ヒト」ですよね。社長のリスクテイクを後押しするにせよ、(何も出てこないリスクをおそれず)不正の疑惑を解明するにせよ、担当役員の顔色を見ずに「この事業は将来がないから売却せよ」と意見を言うにせよ、結局は「胆力」の有無です。この「胆力」を発揮するための監査環境をどう(平時から)作り出していくか、ということが監査役員に求められていると思います。テーマは「中堅・中小規模会社における監査役・監査役員」向けですが、比較的大規模な会社の監査役員の皆様にもたいへん参考になるのではないかと考えております。

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コメント

カラーの個所の監査役の発言。監査役の任は自分には務まらないから、と辞退も出来ず唯々諾々と受任しておいて、この発言とは・・・・⁉️

最も監査役に不適格な方々ですね‼️

投稿: Qちゃん | 2022年1月30日 (日) 16時20分

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