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2022年1月11日 (火)

改正公益通報者保護法対応は本格化するか?-通報者探しは厳禁です。

1月11日の日経朝刊「法税務面」に、「2022年法律・ルールはこう変わる-公益通報者保護法【告発者探し】を禁止」なる見出しで、6月から施行される改正公益通報者保護法の実務面での影響が紹介されていました。「事業者は体制づくりだけでなく、担当者への適切な研修など、実効性を高める必要がある」と有識者の方がコメントされていますが、まさにその通りです。いや、そもそも「担当者」になる人はいるのだろうか・・・との懸念さえ抱いております。

先日もリスクコンサルタント会社の方からご相談を受けましたが、公益通報への対応業務従事者となる人は、対応業務を終えた後(つまり担当を外れた後)も守秘義務が解除されませんので、かなり長期間にわたり、犯罪行為に手を染めないように注意しなければならない、ということです。だからこそ研修はきちんと受講する必要があります。

事業者の中には、対応業務従事者となったとしても「通報者を特定できる情報」を故意に漏えいすることなどありえないから大丈夫、と思っておられるかもしれません。また刑事罰といっても30万円以下の罰金ということなので、そもそも立件される可能性も乏しいとも思えます。

しかし、対応業務従事者を立件するのは「懲らしめ」ではなく、犯人捜しの首謀者である上司(経営者含む)を教唆犯もしくは共同正犯として立件するために活用することは十分あり得ます(正直に供述すれば、上司の立件に必要な証拠が収集できますので、その時点で対応業務従事者は不起訴となるようなケース)。また、そもそも公益通報をする社員は、義憤にかられた勇気のある社員である確率が高いので、「対応業務従事者だった〇〇さんはけしからん!」ということで告訴・告発に踏み切ることも十分予想されます。つまり、検察は嫌でも立件に動かざるを得ない場面も想定できます。

事業者は「あなたが改正公益通報者保護法上の対応業務従事者だ」と指定する必要がありますので、指定された方は、身に降りかかるかもしれないリスクを十分認識しておく必要があります。毎度申し上げるとおり、通報者を特定する情報が社内で漏れた場合(もしくは噂されている場合)、通報者は「誰かが情報を漏らした」と考えます(実際には通報前の言動から噂が広まるケースもありますが)。その矛先が対応業務従事者に向けられることもありますので(私も過去に苦労しました・・・)、たとえ本人が注意をしていても犯人扱いされるリスクもあることまで、研修で理解しておくべきと考えます。

事業者は、対応業務従事者(過去に対応業務従事者であった社員も含めて)を全力で守ってあげていただきたいと切に願います。

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コメント

仮に…私が、国内上場企業の某社のコンプライアンス関連部署の一員で、上司から「にこらうす君、今春より、改正公益通報者保護法の実務対応業務従事者になってくれないか」と内示が出されたら…と想像しています。

その際、「部長は、例の三菱電機不正を検証しているガバナンスレビュー委員会の委員長をしていらっしゃる、大阪の弁護士のブログを読まれた事は、おありでしょうか?」と確認をするかも知れません。
そして「そんなブログ、知らんし、読んだ事も無い」と返答されたとしたら、私は固辞します。

理由は、ただ単に、この場が山口先生のブログの場と言う事で先生にお世辞を申すのではなく、昨年末の全国紙の記事をはじめ、山口利昭弁護士の存在をメディア類で見かけたら、「この弁護士はどんな人物なのだろう?」と、グーグル検索等で調べ、確認をする…好む好まないは別にして、今の世情の動向を把握する情報収集/力量をみたいと思うからです。

コロナ/オミクロン株への対応が、政府や専門家ですら手探りの昨今、上場企業といえど、身分の保障は不安定だからこそ、上司の見識の乏しい業務へ着任するリスクは避けたい…と考えます。
(あくまで仮定ですし、理想論ですが)

カイシャ勤めにおける、異動/辞令の世界がどんなものか…は各社様々ですが、トップでもない限り、与えられた業務をこなしていくしかないけれど、少なくとも、正しい羅針盤的スキルのある上司の下で働きたいと思うのではないでしょうか・・・。

投稿: にこらうす | 2022年1月11日 (火) 12時09分

にこらうすさん、いつもご意見ありがとうございます。
本来、私は関西人なので「自虐ネタ」が好きなのですが、最近の当ブログのメディアにおける取り上げられ方等からしますと、あまり過激なエントリー(本心からの正直なエントリー?)は避けたほうが良いと思うようになりました。正直に話すことで実務に悪い影響が出るのであれば、それは私の発言の責任です。ただ、やはり「リスク」という点でみると、この「刑事罰」は対応業務従事者にとっては重いですし、本文で書いた程度のことは知っておいて損はないと思いました。むしろこのブログがきっかけで「そんな言うほど怖いものではないよ」といった意見が出てくることを期待したいです。あくまでも、私のブログは問題提起というところで貢献できれば幸いです。

投稿: toshi | 2022年1月11日 (火) 12時25分

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